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2021/07/20

14日に芥川賞・直木賞の上半期の発表がありました。
芥川賞は石沢麻依「貝に続く場所にて」、李琴峰「彼岸花が咲く島」、直木賞は佐藤究『テスカトリポカ』、澤田瞳子『星落ちて、なお』が受賞となりました。
なんか芥川賞を取った作家の発言が炎上したりもしているようですが、気になったのが直木賞を受賞した『テスカトリポカ』という作品を受賞作とするかどうかで3時間以上も選考委員で大激論を交わしたという事が記事になっていました。
自分はまだこの作品を読んではいないのですが、この作品で何が問題になって議論になったかというと、あまりにも暴力シーンが多く、子どもの臓器売買という読む人にとっては嫌悪感をもたらすような内容で、そういった作品に直木賞という賞を与えて世に送り出してもよいものかという事が議論になったという事です。「こんな描写を文学として許してよいのか」「文学とは人に希望と喜びを与えるものではないのか」という意見や「描かれたことは現実世界のこと。目を背けてよいのか」という意見が出たそうですが、最終的には受賞を支持する声が大きくて受賞する事となりました。
気になったのが、暴力シーンが多いとか言っていたら、下手したら、ミステリー作品は駄目になってしまうんじゃないかな?っておもいますし、凄惨な事件を取り扱ったノンフィクションなんかも同様です。
そもそも、選考委員て大御所というか大先生クラスの何年も文筆業で食べてきたような作家先生がやっているはずなのですが、そんな人たちが「こんな描写を文学として許してよいのか」と言ってしまっていいのかなって思います。
暴力的だからこれは文学じゃないとか、夢と希望を与えるものじゃないから文学じゃないとかやっていたら、そこには表現の自由なんてものはなくなってしまうと思いますし、果たしてそんなきれいごとだらけの作品って面白いのかなっていう疑問もあります。
大体選考委員の作品だって結構暴力的と言えるものがありますし・・・

芥川賞は純文学、直木賞は大衆文学という棲み分けがある一方で、近年は芥川賞は新人作家の為の賞、直木賞は中堅・ベテラン作家の為の賞となっています。
中堅・ベテラン作家という事は殆どが作家としてある程度の地位を獲得しているような人たちであると思いますが、そんな人たちにこれは文学じゃないって言えるのも結構すごいなと思ってしまいます。
まあ、そういう賞であるので辞退や候補に上がるのを拒否している作家もいるとの事ですし、対象を狭めていてしまうと歴史ある賞も権威も価値もなくなっていってしまうような気がします。


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