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-心移り-


同僚のミカちゃんのことが
さとるの頭から離れなくなった。

ミカちゃんは
さとるよりも年齢が八つも下だが、
とてもしっかりしていて、
それでいてどこかのんびりなところがある。

現在の職場になってからというもの、
ミカちゃんはさとるの関心の的ではあったが、
彼女には長年付き合っている彼氏がいる。
とてもハンサムな男だ。

さとるは思った。
そりゃあ、かわいい子を
他の男は放っておかないだろうに。

こうも思った。
あの子にきちんとした彼氏がいるからこそ、
こちらとしても
気安に声をかけることができるのだ。

とはいえ、
それなりに悶々とした日々を送っているのも
事実である。


仕事が終わり、
少し気分を変えたくて
いつもとは違う電車の線へと足を運ぶ。

帰宅ラッシュは過ぎているものの
そこそこ駅のホームは混んでいる。

ふと、乗車する際
ドア付近で本を読んでいる女性に
目が止まった。

さとると
目が合った。

眼鏡をかけた美しい人だ。

「どこまで乗っていくのだろう」

さとるは
その女性に気を奪われ、
乗車中ちらちらとその姿を
目で追ってしまった。

その女性は
さとるが降車する一つ前の駅で
降りていった。

降りる時に、
また目が合った。


わずかな時間ではあるが、
さとるは
自分の意識から
同僚のミカちゃんの姿が
薄らいでいるのを
たしかに感じていた。





以上

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