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【拙訳】2022年のパイオニア:赤単で環境開拓! by Todd Anderson(Star City Games)

 少し前の記事になりますが、パイオニア関連のArticleがTodd Andersonから投稿されていたので、邦訳(※)してお伝えします。赤単(Baby Red)の紹介ではありますが、氏による環境分析が行なわれているので、現在のパイオニア環境を俯瞰できる記事になっています。ぜひ参考にしていただければと思います。

※訳注:タイトル原題は"Pioneer In 2022: Red Dead Redemption"、ネットゲームのRed Dead Redemptionとデッキの赤単をかけていました。ゲームの雰囲気からこんな感じに翻訳してみました。ぜひ原文でも味わっていただければと思います。

※今回は11,000字の作業でした。例に漏れず、全文無料で公開していますが、作業にかなりの労力がかかっており、皆さまからの投げ銭(記事購入)によるご支援、またはエントリ末尾からのサポートをいただけると大変励みになります。ぜひよろしくお願い申し上げます。
(ご支援の結果によって、今後のコンテンツ公開方針(有料化など)を検討していきたいと思います。何卒ご了承ください) 

Pioneer In 2022: Red Dead Redemption

 (リード文)モダン環境の趨勢が耳目を集める中、パイオニアは良環境としてMtGのメジャーな環境のひとつとして復帰を果たしました。Todd Andersonがメタゲームを分析、今の環境で勝てる赤単デッキを薦めます。

By Todd Anderson January 5, 2022 / translated by tokeimawari

■はじめに

 先週(※訳者注:本記事は1/5に執筆されました)からパイオニアが話題になっています。大晦日あたりに友達とMtGの現状について話し合っていたのですが、ストリーミング再開のきっかけになったのは、パイオニアにもう一度復帰してみようと思ったからです。今のところ、まぁ、デッキの感触は悪くないです。

 環境が健全かどうかについて議論する場合、いくつかの特徴に着目し重要視することが必要です。まず第一に、「普通のプレイヤー」が楽しんでいるかどうか、という点です。プレイヤーが様々なデッキやゲームプレイを楽しむ多様性を持つ点で、難しい問題と言えます。
 私にとって真に確証を得られるのは、二人のプレイヤーが対峙したときに、二人にとって楽しい時間がより多く訪れるかどうかです。以前は、《真実を覆すもの》のようなコンボと対峙できるデッキは多くありませんでした。結果として、一方のプレイヤーが難解なパズルに挑む傍らで、もう一方のプレイヤーは4ターン目までに速やかに殴り切る、という戦略に全力で挑んでいたのです。冷静に考えれば、ひどい話ですね。

 コンボデッキが1~2存在するような環境は味わい深いものですが、3つ、あるいは4つ環境に存在する場合、コンボと対戦する機会を減らすために多くの異なるアーキタイプがなければなりません。ロータスコンボと対戦して、相手がデッキすべてにアクセスして好き勝手している様子を10分間眺めているのは、実に腹立たしいことです。
 MtGだろうと何であろうと、ゲームをしている人間が相手をただ眺めている時間が1~2分あるというのは、人間として無理がありますよね。MtGにおいてソリティア的なプレイが常態化する事態は、このゲームにおける最も忌むべき部分です。

 パイオニア人気が最初に急落したのは、白単信心、ディミーアインバーター、ロータスブリーチをTier1、上位3位を独占した頃でした。3つのコンボデッキが上位を支配した結果、この間にプレイヤーの大部分がモダンやスタンダードに帰っていきました。このフォーマットをプレイし始めて、何か月もの間中心的に取り組んだ私でさえ、コンボありきの環境に飽き飽きし、環境から離れてしまいました。

 それ以後、多くの変化の結果、パイオニアは非常に安定した環境に生まれ変わりました。数枚の禁止を発表し、WotCはMTGO上でより大きな大会の開催を開始しました。
 ちょうど今日、SCGコンベンション:インディアナポリスでの3競技のうちのひとつがパイオニアになるという発表がありました。一言でいえば――

 時代が戻ってきた。パイオニアが戻ってきた。ただいま、僕も帰ってきたよ、みんな!

■パイオニアを定義するもの

 パイオニアは強力なカードで溢れています。他のフォーマットでは強力過ぎるとされているもの(=禁止)もあります。《宝船の巡航》は使用可能ですが、これでさえ最高の「探査」カードではないのです。パイオニアは《溢れかえる岸辺》のようなフェッチランドサイクルが使えません。結果として《死儀礼のシャーマン》や《宝船の巡航》のようなカードがちょうどいい口当たりになるのです。
 さて、《宝船の巡航》がそこそこいいカード、という環境の、ベストカードとは何でしょうか?

《ドミナリアの英雄、テフェリー/Teferi, Hero of Dominaria》

 《ドミナリアの英雄、テフェリー》に真新しさはありませんが、強力なカードであることは疑いようがありません。コントロールデッキにおける史上最強のフィニッシャーのひとつであり、唱えたすぐ後にマナを浮かせて、除去や打ち消しで身を守ることで、戦場に居つくことが可能です。加えて、プレインズウォーカーの中でも最も用途の広い対応(バウンス)が可能で、対戦相手が使う土地以外のパーマネントに幅広く対応できます。
 アゾリウスコントロールはパイオニアにおいて最高のデッキのひとつですが、その原動力こそが《テフェリー》なのです。

《傲慢な血王、ソリン/Sorin, Imperious Bloodlord》

 《傲慢な血王、ソリン》は黒単アグロ(※)を成立させるマスターピースです。圧倒的な性能を誇るわけではありませんが、使い手に2つの使い勝手の良い能力を提供します。ひとつは《薄暮の勇者》を戦場に送り込むこと、もうひとつは小型クリーチャーをパンプしてダメージを大きくできることです。ピンチに陥っても、吸血鬼を投げ飛ばすことで窮地を切り抜けることができます。
 吸血鬼専用ではありますが、3マナのプレインズウォーカーの中では過去最高級と言えるでしょう。

(※訳者注:現在は白黒吸血鬼で使われています。)

《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix》

 先述の《宝船の巡航》は《弧光のフェニックス》デッキに使用され、うまくフィットしています。《弧光のフェニックス》デッキはスペルを連打する構成でこそ生き、軽量スペルを連打する過程で墓地を肥やしたり、あるいは複数枚の《弧光のフェニックス》を持ってくることができるようになります。私は《弧光のフェニックス》をスタンダード、また《信仰なき物あさり》在りし日のモダンで愛用していました。レガシーの《生き埋め》デッキで試したこともあるぐらいです。
 多くの人がイゼットフェニックスを現時点でのベストデッキだと《考慮》していますが、私はイゼットフェニックスミラーをあまり体験していないし、ほとんどのゲームで有利にふるまえました。

《ジェスカイの隆盛/Jeskai Ascendancy》

 知己のDom Harveyは年末のMOPTQで優勝しましたが、その際に使用したのが《ジェスカイの隆盛》コンボです。

(訳者注:下記がDom Harvey氏の優勝ツイートです。)


翻訳:
 MTGO上のPioneer Pro Tour Qualifierで優勝しました! 最初から使おうと思っていたわけではないんですが、隆盛コンボに関していくつかアイディアを持っていたので、突貫工事で組みました(マナベースについては自信がありません)。勝っちまったぜ^^

https://twitter.com/dominharvia/status/1477847477738950659

 《ジェスカイの隆盛》絡みのコンボはいみじく恐れるべきものですが、一般的な妨害手段がかなり有効です。大量のスペルを唱えることを抑止する《耳の痛い静寂》《大歓楽の幻霊》といったパーマネントは相手を窮地に追い込むことができますし、《ジェスカイの隆盛》そのものを対処することでも相手のゲームプランは瓦解します。キーカードを捨てさせ、相手にクロックを突き付けることで、相手のデッキが仕事をしないままゲームを終わらせることも可能です。

 といいつつも、パイオニアにおいて最も強力なデッキのひとつと言っても過言ではないですし、その上、他のアーキタイプと比べ練度が足りていないデッキでもあります。Domが自身のデッキを「マナベースは悪かった」と語っていました。MtGのトーナメントにおいて、自分のデッキの欠陥を認めながら優勝した例は記憶にありません。その事実が、彼の優勝をより印象的にしたことは確かです。

《睡蓮の原野/Lotus Field》

 このコンボデッキは、1ターン中に何度も《睡蓮の原野》をアンタップして追加のマナを得て、さらにアンタップ効果を使う……というチェイン要素が中心となっています。《熟読》はカードアドバンテージとマナ生成の両者の役割を果たす素晴らしいカードです。加えて《睡蓮の原野》が呪禁を持っているため、土地に対して直接の対処ができません。
 このデッキに勝つための唯一といっていい方法は、相手が動き出す前に相手を倒す、あるいは、相手に非常に効果的な特殊な妨害手段を持っていることです。打ち消しはコンボに有効な伝統的な手段ではありますが、《時を超えた探索》をはじめとした大量ドローソースを持っているため、モダンやレガシーほど手札破壊の効きはよくありません。

《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》

 彼女はパイオニアにおいて最もとんでもないカードといって差し支えありません。ちょっとした下準備さえすればとんでもない効果を生み出すからです。《トヴォラーの猟匠》のような重量級の人間クリーチャーが刷られるごとに強くなりますし、《粗暴な聖戦士》のような軽い妨害効果のある人間が刷られたため、デッキスロットはほぼ埋まりました。
 クリーチャーデッキなので、対処方法は軽量クリーチャー除去、あるいは《ウィノータ》自体を倒すこともできますが、相手のデッキには《ラノワールのエルフ》をはじめクリーチャーであふれかえっているので、すべてを対処することは不可能です。
 私がパイオニアのカード禁止決定権を持ったなら、《睡蓮の原野》を禁止して、その次に《ウィノータ》をリストアップすることになるでしょう。

■日々是アグロ

 環境のデッキがコントロール、コンボ、「その他」という括りで分類されるなら、私は出来る限り「その他」のカテゴリを開拓して、コンボやコントロールに対処する方法を探します。
 私は日々、錯乱的な要素のあるアグロデッキを構築して、調整しています。デルバーデッキや《大歓楽の幻霊》入り赤単を愛用することが多いですね。遅い相手であればそのまま勝てますし、なんといってもアグロが好きなんです。

 私は出来る限り粘り強く戦いますし、負け犬の遠吠えなんて真っ平御免です。それでもコンボやぶっ壊れ系シナジー(※訳者注:ウィノータのことだと思います)が支配的だと、とても腹立たしく思います。数週間頭をガンガン叩きながらプレイを続けますが、最終的には「あんなの禁止だ!」と叫びます。
 今はまだ前者の段階で、できる限り多くのアーキタイプを触りながらプレイしています。次の作戦が決まりました。"Baby Red"です。

 以前配信でお見せした"Chonky Red"を覚えていますか? 私の配信で知った方もいらっしゃると思いますが、《栄光をもたらすもの》を採用した、いわゆる「ビッグ・レッド」です。
 環境を見渡して、妨害が打ち消しに寄っているなら、軽量の脅威が戦略上重要になりますし、コンボが猛威を振るっているなら、なおさらその傾向は顕著になります。今のパイオニア環境がコンボやコントロールに寄っているのであれば、何らかの形で既存の赤単を再構築していくのがよいアプローチなのです。

 赤単を正しく構築するコツは、クリーチャー、妨害要素、除去、そして強力な脅威を、適切な比率で組み合わせることです。赤単には現在、すべてのマナ域に多くの選択肢を持っているため、リストのスタート地点を選ぶのは非常に難しいことでした。既存の赤単をプレイする中で、印象に残らないカードもあれば、素晴らしいパフォーマンスを発揮するカードもありました。

 私が使用したリストはこちらです:

Baby Red by Todd Anderson
Test deck on 01-05-2022

 
creatures (21)
4 《僧院の速槍/Monastery Swiftspear》
4 《損魂魔道士/Soul-Scar Mage》
1 《鐘突きのズルゴ/Zurgo Bellstriker》
4 《墓所の門番/Cemetery Gatekeeper》
4 《大歓楽の幻霊/Eidolon of the Great Revel》
4 《砕骨の巨人/Bonecrusher Giant》

spells (7)
4 《火遊び/Play with Fire》
3 《稲妻の一撃/Lightning Strike》

planeswalkers (8)
4 《勝負服纏い、チャンドラ/Chandra, Dressed to Kill》
4 《反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance》

lands (24)
2 《変わり谷/Mutavault》
4 《ラムナプの遺跡/Ramunap Ruins》
4 《バグベアの居住地/Den of the Bugbear》
14 《山/Mountain》

sideboard
3 《減衰球/Damping Sphere》
1 《高山の月/Alpine Moon》
3 《乱動する渦/Roiling Vortex》
4 《灼熱の血/Searing Blood》
4 《溶岩コイル/Lava Coil》

 このデッキを分析して特徴をつかんでみましょう!

・適切な脅威を選び出す

 コンボやコントロールにはクリーチャーが効果的ですが、軽量であればあるほど良いと言えます。1マナ域の8枚は果敢持ち兄妹、《損魂魔道士》と《僧院の速槍》で決まりでしょう。

 この2枚はパイオニアで使える最高のクリーチャーです。呪文を唱えて相手のクリーチャーを倒したり、自分のためのスペルを唱えるついでに、大きなダメージが期待できます。複数のフォーマットにわたってこのカードを愛用している身から見解を述べれば、モダンと比べてパイオニアではフリースペルの存在がないため相対的に弱く見えるかもしれませんが、それでも十分優秀です。
 《損魂魔導士》は、ターンをまたいで大型クリーチャーを火力で倒すことを可能にしたり、ブロックを不可能にしたりできる点で、《速槍》より優れたパフォーマンスを発揮します。

 環境にアグロデッキが多くいる場合はこのカードを使うことが危険になり得ますが、現在のメタゲーム上では主流ではありません。その代わりに、《大歓楽の幻霊》は除去を持たない相手にはとんでもない脅威になります。速やかに相手のライフを減らすことが目的でない環境上のデッキにとって、《大歓楽の幻霊》を含めた戦闘外のダメージを与える効果は、自身がダメージを受けるというデメリットを考慮しても、非常に有効なものなのです。自分がダメージを受けることをそこまで心配しなくてもいいですよ! ただひたすら自分のカードを繰り出し続け、自身が倒れる前に対戦相手が倒れるように努めるだけなのです。

 私は《墓地の門番》をそこまで気に入っているわけではありませんが、妨害要素を持つ2マナ域は気に入っています。スタッツや先制攻撃も堅実で、能力は時折、対戦相手にとって絶対に必要なスペルを唱えられない状況に追い込み、実質的なソフトロックを掛けてくれます。
 こちらのライフはあまり重要ではないので、こちらがダメージを受ける種類のカードを追放することを恐れてはいけませんよ。

 《勝負服纏い、チャンドラ》は最高に良いです(※訳者注:原文は"slaps"。スラングですね)。他にどう表現していいか分からないので……。ダメージを与えながらマナを生成する能力は非常にクールだけれど、リソースが大幅に増加する一方、マナやダメージの累積によってどれだけのダメージ増加効果があるかはよく認知されていないようです。《バグベアの居住地》のような土地と共に使用することで、余分なマナをミシュラランドの起動に当てて打撃力を確保できます。ビッグターンを演出するのに一役買ってくれるわけですね。

 《勝負服纏い、チャンドラ》を唱えてマナを稼ぎ、除去呪文あるいはそれに類するものを唱えて彼女を守るシーンが訪れるはずです。ダブルアクションを行なうターンを常に求めていると思いますが、最初の4ターンのうちにそれが実行できれば、明らかに優勢になるはずです。戦場が膠着してお互いのリソースが尽きた後にも、毎ターンドローを供給してくれます。彼女が自身を守ることはできなくても、軽量除去をうまく使うことでその弱点をカバーできるはずです。

 このカードは以前から歴代最高の《チャンドラ》と評価していましたが、《勝負服纏い、チャンドラ》が加わったことでその傾向はより顕著になりました。彼女を繰り出したあとにもう1マナあれば《勝負服纏い、チャンドラ》も同時展開できるというバリューを持ちつつ、さらに相手のクリーチャーを倒せるというオプションを持っている点も素晴らしい1枚です。
 過去にChonky Redをプレイしてきた身としては「《反逆の先導者、チャンドラ》はよりマナカーブの低いデッキでこそ生きる」ということを皆さんに伝えたいと思います。マナカーブの頂点に《反逆の先導者、チャンドラ》がいるなら、そのデッキはよいマナカーブを形成していると言えます。そこを頂点とせず、さらに大型のスペルに繋ぐ展開を目指しているなら、環境の速度が遅いということの証左でしょう。

 他の除去では対処できない大型クリーチャーも《チャンドラ》で処理できることが多くあります。相手は自身の一番大きな脅威に対処された後に残る、追加のアドバンテージとダメージを稼ぎ出すプレインズウォーカーと対峙しなければなりません。ずば抜けた存在であることが分かりますね。

・燃やせ燃やせ!

 赤単はクリーチャーが攻撃する道をこじ開けるために少しばかりの助けを必要としています。赤単を使う一番の利点は、本体火力と除去が同居させられることです。裏を返せば、少なくとも私は、直接ダメージを与えられる火力を好み、「クリーチャーかプレインズウォーカー1体を対象とする。」というテキストは好みません。理由の大部分は、除去が役に立たないマッチアップにおいて、通常「死に札」になり得るカードを、別のリソース(本体へのダメージ)に変換できるからです。

 パイオニアの赤にはまともな除去呪文こそいくつかありますが、《稲妻》のような素晴らしいカードはありません。結果として、手に入れたものでやり過ごすことしかできないのです。

 高性能な《ショック》は嬉しい限りですが、対戦相手の顔面にぶつけて占術1を行なっても、あまり役に立つわけではない、ということが分かりました。実際、私はいくつかの状況では《乱撃斬》のほうが手助けになるんじゃないかと思っています。例えば、もしも《試練に臨むギデオン》入りのグッドスタッフや《荒野の再生》+《濃霧》みたいなデッキが環境に残っていたなら《乱撃斬》を優先したと思います。
 ともあれ、《ラノワールのエルフ》を採用したデッキが環境にある中で赤が勝利をつかむには、1マナの除去呪文は必須と言えるでしょう。

 一見弱そうに見えるカードですが、使用に堪えるカードです。多くのクリーチャーがタフネス3であるデッキを相手取るときに、《踏みつけ》や《火遊び》はほとんど役に立たなくなってしまいます。《稲妻の一撃》は平凡以上の何物でもありませんが、それで問題があるわけではありません。
 私はしばしば《ミジウムの迫撃砲》や《溶岩コイル》をメインデッキから入れているプレイヤーを見てきましたが、彼らにはこう言ってあげたくなります。「コントロールや《バグベアの居住地》入りのデッキと戦ったことがありますか?」ってね。

 《踏みつけ》は迫力不足ですが、3マナ素出しでも十分強いカードについているおまけとしては申し分ありません。2T《踏みつけ》からの3T《砕骨の巨人》は、マナカーブ通りの展開の中で除去とクロックを両立させた類稀なコンビネーションです。《砕骨の巨人》はChonky Redにおいて一番好きなカードで、現在のメタゲームでもかなり優秀なカードと言えるでしょう。

・前線に立って戦う土地

 土地はどんなデッキでも大切ですが、アグロにとってはクリーチャー化土地、あるいはそれに準ずる土地の価値は非常に高くなります。過去には、パイオニアのベストカードは《変わり谷》であった時期もあるぐらいです。もはやそこまでの性能というわけではありませんが、この手の土地はどのようなアグロ戦略においても重要です。
 1マナの呪文を多く採用しているため、(無色しか生み出さない)このカードに大きく頼るようなことはできないので、《変わり谷》を含んだ初手キープは時々厄介な事態に巻き込まれる格好になります。とはいえ、4枚プレイするのが正しいかと言われれば、そういう意見も間違いとは言い切れません。

 以前、《バグベアの居住地》を《怒り狂う山峡》になぞらえて紹介しましたが、《居住地》のほうが優れていると感じます。アグロにおいてアンタップインの土地は非常に重要で、他の機能を持つ土地でもアンタップ状態で登場するものは他に類を見ません。また、色マナが供給できるユーティリティ土地はこの上ない選択肢です。
 《バグベアの居住地》がどれほど優れているかについてこれ以上の言葉を持ち合わせていませんので、ぜひ自身でプレイしてその素晴らしさを確かめてください。

 マナフラッド対策として、手札を使い切った後にマナを使う方法が必要になる、という点は過去に説明した通りです。能力を持つ土地はゲームが長引いてもデッキの戦える期間を長くしてくれるので、《バグベアの居住地》はこれまで印刷されたカードの中でも最高、というのは言い過ぎだとしても、最高のカードのうちの1枚と表現して差し支えないでしょう。

 このカードはかつてスタンダードで禁止されましたが、パイオニアですぐに禁止になるということはなさそうです。赤マナを生み出してくれるアンタップイン土地として実用的なこの土地は、とどめを刺すためのダメージ源として、ほぼデメリットなく運用できます。アグロをプレイしたことがある人なら誰でも、フラッドが負け筋になることは体験済みでしょう。
 総じて、《ラムナプの遺跡》や《バグベアの居住地》のようにフラッドを防ぐ土地の存在が、「良い」アグロデッキと「主流な」アグロデッキの差異になることが多いと感じています。

・サイドボードも見てみましょう

 ロータスコンボと戦いたいなら、《減衰球》を数枚採用すべきです。ついでに《ジェスカイの隆盛》にも「減衰」効果を味合わせることができます。これ自体でゲームに勝つことはできませんが、このカードに加えてクロックを突き付ければ、相手に一泡吹かせることはできます。

 《高山の月》は《睡蓮の原野》を指定することで対策できますが、他のカードにはあまり効果がない用途の狭いカードです。《睡蓮の原野》と相互作用するカードを4枚はデッキに入れたいので、《爆発域》が使われているため同じカードで固めると一気に流されてしまうため、散らしています。

 コントロールに負けたですって? 《乱動する渦》でライフゲインを抑えて相手にダメージを与えていきましょう! 基本的にはダメージの小さい《硫黄の渦》ですが……まぁ仕方ないですね。とはいえ赤単使いとしては、欲しいものがまとまったカードではあります。
 歴代の赤単用カードとしてそこまでの強さは感じませんが、良いカードであることには変わりありませんからね。

 2マナ4点火力は及第点ですが、他の選択肢と違い追放効果を持っています。アグロ相手に除去を増やす必要がある場合には《炎恵みの稲妻》のような《ショック》亜種では対応できないのです。相手の大型クリーチャーを倒すことがマストです!

 赤単はマナカーブを低く抑えているので、クリーチャー除去で余剰ダメージを発生されられれば、ブロッカーで持ちこたえようとする相手の計算を狂わせることができるのです。《灼熱の血》は1マナで打つことはできないので十分良いというカードではありませんが、それでもナヤウィノータ相手には素晴らしい働きをしてくれます。
 ちょうどいいカードがあればそれに置き換えたいですが、今はこのカードを使っていこうと思っています。

■終わりに:環境所感

 パイオニアは全体的にかなりいい環境ではあると思いますが、すこしバランス的に不均衡な部分も見られます。不利なマッチアップもすぐにゲームが終わるので、次のゲームにすぐ向かえばいい、という点では評価できますが。私見ですが本当に嫌なのは、決着をつけるために30分を戦うようなゲームを強いられることで、それを助長するようなカードあるいは要素は、常に排除されていくべきだと思います。

 過去の禁止改訂は、何が禁止され何が許されるか、という観点で、素晴らしいジャッジから悲惨なものまで多々ありました。最近のデザイン・チームの哲学は、(新弾が)より多くのフォーマットに影響を及ぼすことを求めていますが、多くのカードプールがある環境で支配的なカードを生み出していることは、デザインの方向性として間違っていると感じています。何かにおいて「最高」なカードはなければなりませんが、プレイヤーにワンサイドゲームを体験させてしまう必要はありません。妨害、対応がある程度可能であれば、その環境は良好であると言えるでしょう。

 私はここ数日、パイオニアのプレイに集中しています。パイオニアに不満が出るか、モダンに興味が湧くようなことが来ない限りは、続けていくつもりです。もしこの記事を読んだあなたがパイオニアに興味を持ってくれたなら、あるいはこの開拓の余地が広い環境を探究する私の旅に同行してもらえるのなら、平日正午(US東部標準時)に配信していますので、ぜひ見てください。

 それではまたどこかで。


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