パイオニア環境分析のつもり(6/22~29)風を切り裂いて暗闇を蹴っ飛ばす緑単
■はじめに
こんばんは。今週末から「地域チャンピオンシップ予選」が始まっています。予選のフォーマットは店舗ごとに異なりますが、パイオニアの採用が多くみられます。皆さんも研究を念入りに始めていると思います。
↓開催店舗一覧↓
さて、そんなパイオニアに「動き」があったのは周知のとおりです。
前回の記事でも触れたとおり、《軍団のまとめ役、ウィノータ》《表現の反復》禁止が6月7日付でパイオニア(と、《表現の反復》はエクスプローラーでも)禁止となりました。
プロツアー発表後に《ウィノータ》の在庫が枯れた、という話も多く聞きました。なので、《ウィノータ》を握っていたプレイヤーが何を選択するのか、どのように調整を進めるのか、かなり難しい選択を迫られていると思います。
本noteでは、そんな皆さんに少しでも協力できるよう、Magic; the Gathring Online(以下「MO」)上のメタゲームを紹介しながら、様々なアイディアをご紹介していければと思います。
■メタゲームブレイクダウン
さて、今回は6/22~にMO上で開催されたMO20周年プレイインの関係で、Preliminaryの参加人数が極端に多くなった週でした(入賞者が50を超える回もありました)。十分なサンプルが取れたので、ご紹介させていただきます。
依然としてトップはラクドスミッドレンジに強い緑単信心。全体の2割を占める形になっています。しかし直近のChallengeでは入賞者ゼロと、最近は減少傾向にあります。前回(禁止直後)が緑単一強の状態だったので、それに対抗するデッキが勝率を伸ばしています。
その最有力が青単スピリット。1マナのクロック3種を打ち消しでバックアップし、要所のカードを捌くことで戦うクロックパーミッションです。
他、除去の豊富なイゼットフェニックスや、全体除去を擁するアゾリウスコントロール、攻めの速度が速いボロス英雄的が勝率を伸ばしています。
ただし、緑単信心を苦手としつつ、これらのデッキに強いラクドスミッドレンジも相当数が入賞していて、短い期間の中でメタゲームが循環しつつあります。
デッキタイプ別の比率です。ミッドレンジが減り、その分アグロの比率が前回から1.8倍と、アグロが躍進しました。
なお、従来ミッドレンジに強いはずのコンボは、緑単信心(というか、《減衰球》)に封じ込められてしまっていて、コンボが対抗馬にならない……という、従来に見られない状況になっています。
ミッドレンジが想定敵となるため、テンポ系の戦略も強い勢力となっています。
全体の比率でみると、《ウィノータ》禁止後にはミッドレンジが大幅に増加、アグロが大幅に減少していましたが、比率自体は《ウィノータ》禁止前に戻っています。メタゲームがしっかりと機能している証拠であり、特に重大なメタゲームの不均衡が生まれない限り、しばらく追加禁止はなさそうです。
ただしデッキのアーキタイプ総数は減少傾向にあります。想定敵が絞られる分、対策がしやすい状況になりつつあり、主要アーキタイプは確実に意識される、ということです。対策の対策をしっかり考えてデッキを仕上げることが、これまで以上に重要になります。
■注目デッキ1:ラクドスサクリファイス
従来より存在した、《大釜の使い魔》《魔女のかまど》の「猫かまど」パッケージに《波乱の悪魔》を加えたサクリファイスデッキが勢力を伸ばしつつあります。以前は《鬼流の金床》とセットで採用され爆発力重視の内容でしたが、少しずつ採用カードが変わってきています。
最近採用が増えているのがこれらのカードです。
《不運な目撃者》は、置いておける衝動的ドロー版《手練》といった使い心地。このデッキであれば能動的な生け贄手段も多くあり、ドローエンジンとしてまずまずの働きをします。気軽にチャンプブロックに回せる点も嬉しい限りですし、ハンデスも効きません。
《初子さらい》はスタンダード時代もよく活躍していました。1マナと軽く、サクリ台との組み合わせが特に《老樹林のトロール》のような死亡時誘発型能力持ち相手に重宝します。
フィニッシャー枠には《敵対するもの、オブ・ニクシリス》が据えられています。前述の2枚を生かすサクリ台としての機能を持ちながら、手札を締め上げつつクロックを刻む優秀な軽量PWです。
ドローも《命取りの論争》《村の儀式》とかなり多めに取られていて、非常に回転力の高いデッキです。その性質上、クリーチャーデッキには無類の強さを誇ります。
従来のラクドスサクリファイスはアーティファクトへの依存度が高く、《大いなる創造主、カーン》で完封されてしまう弱点がありました。このリストはアーティファクトへの依存度を下げつつ、生け贄シナジーを構築する形になっています。
逆に、このデッキが躍進しているということは、デッキの構成を大幅に変えるほど、緑単信心がメタゲームに与える影響は高いということの裏返しでもあります。緑単信心のメタゲーム占有率が高い状態が続くようであれば、それを意識したデッキもまた増えていくでしょう。
■注目デッキ2:人間
以前ご紹介した、セレズニア・カンパニー型の人間デッキが再び勢力を伸ばしています。前回はナヤウィノータ対策のカードが意図的に採用されていましたが、より汎用性の高いパーツが選ばれ、爆発力重視のカード採用となっています。
2マナ3/3の体躯にリソースを供給できる《群れ率いの人狼》が2マナ域にカムバック。緑マナダブルシンボルを要求するため唱えるのには骨が折れますが、リターンが大きいため4枚採用も許容範囲です。個人的にはやや事故が心配ですが……。
さらに打点を高める《ドラニスのクードロ将軍》が追加。《サリアの副官》に頼らない全体ロードであり、おまけ程度に墓地追放もついていて、いざというときにこの能力が役に立つこともあります。犠牲は少なくないですが《大物潰し》も打てるので、相手の大型クリーチャーにも対応できます。
緑単信心のクリーチャー群はスタッツが強固な上に死亡誘発を持っていて、除去もためらわれるケースが多いのですが、そこは引き続き《反射魔道士》の出番。PiGを誘発させることなく、さらに次ターンの登場も防いでくれるため、クリーチャー主体のメタでは非常に強力な一枚です。
並べて殴る、はナヤウィノータの特権だったので、こうしたデッキが活躍することは少なかったのですが、今回の禁止によって、こうした直線的なアグロが存在する余地が生まれました。
なお、青単スピリットが多いことを見越してか、サイドボードには非人間の《空殴り》がフル採用されています。
特に地域予選など優勝が求められる大会においては、緑単信心以外のデッキにどう勝つか、も重要になってきます。的確なメタ読みと、それに最適なサイドボードの選定を、以前にも増して意識しなければならないでしょう。
■注目デッキ3:緑単信心(アグロ型)
緑単信心はメタゲーム上でかなり意識されていますが、それを見越して緑単信心側も工夫を凝らし始めました。象徴的なリストをお届けします。無限コンボや《茨の騎兵》のようなユーティリティは存在せず、ひたすらクリーチャーを出して殴る、ということに特化したリストになっています。
まずは《霧裂きのハイドラ》のメイン4枚採用。いうまでもなく、打ち消されず、プロテクション(青)によって青単スピリットには無類の強さを発揮します。速攻持ちなので、全体除去の後に全力で出してゲームを決めることもありそうです。
PW枠は《アーク弓のレインジャー、ビビアン》に統一。信心を稼げる以上に、+1能力のトランプル付与が強力です。特に《霧裂きのハイドラ》は回避能力はプロテクション以外にないため、疑似回避を与える能力は貴重です。他、-3能力はこのデッキに貴重な除去、そして-5能力のオプションに《ウラモグ》を控えさせておくことで、一発逆転も可能です。
クリーチャーデッキのお供《グレートヘンジ》も久々の登場です。特に《炎樹族の使者》で手札のダンプが激しいため、途切れないリソース回復手段として重宝されます。《ハイドラ》2種が控えているため、早期に出すことも難しくないでしょう。
このデッキは、従来型の緑単信心の弱点をカバーしつつ、緑単信心よりも速いゲームレンジを狙っています。青単に強い構成となっていて、森を置いて安心した相手を介錯するには十分な威力を持っています。
半面、すべてのクリーチャーに《致命的な一押し》が当たるなど、除去の多い相手は苦手としています。特に、ラクドスミッドレンジには手数で圧倒できるかどうかがポイントになりますが、従来の緑単信心ほどの優位はありません。
メタゲームの中心をどこに読むか、それによってデッキの選択が変わる好例と言えそうです。
■終わりに
地域チャンピオンシップ予選が続きます。COVID-19の感染者は微増傾向にありますが、遠征をされる方も多くなると思います。メタゲームの移り変わりが激しいため、その週のメタをしっかりと定義して、毎週持ち込むデッキの調整を怠らないことが必要になってきます。
直近のメタゲームはMTGO公式でアップされていますし、Twitter上でも様々な情報が手に入ります。常に最新のメタゲーム動向をつかんでおきましょう。
ご要望が多くあれば、Twitterで直近のメタゲームや注目デッキを投稿していければと思いますので、ぜひご要望等お寄せいただければと思います。当noteと合わせてぜひフォローしていただき、場合に応じてご活用ください(注意:他のゲームや日常Postも多いので、あしからず・・・)。
皆さんの地域チャンピオンシップ予選でのご検討をお祈りしております!
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