パイオニア環境分析のつもり(5/1~16)『謀議』とは!!パイオニアの荒野に!!新しい道を切り開く事だッ!!
■はじめに
こんばんは。体調不良により更新が遅れてしまいました。あわや死ぬ3歩手前ぐらいでしたので、しばらくはいつもに増してマイペースに更新を続けていければと思います。
さて、4月末に『ニューカペナの街角』が発売されましたが、発売直前、それよりも大きなニュースがありました。
MTGA上での新フォーマット・エクスプローラー(Explorer)が発表されました。MTG Arenaで実装されているパイオニアのカードを用いた新フォーマットで、数年後になりますが、MTG Arenaでパイオニアが実装されることが確実になりました。(下記参照)
これにより、現状デジタルではMtGO上でしかプレイできないパイオニアが、(未実装カードが存在する移行期間も含めて)MtGA上でもプレイできるようになったのです。
テーブルトッププロツアーのパイオニア開催も相当なインパクトでしたが、それに勝るとも劣らないインパクトのある発表でした。具体的には、私が所属しているパイオニア関連の海外コミュニティのいくつかが、「Explorer and Pioneer」と改称したぐらいです。
とはいえ、エクスプローラーの環境分析はデジタル専門の方が相当注力するかと思いますので、当noteはパイオニア中心に、時折エクスプローラーの件にも触れながら発信していければと思います。
■メタゲームブレイクダウン
さて、『ニューカペナの街角』が発売してから3週間の入賞デッキリスト(Leagueを除く)228個をカウントした結果です。あまり上位の顔ぶれに変化はなく、「とにかくナヤウィノータが強い」という状況です。エクスプローラーほどの支配率はありませんが、メタゲーム上の存在感は非常に大きいものがあります。
中途半端な速度では太刀打ちできず、かといってアグロにとっては壁が多いため攻め込みづらいという、速い相手にも遅い相手にも対応できる万能型のデッキです。クリーチャー中心ながらオプションも多彩で、「他のデッキをにらみながらナヤウィノータにも勝てる」デッキは多くありません。
《ウィノータ》誘発前に勝負を決める狙いの赤単アグロ
《ゴブリンの鎖回し》が有効な赤単ミッドレンジ
生物による壁で時間を稼ぎ速度勝負を挑む緑単信心
ボードコントロールに長けたラクドスミッドレンジ
スイーパーを擁するアゾリウスコントロール
《氷の中の存在》で蓋ができるイゼット
2番手以降のデッキはナヤウィノータに対抗できる要素を備えています。しかし、これらのデッキをしてもTier1から引きずり下ろすのは難しかったようです。ここ1週間でナヤウィノータは数を減らしていますが、意識から外すのは早計でしょう。
よって、デッキを選択する際は「ナヤウィノータに不利がつかないデッキ」が最低ラインになります。
アグロの比率が上がっています。《裕福な亭主》《復活の声》などの存在からアグロ戦略でナヤウィノータを倒すことは難しいとみられていましたが、赤単や新しいアグロデッキ(今回紹介)によって数値が改善しました。
なお、Midrangeの数値からナヤウィノータの支配率を引くと26.7%となるため、ナヤウィノータに強いアグロか、ナヤウィノータに強いミッドレンジかの二択はほぼ半々という結果になっています。
■注目デッキ1:バント人間カンパニー Bant Human Company
《閑静な中庭》の加入で部族応援ランドが増え、一時期流行した「5色人間」が姿を変えて現れました。注目ポイントは2点で、1点目は「白単に近い構成でデッキの動きが安定していること」、2点目は「ナヤウィノータに強いカードの集中的な採用」です。
1点目についてですが、今までの人間デッキのマナベースは非常に脆く、安定性に欠けることが一番の弱点でした。このデッキは白マナが出る土地を多く採用(出ないのは《樹皮路の小道》《繁殖池》の計4枚のみ)することで、白単アグロに近い運用を可能としています。
2点目は、ナヤウィノータを意識したカード選択です。人間デッキを使う一番の動機が《反射魔道士》で、キーカードを手札に押し返すことで時間を稼ぎます。少ないクリーチャーに頼るイゼット系にも有効です。他にも先手時なら手札から出る前に追放できる《精鋭呪文縛り》や、相手の狼男の攻めをしのげる《ドーンハルトの主導者、カディルダ》などは、汎用的な性能を持ちつつ、ナヤウィノータ戦で重宝します。(おそらく、ナヤウィノータの後手戦では《精鋭呪文縛り》はサイドアウトされますが)。
総じて、「アグロの体を為しつつ、ナヤウィノータに勝てる」構築のトライケースのひとつとみることができるでしょう。他にも数々のアプローチがありますが、今後このような戦略がいろいろと試されていくかもしれません。
『ニューカペナの街角』からは《救出専門家》《策謀の故買人》がエントリー。
《救出専門家》は3/3/2のボディに貴重な絆魂を持ち、更にリアニメイト能力まで持つ破格の性能。《サリアの副官》《サリア》を戻せる点は非常に心強いオプションです。タフネス2がやや心もとないですが、出て除去を使わせた時点で8割の仕事は終えています。
《策謀の故買人》は《真髄の針》に似た起動型能力を封じる効果を持ち、さらにその能力を奪うことができます。ナヤウィノータのマナクリーチャーや《エシカの戦車》のほか、(能力こそ奪えませんが)キーとなるプレインズウォーカーの能力封殺によって緑単信心やラクドスミッドレンジのPWを一時的に無力化するなど、見た目より器用なクリーチャーです。《針》系と違い先置きはできないのが玉に瑕ですが、2マナタフネス3は非常にタフ。使い手の腕が問われる良い選択肢だと思います。
キルターンも早くまくり性能も高いため、もう少し構築を突き詰めることができれば面白そうです。今後のカンパニー系デッキの躍進に期待しましょう。
■注目デッキ2:イゼット果敢 Izzet Prowess
時折姿を見せていた「果敢」軸のイゼット系デッキです。赤単アグロに近い思想ですが、強力なドローカードにより手数が多いのが特徴で、環境屈指のドローカード《表現の反復》が使える点が一番の差別化ポイントです。
とはいえイゼットフェニックスやイゼットコントロールと比べるとかなりのレアキャラ、でした。イゼット果敢を強化したのが、新戦力の《帳簿裂き》です。
2マナ1/3飛行とデフォルトで2点火力を耐え、ウィノータの1/1を止める最低限のスペックを持ち、クリーチャー呪文でも「謀議」は誘発、さらに「謀議」によって手札を入れ替えらえる点が《スプライトのドラゴン》と差別化できる部分です。強化は確実ではありませんが、余分な土地を有効牌に変えることができる点は魅力です。
この手のデッキは「土地を多く引きすぎて負ける」が負け筋のひとつなので、それが解消できる点では優れます。
ルーターを見越してイゼットフェニックスでも使われていますが、そうでなくても十分強い、ということでしょう。
他にも『ニューカペナの街角』からは、癖のない除去の《絞殺》、無色で使え打点も稼げる《未認可霊柩車》が採用されています。これらのカードもイゼットカラーではよく使われており、今後選択肢として大いにあり得るカードになっています。
特に《絞殺》は-2能力から入った《ナーセット》を倒せるほか、ラクドスミッドレンジのタフネス3勢を落とすのに重宝します。相手の《帳簿裂き》は落とせないことのほうが多いでしょう。貴重な1マナ3点除去として、使う側も使われる側も意識しましょう。
イゼット果敢は5/8~週から徐々に人気が出てきています。ナヤウィノータにテンポと手数で勝り、他のミッドレンジにも速度で攻め込める構成になっていて、メタゲームの隙間をうまく突いたデッキと言えそうです。イゼット3種はそれぞれ戦略が異なるため比較はできませんが、今後勢力を伸ばしてくる可能性があり、要チェックです。
■注目デッキ3:ボロス英雄的 Boros Heroic
《ルールス》禁止後に一瞬だけ流行り、その後すぐに消えていったボロス英雄的。爆発力の高いデッキで、ドローこそないものの思想はイゼット果敢と同じタイプで、クリーチャーを高速で強化して速やかに殴り倒す、という性質のデッキです。やはり5/8週から散見されるようになりました。
今回得た新戦力は《照光の巨匠》です。
こちらも「謀議」を持っていますが、デフォルトで二段攻撃を持つ非常に攻撃的なクリーチャーです。イゼット同様にボロスも負け筋のひとつがマナフラッドなので、それを「余分なカードを使わずに」解消できる点は非常に大きな強化となりました。
特に、土地を切り詰めているボロス英雄的は、マナスクリューもマナフラッドも負けに直結するため、ある程度のラインで土地を手札に抱えないことが理想形です。その理想に近づけられる能力を持っているクリーチャーは喉から手が出るほど欲しているものでした。事実、ほぼすべてのボロス英雄的に4積みされています(一部、《フェザー》メインのリストは、重さを嫌って2枚程度の採用に留まる例もあります)。
デッキの標準火力である《無謀な怒り》が《ウィノータ》や《氷の中の存在》の射程圏であるため、メインデッキから《ウィノータ》対処方法がナチュラルに搭載されている事実は、このデッキにとって追い風です。
サイドボードも《レッドキャップの乱闘》《引き裂く流弾》がほぼすべてのデッキに採用され、ナヤウィノータ(と、赤単、ラクドス、イゼット、パルへリオンシュートなど)を意識していることが分かります。
なお細かい点ですが、《戦いの覚悟》の枠が、《照光の巨匠》の謀議能力と相性がいい《農家の勇気》に差し替えられている例が多くみられます。爆発力のある《戦いの覚悟》採用がなくなったわけではないですが、ほぼすべてのデッキでこちらが優先されています。細かな点ですが、そのぐらい《照光の巨匠》が強力であることの裏返しともとれるでしょう。
メタに風のように現れ風のように去っていくイメージで、勢力が長続きしないことが多々あるデッキですが、今回はどうでしょうか。
対応力ではイゼット果敢に分がある一方で、ボロスは爆発力の高さが魅力となります。しばらく使用率の推移を見守りたいと思います。
■終わりに
プロツアーでのフォーマット採用、エクスプローラー発表、と追い風が吹いているパイオニア。ショップからは徐々にカード在庫が枯渇したり、このnoteのアクセスもここ2か月で1.5倍程度になっているなど、パイオニアフォーマットへの注目度が一気に上がったことを実感しています。
現在はメタゲームが緩やかに推移し、ナヤウィノータ以外はメタゲームに支配的なデッキがいない状況。プレイして楽しい環境だと思いますので、ぜひこの機会に多くパイオニアに触れてみてください!