「宝塚」愛あればこそ
「ごらんなさい。ごらんなさい。ベルサイユのば~ら~」
初めに登場するのは、小公子と小公女。この場面・この歌を聞くと「ベルサイユのばら」が始まったと身体が反応する。それと同時に過去の「ベルサイユのばら」達が何度も何度も頭の中に蘇り、私の中で歌ったり踊ったりセリフを言ったりし始める。
私が初めに観た「ベルサイユのばら」平成のベルばらと呼ばれた頃。大浦みずきさんの「フェルゼン編」・涼風真世さんの「オスカル編」・日向薫さんの「フェルゼン編」・杜けあきさんの「アンドレ編」だった様に記憶している。立て続けに色んなキャスティングで観劇して、こんなに沢山のバージョンを長期間かけて全ての組が演じるなんて、これは一大イベントなんだ、凄い事なんだと思った記憶がある。張り切って漫画を読み、漫画のドレスやヘアスタイルにどれだけ忠実に作っているのかなんて事も楽しみながら観劇した。特に好きなのは「フェルゼン編」のマリーアントワネットが一幕終わりで「マリーアントワネットはフランスの女王なのですから」と歌舞伎の見得を切る様な台詞回しで音楽が盛り上がって幕を降ろす所。これは必ず観ないとダメという台詞、所作、歌が随所に散りばめられている。今回は何がある?オールドファンならそんな事も楽しみにしている。
私は入団して2013年の再演「オスカル・アンドレ編」においてオスカルの乳母マロングラッセを演じた。「オスカル編」で好きなのはオスカルとアンドレの出会いから、剣の相手をしている間に大人になる場面でこの公演ではその場面があり、初めの登場ではアンドレの子供役の海ちゃん(海乃美月さん)と下手の花道にスタンバイしていたことを覚えている。おばあさん役だからと腰を曲げすぎたり、ゆっくり話過ぎたりせず、私の実際の祖母をイメージして凛とした雰囲気の残る「マロングラッセ」を演じようと心がけた。お稽古場で観ていた尚すみれ先生が褒めてくださり、うまくできた日は握手をして「よかったよ!」とおっしゃってくださった事を覚えている。
過去に演じた先輩たちの想いを受け継ぎ、次に渡していくといった様な宝塚歌劇にとってそんな伝統を受け継ぐきっかけとなる特別な作品であることは間違いない。
そして今回の令和版(お待たせしました!)、初演から50周年の「ベルサイユのばら」。私の見たい場面が詰まっていながらも、新しい演出も盛りだくさんで90歳を過ぎてまだまだ進化する植田先生の挑戦にお姿は見えないものの素晴らしい生命力を感じたりする。スタイル抜群のフェルゼンと、美しいマリーに、原画から抜け出した様なリアルオスカル。お稽古場ではこの時この場面でこんな風にセリフを言って歌を歌い、立ち居ふるまってほしいという初演の長谷川一夫先生がお付けになった「型」をまず身体に叩き込む事から始まる。雪組の皆様はそこの所を着実にトレーニングし自分のものにして役を生きる姿に何だか感動してしまう私。それは何より彩風さんの役に取り組む真摯な姿勢が何よりもリーダーシップを発揮してくれているように感じる。現役時代からなんてストイックな人だろうと思っていたけれど、そんな実直な舞台への情熱がフェルゼンの血となり肉となり、そして最後のフィナーレでは圧巻のダンス。今回の舞台で大輪の華を咲かせている。
次の100年に向けてまだまだ進化する「ベルサイユのばら」。勇気と希望を、そして愛を感じる舞台。ありがとうございました。
すーさん