見出し画像

おっちゃん達の呟き〜人事異動の悲しさよ〜

宝塚の人事異動と言えば「組替え」だと思う。それ以外は退団しか無い。私が宝塚ホテルに来て衝撃を受けた事の一つに人事異動がある。

宝塚にいた頃は、配属されるとその組に退団まで殆どの人がいる。「組替え」になる人は、その組の番手のバランスを均等にする為や、技術的な補強の為、芝居・歌・ダンスの中の選ばれしスペシャリスト達が異動になる場合が多い。

私は月組に配属され、月組で退団した。凡人だったもので…でもとても幸せだった。19年苦楽を共にした仲間達との絆は掛け替えが無い。また例え、組替えをしても劇団内での仕事は舞台に立つ事だからあまり変わらないのである。

だが…世の中は違うのか…
2月3月辺りから、周りの人はなんだかソワソワし始めるのだ。物事を頼んでも「俺もういなくなるから〜」等と言う冗談なのか本気なのか分からない会話が飛び交う。宝塚ホテルでもまた然り。おっちゃん達は少し悲しげな顔してそう言う。ホテルは、宿泊・管理・レストラン・宴会・調理に分かれているから、色んな部署があってあらゆる場所に異動になる。そして、宿泊特化型のホテル、レストランや宴会場がある総合型のホテル、それぞれコンセプトもお客様層も違うから異動になると、その都度やり方が違ってくる。
何かやりたい仕事があっても途中で終わりがくる可能性だってある。おっちゃん達はいつ異動になるかも分からない中で一年一年その部署で懸命に最大限に働いている。

異動前最後の日は、緞帳前で挨拶する事も無い。発表が3ヶ月も前にあって皆んなとそれまで思い出を分かち合う事も出来ない。辞令からわずかな日数で皆に別れを告げる。親しい人、お世話になった人にひっそりと声を掛けて、明日からは新しい仕事場に行く。最初はみんな慣れているから、寂しくも無いのかと思ってた。でも違うのだわ。去っていくおっちゃん達の背中には、寂しさが溢れてるのです。男役は背中で語るなんて言われてるけど、ほんまの男の背中の哀愁は凄まじい…

「僕はずーっと宝塚ホテルが好きやったんです。」
「支配人ありがとな~」
「コロナあけたら飲みにいこな~」

何となく人がいない時にそう呟いて次の部署に去っていくおっちゃん達(勿論女性もいますが)。「最近馴染んできたなぁ〜」って言ってくれたあのおっちゃんも、朝食会場で汗だくになって配膳していたあのおっちゃんも明日には居なくなります。達者で頑張って下さい!元舞台人はつい感情過多になってわーっと、泣きそうになる。いかんいかん、世の中はもっと表現が奥ゆかしいのだ。

でも寂しいと思っている事が少し嬉しい。それ程愛情があったという事だから。そんな愛ある仕事場で働けているという事。年々お別れを言う度に少しづつホテルの人に知り合いが増えていく。思い出が増えていく。私が少しづつ進化していく。元タカラジェンヌの…ではなくホテルの…になっていく事に少し感動もする日々…

最近のすーさん…



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?