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新宿の勇者 ~過去日記より~

新宿には路上ライブがよく出没していて、自分的には客が群がっていると自転車で通るとき邪魔だし、そもそも一生懸命ライブハウスでやるために客集めてる人達もいるらしいのに、なんだかな、みたいな気持ちもあったりとか。

で、今日も、よく見る感じの、女の子が一人で高い声で歌っているパターンの路上ライブがいたんだよね。自転車でゆっくりその近くを通り過ぎようとしたら、オッサンがその子のチラシを配ってるわけ。

で、自分もまあ、何となく手慰み的にそのチラシをもらったワケなんだけど、なんかそのオッサン、破れた(破いた、じゃなくて、ホントに使い古して破れた)ジーパンに、たぶん清潔なんだけど地味なチェックのシャツ、ヘンな野球帽みたいの被っていて、50前後って感じ。

「こんど、舞台もやるらしいので」とか言っているのですが、アンタ、マネージャーじゃないだろと。ファンだろと。すっげー純粋な気持ちで応援がしたいから、自分から買って出てチラシ配ってんだろと! アツい! アツいよアンタ! 俺はっ! 正直! なんか秋なのに桜の歌を歌っちゃって曲のセレクトがダメダメなあの女の子よりも、よっぽどアンタのことが気になる! その目その表情そのはにかみ具合! 輝いている!

恥ずかしいよな。新宿の路上で、女の子のために一生懸命チラシを配るなんて。自分が他人の目に、どのように映っているかだって重々承知だろう。でもだからこそ、それをやろうって思った心は美しい。あの女の子の声より、アンタのほうがよっぽど美しいぞ! と思いながらもらったチラシはポケットの中でクシャクシャになってる。

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