アマゾンの成長要因は「徹底した顧客体験の追求」と「高速PDCA」

(2021年記載の自身のサイトから転載)
今回は、アマゾン(Amazon)の成長要因に迫ります。
「かつては、日本企業が多数ランクインされていた時価総額ランキングが、大きく変わってしまった」とはよく聞く話ですが、先般テスラがトヨタの時価総額を越えたニュースは印象的でした。
時価総額ランキングに名を連ねる企業の成長のポイントは何でしょうか。 アマゾンのウェブサイトや、アマゾン初代CEO、現会長のジェフ・ベゾスの発言から、「顧客体験の追求」と「学習文化」が鍵であることがわかります。
それぞれ具体的に見ていきましょう。


  顧客体験の追求

アマゾンのウェブサイト上には、アマゾンが大切にしていることについて、次のような記載があります。

私たちの DNA - 地球上で最もお客様を大切にする企業であること Amazon.com が 1995 年にビジネスを開始した際、Amazon.com は「地球上で最もお客様を大事にする企業」であることを使命とし、お客様がオンラインで求めるあらゆるものを検索、発見し、可能な限りの低価格で提供するよう努めて参りました。 この目標は今日も継続しています

また、同サイト上に、アマゾンの "Our Leadership Principles" という 14 項目からなる信条がありますが、その1項目目も、やはり「顧客(カスタマー)」から始まります。  

Customer Obsession リーダーはカスタマーを起点に考え行動します。カスタマーから信頼を獲得し、維持していくために全力を尽くします。リーダーは競合に注意を払いますが、何よりもカスタマーを中心に考えることにこだわります。

    上記ウェブサイトの記載から、アマゾンは顧客(カスタマー)を強烈に意識している企業であることがわかります。 この点をふまえ、アマゾンが世に送り出してきたサービスを見てみましょう。

 Amazon Prime
顧客の「注文した商品をはすぐに欲しい」というニーズを実現し、「送料がかかるのは嫌だ」というフリクションを解消。

Amazon Push
顧客の「日用品が切れてしまいそうなとき、買い足すのを忘れてしまい、使いたいものがない日があった」というフリクションを解消。  

Amazon Go
顧客の「買い物をする際にレジに並ぶ時間がもったいない、決済の手間をかけたくない」というフリクションを解消。 

Amazon Echo
顧客の「家でくつろいでいるとき、手元にスマホが無くても簡単に注文したい」というニーズを実現。 

アマゾンのウェブサイトの記載とサービスを照らし合わせると、上記サービスはいずれも、よりよい顧客体験を追求し、顧客の満足点を増やしフリクションをなくすことに注力した結果であることが推測できます。  
また、電通報でのアマゾンジャパン合同会社市川氏との対談記事にも印象的な言葉があります。
「サービス拡充については、他の事業者を意識するということはないのでしょうか?」
「もちろん情報としては入ってきますが、それはお客様がどのような環境に接しているかを把握するためという感じですね。他社のサービスを意識的に追従するといったことはありません。」  

新サービスローンチ後によくしてしまうのが、競合他社サービスに追随し新機能を次々と実装することではないでしょうか。
「新機能を追加したけれど顧客満足につながらない」ときにはこの言葉がヒントとなりそうですね。

ここまで、アマゾンが「顧客体験を追求」してきたことについて触れてきました。
続いて、アマゾンの成功要因の2つめ「学習文化」について見てみましょう。  

学習文化

ジェフ・ベゾスは学習文化についてこう言います。  
『Our success at Amazon is a function of how many experiments we do per year, per month, per week, per day.』(引用:advertisingweek360 )  
アマゾンの成功は、月に、週に、日にどれだけたくさんの学習を繰り返せるか、その仕組みによるものだ   上記発言で、ジェフ・ベゾスは、「学習の繰り返し」「それを実現する仕組み」を強調しています。   この「学習文化」を活用し成長している企業はアマゾンだけではありません。近年顕著な成長を遂げている多くの企業が取り入れています。例えば、Netflixは年間1,000回以上、Googleは年間7,000回以上、P&Gに関しては年間10,000回程度に至るPDCAを繰り返しています。
<出典 fastcompany >  

Amazon、Netfilix、Googleと続くと、「学習文化」は、比較的新しい企業だけが取り入れられるものだと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、P&Gも学習文化を取り入れていることから、この文化はスタートアップ企業だけが持てるものではなく、大企業にも適用可能であることがわかります。  
学習を高速に行うためには ここで注目したい点は、アマゾンが「per day」と言及していることです。
日々、高速のPDCAを回すためには、意味のある分析を高速で行うこと、改善案を素早く立案・決定・実装することが必要です。
しかし、様々な企業のご担当者様とお話する中で、スタート地点となる「分析」に時間をかけ過ぎてしまっているケースが多いことがわかりました。
ですので、「顧客体験価値」を追求した「高速なPDCA」に有効な、顧客体験理解のための分析をいかに高速に行うかについて、例をお示ししつつ、記載したいと思います。  

ケースとして、SpotifyやAWAのような音楽配信サブスクリプションサービスを提供する企業が、初回利用時の顧客体験価値を高めるために行う分析を見てみましょう。
「初回訪問者にどんなアクションをお勧めしたら顧客体験価値が高まるか」を特定するため「どのような行動をしたユーザーがサービスを継続利用してくれているか」確認します。
まず、どの機能がどのくらいのユーザーに利用されているかを把握します。(ここでは、横軸に、MAUの何パーセントが利用しているか、縦軸に1ユーザーあたりどのくらいの頻度で利用しているかをプロットしています)

この中で、どの機能がサービスの継続利用に寄与しているか目星をつけます。 例えば、「お気に入り登録」機能や「音楽/動画のシェア」機能を利用している人が継続利用しやすいのではないか、と仮説を立てます。  
次に、それぞれの行動をしているユーザーの継続利用率にどのような差異があるか見ます。 (行動セグメントごとに、利用開始したユーザーの何%が、利用開始からX日後に再び利用しているかをプロットします。)

このような分析を繰り返すことで、顧客体験と継続率の関係性を可視化し、「どの機能の利用が継続利用に寄与しているか」つまり「初回訪問時にどの機能を体験することが継続利用に有効か」見極めることが可能となります。   この分析結果により、継続利用率を高めるための打ち手の立案が容易になります。

たとえば、初回訪問時にポップアップで「お気に入り登録」機能の案内をする、チュートリアル内に「お気に入り登録」機能の体験を組み込む、などが考えられるでしょう。  

以上のように、ユーザー行動軸で分析を行うことにより、顧客体験を改善し、事業成長に向かう有効な打ち手を明確にすることが可能です。
ただ、深堀分析となるため、定型のダッシュボードを見ることと異なり、都度分析工数を要することが難点です。  
このユーザー行動軸での深堀分析を「高速に」行うための方法は2つあります。
1つめは、自社エンジニア/アナリストリソースをここに寄せて、自社リソースで分析を進める方法。初期のfacebook社はこの方法を選択していました。 2つめは、必要な分析軸を備えた分析ツールを活用する方法です。世界的に有名なテック系5企業を総称しGAFAMと呼ばれていますが、この5社のうち3社は、優れたユーザー行動分析ツールを活用しています。

自社リソースに「マーケティング感覚を持ったアナリスト」がおり、潤沢な分析工数を割くことが可能な場合は前者で進めることが可能です。
そうではない場合には、外部パートナーの並走支援を受けながら最適なツールを活用することが有効です。外部パートナーやツールが持つ成長企業のベストプラクティスを活用できるという点も、後者のメリットと言えます。  

調査手法を選択するデータリテラシーの必要性 顧客体験を理解するためには、顧客へのインタビューを思い浮かべる方もいらっしゃるかと思いますので、最後にインタビューと行動データ分析の違いを記載します。
もちろん、インタビューは顧客体験を把握するために有効です。
特に、「どう感じたか」をダイレクトにヒアリングできる点はメリットです。
カスタマージャーニーやペルソナを描く際にインタビューを用いる方は多いかと思います。

一方、インタビューを実施するには、リクルーティングや、インタビュールームの手配など、事前準備も多く、そう頻繁には実施できません。
ここで、ベゾスの発言、「月に、週に、日にどれだけたくさんの学習を繰り返せるか」に立ち返ります。
数か月に一度のインタビュー結果では、日々の改善には役に立ちません。「日々、昨日の(あるいは数時間前の)データを見て、実装した施策の効果を判断すること」このスピード感を出すためには、ユーザー行動分析をいつでもできる環境を整えておくことが有効です。

とはいえ、ユーザー行動分析のみでは見えてこないこともありますので、日々のPDCAはユーザー行動分析を活用し高速に繰り返しつつ、必要なタイミングでテーマを絞りインタビューなどの手法を組み合わせるのがよいでしょう。
シーンに合わせ調査/分析方法を選択するデータリテラシーが必要です。  

本記事で記載したこと

今回は、以下についてご紹介いたしました。
・時価総額上位企業がここ数十年で様変わりしている
・時価総額上位企業の1つであるアマゾンは、「顧客体験の追求」を大切にしている
・時価総額上位企業や成長企業は、PDCAをまわす「学習文化」を取り入れている
・「学習文化」の実現には、高速で意味のある分析が必要不可欠である
・高速で意味のある分析を行うには、自社リソース対応、外部ツール活用の2つの選択肢がある
・状況に応じ調査/分析方法を選択するデータリテラシーが必要である

いかがでしたでしょうか。本記事が、御社のビジネス成長の参考になりましたら幸いです。

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