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沈みゆく船の中で、迷わずに自分のできることを全うできるか

タイタニック号で沈没間際まで船上で演奏を続けていた楽団の話はあまりにも有名です。私が大学入試後期試験に躍起になっている頃、その楽団のバイオリンが見つかったニュースがTwitterで話題になっていました。

映画タイタニックの国内地上波放送回数は6回にも登りますが、当時はこの話題にピンときていませんでした。なぜなら、少年時代から見よう見ようと思いながら毎回寝落ちしてしまい、ついには完視聴をしないままアラサーになってしまったからです。最近になってようやく重い腰(瞼?)を上げて、4Kリマスター版で194分の大作を見ることができました。

そしてつい先月、例のバイオリンが入ったケースがオークションで落札されたニュースを目の当たりにし、思い立ってこのnoteを書くことにしました。

刻々と身に迫る危険の中、自分はどんな行動をするか

大人になってからはじめて通り見た、沈みゆく船の中で楽団がバイオリンを演奏するシーンは、私の様々な感情を掻き立てました。特に、楽団のリーダーであるウォレス・ハートリー氏の言動には目を見張るものがあります。

映画の中で楽団のメンバーは、一度「ここまでだ」と解散をします。このとき私は、心底安心しました。というのも、もし自分があの場にいて奏者の1人だったら、逃げるよう促すと思いながら観ていたからです。

でも、1人が残って演奏を続けたシーンを見たときには、心臓の音がバクバクしたことを覚えています。しばらくして、解散したメンバーが戻ってきて一緒に演奏をはじめた頃には、もう感情がめちゃくちゃになっていました。シンプルに、理性的な行動に感動したのだと思います。

理性的な行動が、近い他人の行動の優先順位を変える

自らが直面する危機から脱することと、全体的にマイナスな状況(ないしは絶望)を少しでもプラスにすることを天秤にかけたときに、彼らの中では後者のほうが納得のいく選択肢だったのかなと。また、1人が残って演奏する選択をしたからこそ、他のメンバーの行動も変わったのかなと考えました。

氷山にぶつかるような死に迫るような危機ではなくとも、自分が乗っていた船が、たまたまエンジントラブルで海上で停滞してしまったり、座礁しやすい区域に入ってしまったりと、好転しない状況が続くことは日常や仕事でもあるかと思います。特に、私たちの仕事では、チャレンジングなプロジェクトが多い分、不安定で日の目を見ない時期をお客さんと共有することも珍しくはありません。

不安で困惑するような状況で、理性的な行動を優先することは、簡単にできることではないでしょう。受け入れがたい状況の中、逃げない選択を取ることは、相当なストレスです。逃げるが勝ちという言葉もあります。

なんですけれども、1人の理性的な行動で、他人の行動の優先順位が変わること。理性的な集団の行動が、結果的に状況を多少マシにしてくれることを、規模ながら会社という船を経営する者として心に留めておきたいなと、ニュースに想いを馳せている次第でした。

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