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【SPIRIT of SEAGULLS】vol.1 「情熱」 岩元海生('18年度卒)

「SPIRIT of SEAGULLS」とは…
多方面で活躍するSEAGULLS OBに、在籍中に感じたことなどについて執筆してもらう連載企画です。


 2018年、インカレ決勝。試合終了のブザーとともに、ベンチ、応援席のメンバーが喜びを爆発させる中、私は誰よりも早くコートに飛び出し、キャプテン内田旦人(現・京都ハンナリーズ #15)のもとに駆け寄り、熱い抱擁を交わした。「日本一」という壮大な目標を最高の仲間たちとともに達成し、今までに感じたことのない興奮や喜びに包まれ、その夜はまともに寝付くことができなかった。
 トップ選手が集う大学バスケの夢舞台で、まさか自分が日本一を経験できるとは、そして学生トレーナーとしてチームの勝利に貢献できるとは。数年前の自分からは想像もつかない姿がそこにはあった。

試合終了と同時に選手のもとへ駆け寄る岩元

 SEAGULLSとの出会いは、小学4年生。東海大学で行われたバスケ教室に参加し、それまで見たことないほど体の大きいSEAGULLSの選手に囲まれてバスケをしたのが強烈に印象に残っている。生まれも育ちも湘南・平塚の私にとって、SEAGULLSの存在はその後のバスケ人生で身近なものになっていった。その後何度かSEAGULLSの試合を見る機会はあったが、具体的な進路として東海大学を意識したのは高校3年生になってからだった。しかし、進学後の目標や、将来の夢が明確になっていたわけではなく、漠然とした憧れから東海大学に進学を決め、SEAGULLSでの活動を始めることとなる。

 SEAGULLSの学生スタッフはマネージャー、学生コーチ、学生トレーナー(ストレングス&コンディショニングコーチ、アスレティックトレーナー)などの役職に分かれている。その中で私は学生トレーナーの「アスレティックトレーナー部門(テーピングや練習前後のケアを担当)」を志望し、学生スタッフとしての活動をスタートした。

毎年行っているクリニックの様子(写真は2019年度)

 活動初日、体育館には雑誌やテレビで見た有名選手や、同世代のトップ選手が続々と集まってくる。この豪華メンバーに囲まれて活動するのかと、気分は高揚し、ウキウキ感を隠しきれない自分がいた。

 しかし、淡い期待は早々に打ち砕かれることになる。


「知識も技術もない人間が格好つけるな。」


 先輩スタッフからぶつけられたこの言葉が頭から離れなかった。夢の舞台に足を踏み入れた私たち新入生が浮き足立っていることは、先輩スタッフにはお見通しだった。輝かしい実績の陰にある、学生スタッフの献身や覚悟は私の想像を遥かに超えたものだった。

 学生トレーナー1年目、私に任された仕事は倉庫の物品整理とワセリンパッド作りだけだった。自分の甘さを痛感させられる毎日。しかし、何も言い返せないくらい先輩や他のスタッフの熱量や覚悟、努力は桁違いだった。学生スタッフとしての1年目は思うようにいかないことも多く、苦しい日々が続いた。それでも自分の中にあったのは、「頑張っている人を支えたい」という思いだった。そしてその年のインカレ決勝。劇的な追い上げを見せ、“ミラクル東海”と呼ばれたあの試合が私の中に「日本一」への情熱を再び灯すことになる。

 2年目、3年目はBチームのテーピングやケアを任され、少しずつ学生トレーナーとしての経験を積み上げていった。そして、勝負の4年目。Aチームを担当することになり、日本一への挑戦が始まった。

 最終学年になり、改めて「俺たちがやらないといけないんだ」という自覚と責任を胸に、シーズンをスタートさせた。しかし、思ったような結果は得られず、何度も4年生で集まり、ミーティングを重ねた。

「自分たちにできることは何か?、チームに必要なことは何か?」

 繰り返し自分に問いかけ、試行錯誤する日々が続いた。そこで私が行きついたのは、テーピング等で使う準備室の掃除や、練習の手伝いなど、学生スタッフとしての原点とも言えることを大事にすることだった。学生トレーナーとして未熟ではあるものの、知識や経験を身につけてきた自信はあった。しかし、勝負の4年目に私がチームの勝利、目標達成のために選んだ行動は、“スタッフとしての原点回帰”だった。掃除や練習の準備、片付け、そして厳しいトレーニングに向かう選手に声をかけ、一緒に戦う姿勢を見せる。どれも下級生の頃から体に染み付いている学生スタッフの最も基本的な姿勢であり、魂とも言える部分だった。

「これこそ私の仕事だ!これで私は日本一に貢献する!」

もう迷うことはなかった。

 勢いに乗ったチームは秋のリーグ戦を3年ぶりの優勝で終え、最高の形でインカレを迎えることになった。

3年ぶり5度目のリーグ戦優勝

 そしてインカレ初戦の朝。私が試合の準備をしにトレーニングルームに顔を出すと、そこにはベンチ入りを逃した強化組のメンバーたちが早朝からトレーニングに打ち込む姿があった。また体育館では、ベンチ入りメンバーたちがシューティングを行い、試合に備えていた。この姿を見て私は「これほど勝利に向けて準備しているチームは他にない、このチームが負けるはずがない」と日本一を確信した。

 それからの1週間はあっという間に過ぎ、夢にまで見た「日本一」に遂にたどり着いた。

5年ぶり5度目のインカレ制覇

 SEAGULLSでの4年間はそれまでの私からは想像もできないほど刺激的で、夢のような時間だった。何者でもなかった自分が、気持ちひとつで、必死に食らいつき、もがき続けた4年間。陸川コーチをはじめ大人スタッフの方々、学生スタッフの先輩方、そして共に戦った同期の仲間たちのおかげで、成長が加速する実感が得られた4年間。

 知識や技術はもちろん大事だが、最後の最後で私を支えてくれたのは、“情熱”だった。


この“情熱”はSEAGULLSを離れた今でも、私の中で燃え続けている。

試合終了後にキャプテン内田旦人と熱い抱擁を交わす岩元

・岩元 海生(いわもと かいせい)
神奈川県出身。湘南工科大学附属高等学校を卒業後、SEAGULLSで学生トレーナー(アスレティックトレーナー)として活動。卒業後の2019年よりBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」U18のトレーナーとして活動中。


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