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追悼:菅原文太さん 貴種としてのヒーロー

2014年12月1日  facebook投稿

菅原文太さんが亡くなりました。高倉健さんが亡くなったときは強い喪失感がありましたが、文太さんだと、悲しいのですが、喪失感というより
「神話の幕が閉じた」という感じがしています。

あたしにとりましては、菅原文太さんは、とにかく「仁義なき戦い」です。各回10回以上見返していて、まったく飽きることがありません。名言集だったら100は言えます。

喪失感ではないのはなぜでしょうか? 「仁義なき戦い」はホメロス物語と同じで「貴種漂流譚」という<神話構造>にのっとっている壮大なストーリーなのです。オデュッセイアが文太さん演じる広能昌三です。

「仁義なき戦い」のなかで仁義があるのは広能だけなので、それゆえに戦後映画のなかで屹立した貴種としてのヒーローになっています。

もちろん、広能をやくざの世界に入れた役の梅宮辰夫さんや、親分が反対しても恩義から抗争に加わった若者の松方弘樹さんなども仁義はありましたが、必ず死にます。広能だけが生き残ります。そして、最後の最後に「死んでいったもんにすまん」と言います。

「仁義なき戦い」を見ている限りは菅原文太さんは不死だと思えるのです。
荒っぽく直情的にみえてもどこか義理深さと品性を感じさせた演技はやはり文太さんの教養と人柄ではないかと思います。

仙台一高の一学年下には井上ひさしさんとリベラル憲法学者の樋口陽一さんがいました。晩年の政治的発言には、東北の反骨精神が文太さんのなかにあったのではないかと思います。合掌ですが、あたしのなかでは亡くなっていないなあと思います。

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