#17 武器としての交渉術 by 瀧本哲史

京大で最も人気の高い授業の一つであった瀧本先生の授業の書籍化版。いつまでも活きる交渉の術、重要性、実際の対処法などを分かりやすく一冊の本へとまとめた本。営業としてのみならず、経営者としても必須なスキルを満遍なく網羅している本書を折に触れて読み返し、自分のものにしたい。

・大切なのはロマンとソロバンである。
交渉は日常に溢れているもので、何か大きなことをする、現実を動かしていくにあたって、交渉による合意は不可欠。どんなに素晴らしい夢や希望を語っても、相手に対して具体的なメリットを提示できなければ、人を動かすことは難しい。一方で相手にとってのメリットを話すことができれば、合意に近づける可能性はより高くなる。自分のロマンと、相手のソロバンに目を向けること。相手のソロバンが弾かれてから、自分のロマンが達成される。

・自分の立場ではなく、相手の「利害」に目を向けることが。
就職氷河期の時に新卒採用がないことを嘆くデモ、どうして自分たちがこんなに苦しまないといけないのか等の方向性ではなくて、若い人々が雇われたら企業にとってどのようなメリットがあるかを代わりに提案してみるべき。
相手のメリット、思惑をいかに的確に聞き出せるかで合意により近づく可能性が広がる。例)オレンジをとった交渉で、一人は実際はジャムに使うための皮を、もう一人は中身を欲していたというケースがあるが、同じものを欲しいと言っているだけではそこから何も進まない。

・Best Alternative to a Negotiated Agreement(BATNA)を持つこと
交渉に望む際に、仮に合意に結びつかなかったとした場合に自分が何を譲歩できるのか、現段階での合意が反故になった場合、他の選択肢をとった場合にどれくらい自分にとって便益が下がるのか、またそれは許容範囲内にあるかなどを予め探っておくことが非常に大切。交渉に臨んでいる両方のバトナの最適解で決まる。
実際の交渉では、自分のバトナを悟られないようにする、また相手からのバトナの認識をコントロールすることができるとスムーズに交渉を進められる可能性が広がる。逆に、相手のバトナを認識させてあげることも、そして相手のバトナが最善手ではないと説得することも時には必要になってくる。

・アンカリングと譲歩を使いこなす。
最初の提示条件を元に交渉の土台を設定する。ルーズベルト大統領の選挙公報の際に使用予定の写真の著作権を確認し忘れていたことが発覚。そこで本来なら強い値段を相手に出されるところだったが、使用されるということはアピールチャンスであり、最終的に使用されるには、5000ドルの政治献金が必要というアンカリングをすることで、立場を逆転させた。
交渉のスタート時におけるアンカリング、土俵設定がいかに大事かを物語るエピソードとなっている。
一方で継続性を持たせた適度なアンカリングを設定しないと、長期的なおつきあいには発展しない。
気まずくても沈黙に耐えること、情報の隠蔽そのものを交渉材料にすること(債務残高がどれくらいあるかを長銀が隠したので、リップルウッドはお得な値段で購入することができた。)

・非合理な人とどのように向き合うか?
合理的な場合は上述の方法でいけるとして、非合理的な場合はどうか?
価値観を理解して欲しい人には、歩み寄りや同じ立場なんですと語りかけること。
ラポールを重要視する人には、接近の回数を増やすこと。自律的決定を好む人には、判断をする情報を与えること。ランク主義的な人には、ランク武装をすること。合理的な人、非合理的な人共に相手の分析が欠かせないということである。

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