#85ピーターリンチの株で勝つ

バフェットの投資手法において多大なる影響を与えたというピーターリンチの成長株投資法をアマの投資家向けに噛み下いてわかりやすく、実践的な形で描き直したのが本書である。ここでもバフェット同様で投資対象はシンプルな銘柄が良いこと、そしてやはりいつ攻守の切り替えを行うべきか、何を持って判断材料にするのか、といった投資の「ルール」を規定している。株式を業績状況、業界状況、B/Sの状況によって分類をし、それぞれに応じた戦略を披露している箇所は実践的にも参考することができ、大変有用な一冊となっている。このような本を読んだときに、実践項目に対して、過去の株価の帰趨を考えながら自分で行間を埋める作業を行いたいものだ。
以下、新たな発見点も含め、勉強になった箇所を書き残しておく。

・1950年代の平均的な米国人には株の不信感が根強かった。しかし振り返るとその時代の相場は、振り返ると、リスクリターンの非常に良い時代であった。相場の予測がいかに難しいことか。

・証券会社がカバーしていない、成長性を期待できない、経営陣の能力が未知数、競争で負けるだろうからといった買う要素のない銘柄の中でシンプルなビジネスを営んでおり、しっかり利益をあげている会社を買いたい。

・アマチュアの強みとしては、投資時間に制限がないこと。投資結果の批評を受けなくて済むこと。

・株が賢明な投資先になるのは最もそう思われていないとき。

・株式投資で大切な素質としては、忍耐強さ、自主性、常識、苦痛についての耐久力、自由な発想、完全な情報がない中で決断する能力。

・低成長株、GNPより少し大きい成長率を示すもの、急成長株の成長率が低くなってできる。事業拡大余地は限定的だが、配当は安定している。
購入時には、配当の安定性を調べること。
売却のタイミングとしては、配当を安定的に払えなくなったり、市場シェアがだだ落ちしている時。

・優良株は、年10%前後の成長が安定的に見えるもの。規模も大きく、競合との差別化もうまくいっている銘柄だ。
今後の見通しの中で、必要のない多悪化が生じる可能性が限定的かどうかを調べる。
売却検討する際には、PERが平均よりもだいぶ上振れているとき。役員からの自社株購入がないとき。

・急成長株は、年20~25%成長を遂げている銘柄。必ずしも新興市場に存在しているわけではない。
主力商品の成長可能性、拡大余地の実際、株価は成長率にふさわしい上昇を伴っているか。成長率の減衰は要注意サイン。

・市況関連株は、売上と利益が景況感に連動する銘柄をさす。
景気回復時には、PERが低下しうること。在庫及び需給関係に関して注意深く見守る必要がある。製品の需要がピークアウトしているタイミングが売り。

・業績回復株は、売上が低迷して、会社更生のお世話になっていたりするもの。債権者からの攻勢に対して防御することができるか。
資産株は、会社保有の資産が市場に発見されていない価値を持つ銘柄。

・企業を選ぶ際には、関心しない業界、分離独立した会社、機関投資家が保有せず、内部関係者の保有が進んでいる銘柄、買い続けなければならない理由がある会社、使い続けなければならない理由がある会社、テクノロジーを使う側である会社。

・将来の収益改善には次のような方法がある、コスト削減、値上げ、市場拡大、市場占有率拡大、赤字部門のテコ入れ、閉鎖、売却。アナリストの収益予想が多く出ていれば出ているほど、実際に収益が改善しても株価は下落する傾向がある点を忘れないこと。

・成長株は自分のPFの30~40%に収めている。残りは、優良株、市況関連株などに分散。(これらはSPXやインデックスを購入することで対処する発想も可能。)

・株式市場でよく聞く迷言。
株価がこんなに下がったのだから、さらに下がることはない。底値にきたらそれと分かるものだ。(実際はわからない)株価がこんなに上がってしまったらこれ以上の上値はない。(実際は上値を大きく伸ばすこともある。)10ドルに戻ったら売る。(実際には10ドルに戻らないことが大大にしてある。)何かが起こるには時間が経ち過ぎている。実際には急に株式が動き出すことだってある。

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