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デジタル庁とは何か


前提 公開情報のみ

 忘備録がてら記載

1.「霞ヶ関」にない(紀尾井町にある)

 「紀尾井町」ってのは、紀州と尾張と井伊の屋敷があったから紀尾井町。まあ重要なのは「霞ヶ関」にないってこと。
 どうでもいいが永田町は永田さんが住んでたから。八重洲はヤン・ヨーステン由来だとか。

https://www.google.com/maps/@35.6879665,139.7513645,14z?entry=ttu

 東京の中心は皇居。で、皇居のお堀の東を見ると東京駅がある。このあたり大手町、丸ノ内などのオフィス街で、南に行って帝国ホテルの隣、日比谷公園があるが、その西が「霞ヶ関」で、財務省だとか外務省だとかの庁舎が並んでいる。
 さらに西、国会のある「永田町」で、そこから北に紀尾井町はあって、要は微妙に霞ヶ関から離れていると。
 官僚の皆さんの霞ヶ関から紀尾井町への移動は、地下鉄や公用車など。徒歩だとちと遠い(1.5km~2km)。
 また、ガーテンテラス紀尾井町という民間ビルの中に入っているのも特徴。オフィスビル自体は綺麗だが、役所だとだいたいある「職員食堂」がないので、そこは不便だとかだが、「あいつらは霞ヶ関じゃない」というのが問題。なお、NISCも溜池山王駅のあたりで霞が関ではない。

2.前身は「IT室」+a

 2021年8月に廃止された内閣官房情報通信技術総合戦略室(通称、IT室)の「業務」を見ると、今のデジタル庁(2021年9月設置)と被る。
(補足しておくと、2020年9月に当時の菅義偉首相が1年後のデジ庁発足を指示)

総括・戦略班、デジタル・ガバメント班、マイナンバー班、オープンデータ・データ流通班、地方班、新産業・科学技術班、プロジェクト班、とあるが、どれもデジ庁に引き継がれている感じ。

 ただそれより、「人」ということでもIT室→デジ庁の移行は注目ポイント。現在の幹部だと、二宮デジタル審議官、冨安統括官、向井参与などなど。

 また、IT室に所属の「政府CIO補佐官」からデジ庁幹部ということだと楠  正憲統括官、山本教仁CCO(チーフクラウドオフィサー)、関治之シニアエキスパートなどなど。

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/hosakan_ichiran_2021.pdf

(ただ、2021年から参画してその後も幹部として居続ける人というのも要注目かも。)
 
+aの部分は、内閣官房番号制度推進室とか、総務省大臣官房個人番号企画室とか、マイナンバー関連(個人番号、番号制度)。

3.組織は4つのグループ(部局)で、仕事は3つ


https://www.digital.go.jp/about

雑に語ると、
1.戦略・組織グループ
 総務や会計、企画など。なお、デジタル庁だけでなく、中央省庁全体の情報システム関連の予算や会計も担う(一括計上予算)。
2.デジタル社会共通機能グループ
 要は地方自治体向けの部局(標準化、ベースレジストリ)。
3.国民向けサービスグループ
 マイナンバー(カード)の部局。
4.省庁業務サービスグループ
 中央省庁向け(ガバクラ、GSS)で、要は「霞ヶ関の情シス」の部局。

独断と偏見を持って述べると、1.マイナンバーカードとか国民向け 2.地方自治体向け 3.中央省庁向け の3つがデジタル庁の仕事という感じ。

3補足 「職員」の特徴(「公務員」半分、非常勤1/4、民間出向1/4(?))

https://www.digital.go.jp/policies/report-202209-202308/organization より

 デジ庁は職員に特徴があるので補足(ただ、自分の理解がどの程度正確かあまり自信なし)。

 霞ヶ関のお役所というのは、総合職・一般職(旧一種・二種)の国家公務員試験に合格して採用された「官僚」(公務員)がメインで働いているわけだけど、デジ庁だと半分くらい。左下の円グラフ「人材カテゴリ」の行政出身者44%に注目。
 そして、「プロパー」ということだと45名(左上の棒グラフ。新卒・中途含む)程度。じゃあ残りの官僚はどこから来たかというと総務省とか他省庁からの出向だと。なお、内閣官房などもプロパーは少なくほぼ出向者。

 ただ左下の円グラフ、「民間出身者」と「その他事務補助等」で50%なのだけど、そのうちどれくらいが「非常勤職員」なのかはイマイチわからず。

 2021年9月の東京新聞の記事によると、「民間から登用された職員約250人のうち、非常勤が98%を占めていることが分かった」とのことだが、この「非常勤」もたぶん2種類いて、「民間専門人材(≒契約社員)」と「企業からの出向者」といると。民間専門人材は自分で応募、出向は本人の意志ではなく会社から送り込まれる、というのが違い?

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/ukeire_r051001.pdf

 どうも上の表の「民間企業」の223人が「出向」で来ている人っぽい。また、「左記以外に民間から受け入れている者」の260人が「民間専門人材(≒契約社員)」かなあ。まあ右端6人と合わせて506人が民間出身。

https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/pdf/ukeire_r051001.pdf

 出向元としては、マイクロソフト(2名)や日本電気(7名)だけでなく、メルカリ(7名)なども特徴か。職員1000人のデジ庁だが、内訳としては「公務員(官僚)」は半分、残りが民間人だと。

https://www.shiokawa-tetsuya.jp/wp/?p=2893

 IT室のころから出向者は多かったということで、共産党の議員の質問なども。

「補足」が長くなりすぎ。補足の補足で離職関連、

(2021年度末にかけて相当数の離職があったとの報道がありましたが)2021年度末に任期満了で予定どおり退任された方もいましたが、契約満了前に離職された方は2名でした。

https://digital-gov.note.jp/n/na468ff8821d0

とあるが、立憲民主党の議員からの答弁によると、2021年度末で辞めた(更新しなかった)のは43人だとも34人だとも。母数が200人と考えるならまあまあの離職率か。

令和三年九月から令和四年五月までの間に、デジタル庁の常駐の職員のうち退職(期間業務職員が、同年三月三十一日に任期満了により退職をし、同年四月一日に採用された場合の当該任期満了による退職を除く。以下同じ。)をした者の数は四十三人であり、これは四についてで述べる任期満了で退職をした者の人数を含むもの

任期満了を迎える予定であったデジタル庁の常駐の職員のうち、任期満了で退職をした者の数は三十四人

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b208144.htm

追記:民間専門人材(≒契約社員)だけでなく、民間専門人材(=出向中)もいるとか。

4.仕事1 対国民向け(マイナンバー、マイナンバーカード)

 一番注目を集めている部分。デジタル庁と言えばマイナンバー(カード)ってのが世間一般の認識か。今(2024年夏)だとマイナ保険証まわり。
 マイナンバーとマイナンバーカードは微妙に違うのだけど、絶妙に重なりあっているのがややこしい。たとえばマイナンバーカードを未取得(返納済み)でも、住民票の写しに「マイナンバー」の記載はできる。カードがなくてもマイナンバーは成り立つ。
 逆は成り立つのかというと、ややこしいけどマイナ保険証ではマイナンバーは使っていない。マイナンバーカードは裏面に記載のマイナンバーより、中のICチップが本体なので、そこのもろもろを使うというわけ。

https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/fe9dcb35-6fc6-4e96-91b6-25769ce8b597/20211020_news_mynumber_01.pdf

 ではあるのだけど、そのICチップ内にもマイナンバーは入っていて、そもそも「電子証明書」の仕組みも「住民基本台帳」(=自治体が持ってる住民の名簿)と照合するような感じの仕組みでややこしい、というかITリテラシーがそこそこあって、かつ、いくらか勉強するつもりがないと理解できない内容と思う。

5.仕事2 対自治体向け(標準化、ガバクラ)

 SNSで一番騒がしいのがここかも。自治体職員の声が色々と出てくると。一応補足すると、たとえば「住民票の写しの交付」は自治体の業務だが、マイナンバーカードを使ったコンビニ交付だとかもあり、マイナンバー(カード)は自治体も大いに関係している。

※もうちょっと追記予定

6.仕事3 対中央省庁向け(一括計上予算、ガバクラ)

 逆にここはSNSだと静か。ニュースでもあまり見かけないかも。というか、部外者にはよくわからんね。政府予算の仕組みがまずややこしいけど、社会保険料なんかはまだわかりやすいか。でも「政府情報システム」の予算と言われてもピンと来ない人が多いはず。(身近なとこだと、マイナポータルも政府情報システムだけど、これまで何十億~と予算を使っている)

※もうちょっと追記予定


7.デジタル庁の所管じゃないもの(対事業者とか)

主に2023-24年のニュースから、

 経産省のTSMC、ラピダス、さくらインターネット等への補助金。半導体やAI(データセンター)って「デジタル」だよね?

 総務省のLINEヤフーへの行政指導とか、携帯電話(通信)関連も、いや「デジタル」だよね?

SNSは総務省の所管なのだっけ?

 公正取引委員会の、スマホアプリの競争を促す法案。アプリはもちろん「デジタル」(IT)だが、まあこれは公取ってのは分かりやすいか。警察庁の、サイバー関連犯罪とかもそうか。他、金融庁のビットコイン(暗号資産)とかもデジタルだけどまあIT技術を用いた金融分野のもの、ってことで金融庁が適切か。

 文科省のスーパーコンピューターってのも、結局、大学とか研究機関の所管というので。

 サイバーセキュリティ関連は、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)ってところ。

 最近だと「能動的サイバー防御」ってのも出てきているが、ここもNISCか防衛省とか。

まとめ デジタル庁とは何か(何でないか)

「我が国全体をつくり替えるくらいのつもりで取り組んでほしい」――。2021年9月1日、菅義偉首相(当時)は肝煎りで発足させたデジタル庁の発足式で、デジタル庁への期待をこう示した。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02187/092800006/

と、記事だが、首相官邸HPだと以下のように語っている。

 新型コロナ感染症への対応の中、行政サービスや民間におけるデジタル化の遅れが浮き彫りになりました。思い切ってデジタル化を進めなければ、日本を変えることはできない。これを強力にリードする司令塔が必要である。こうした思いで、デジタル庁の創設を決断いたしました。
 行政サービスの電子化の遅れ、バラバラな国と自治体のシステム、マイナンバーカードの利便性の問題など、長年、手が着けられず、先送りにされてきた課題がたくさんあります。
 デジタル庁には、政府関係者に加え、民間で様々な経験をされた方が数多くいらっしゃいます。立場を超えた自由な発想で、スピード感を持ちながら、行政のみならず、我が国全体を作り変えるくらいの気持ちで、知恵を絞っていただきたいと思います。

https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202109/01kunji.html

 自分の読んだ感想だと、菅義偉首相(当時)にとっては「行政サービスのデジタル化」が主眼だな、というところ。「行政のみならず」の一言が結構大きい。
「行政サービスの電子化の遅れ、バラバラな国と自治体のシステム、マイナンバーカードの利便性の問題など、長年、手が着けられず、先送りにされてきた課題」というのも、
1.対国民向け(行政サービスの電子化の遅れ、マイナンバーカードの利便性) 
2.対自治体向け(行政サービスの電子化の遅れ、バラバラな自治体のシステム) 
3.対中央省庁向け(行政サービスの電子化の遅れ、バラバラな国のシステム) 
と、現在のデジ庁の仕事(私が勝手に分類した)と対応関係にある。だから設立当初に当時の総理大臣が考えていた「仕事」をちゃんとやっている、と捉えることもできるはずだ(その成果の評価は人によって違うにしろ)

 ただ、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」だと、「デジタル社会の目指すビジョン」として、

https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/5ecac8cc-50f1-4168-b989-2bcaabffe870/00589516/20240621_policies_priority_outline_02.pdf

①デジタル化による成長戦略
②医療・教育・防災・こども等の準公共分野のデジタル化
③デジタル化による地域の活性化
 といったことが書いてある。
 このあたり、実は去年(2023年度)より記載が小さくなっている(そして、デジタル田園都市国家構想関連が消えている)。

https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/5ecac8cc-50f1-4168-b989-2bcaabffe870/6594d362/20230913_policies_priority_outline_04.pptx

 ビジョンを掲げる部分が小さくなったと。まあ、キリがないので終わりにするけど、「7.デジタル庁の所管じゃないもの(対事業者とか)」で書いたものと合わせて考えるなら、デジタル庁とは何か(何でないか)というのも明確になって来たということかな、と雑感です。


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