【番外編】Mさんとの対話:資本論をめぐる妄想 第2話
資本論という本を書いているMさんの家にお邪魔して、ちょっとその内容についてお伺いしてみました。
Mさんの本って、めちゃくちゃ読みにくいです。だから、内容を直接ご本人に聞いてしまおうと思ったのでした。そうしたら……。
※本稿(第2話)のやり取りを理解すれば、
資本論 第1部 第1篇 第1章
第2節 商品に表される労働の二重性
の内容を把握することができます(おそらく)。
◇◇
――お久しぶりです。
(Mさん)誰じゃ?
――忘れられても仕方がありませんね。以前先生に「資本論」のことをお伺いに来たものです。
(Mさん)ふうん。で、どこまで話したかな。
――ええと、第二節からですね。
(Mさん)…たぶん覚えておらんじゃろうが、商品には「使用価値」と「価値(交換価値・商品価値)」があるって話をしたはずじゃな。
――はい(…え、そうだっけ?)。
(Mさん)1着の上着と1ヤードのリネン
があるとする。
上着は目的を持って道具を用いて作られるねん。リネンも同様や。
――そうでしょうね。
(Mさん)使用価値とは「どんな労働でできているのか(仕立て)」、「それはなんなのか(着るもん)」と質問される類のもんや。
価値とは、「どれだけ労働がかかっているか」、「それはいくらか」と質問される類のもんや。
――ものには2つの見方があるんですね。
(Mさん)で、労働についてじゃが、上着は「仕立て」、リネンは「機織り」などで作られる。その労働を価値の方から見ると、均質化・結晶化された単位となるんじゃ。 こうした労働の二面性はわし(マルクス)がはじめて指摘たもんや。なんで、おさらいを含めてもっと詳しく踏み込んでみよか。
――そうだったんですね、ぜひお願いします。
(Mさん)さっきと同じ
1着の上着と1ヤードのリネン
についてじゃが、
1着の上着は2ヤードのリネンと交換されると考えてみよう。つまり1着の上着は1ヤードのリネンの倍の価値を持っている。するとどういう等式になる?
――1上着=2ヤードのリネン、でしょうか。
(Mさん)そうや。ところで この価値の差はどこから来よるのか、わかるか?
――わかりません。
(Mさん)随分はっきり言いよるな。まあそれは、リネンの生産には上着の半分の労働しか含まれてないってことやねん。 上着を作るにはリネンの倍の時間がかかるから、倍の価値を持つのや。で、2つのアイテムの価値をはかるものは覚えておるか?
――えーと忘れてしまいましたがなんとなく記憶にあります。
(Mさん)それは「人間の労働」や。
――…あ、やっぱりそうでしたか。
(Mさん)ものを作るのに必要な労働時間が倍になれば価値も倍になるわ。たとえば手の凝った上着は2ヤードではなく4ヤードのリネンと交換されるかもしれん。
しかし価値は上がっても使用価値は変わらん。1着の上着は1人にしか着せられん。
――確かにそうですね。
(Mさん)まとめると、商品には二面性――「使用価値」と「価値」――があり、
労働にも二面性――使用価値を生み出す「具体的な労働」と、均質化された「人間の労働」があるということじゃ。まあ、ここではこれだけ覚えておけば十分じゃ。
――まとめていただいて助かります。先生は回りくどいから。
第2話おわり
参考図書等:「資本論」社会科学研究所監修・資本論翻訳委員会訳(新日本出版社)/ Capital: A Critique of Political Economy V. 1 (Illustrated and Bundled with The Communist Manifesto) (English Edition) Karl Marx, Timeless Books /
https://www.marxists.org/nihon/marx-engels/capital/chapter01/index.htm
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