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娘と荒川遊園に行った、それだけの話【バツイチ男の備忘録】

「今度の週末、娘(小1)を荒川遊園に連れて行きたい」と元嫁にLINEしたらOKが出ました。

不安だった私は、当日道に迷ったりしないように、下見に出かけました。

待ち合わせ場所のJR町屋駅から都電に乗って実際に荒川遊園まで行ってみる――ただそれだけのリハーサルです。都電に乗ってみると、車内は意外と混んでいてびっくりしました。お金は乗るときに払うようです。
途中のコンビニの位置なども把握し、そのままとんぼ返り。

◇荒川遊園

そしてやってきた週末。駅で待っていると、娘は元嫁と一緒にあらわれて手を振りました。元嫁は無表情で、娘をこちらに引き渡すとどこかに消えました。

都電荒川線に乗って、目的地へと向かいます。リハーサル通りです。
「乗るときに払って」と言って娘の手に90円を乗せました。バスと電車が混ざったような乗り物を、彼女は不思議そうに見ています。電車は停車駅から出発するたびに「チン!チン!」と鐘のようなものを鳴らします。

「パパ、遊園地に観覧車ある?」
「あるよー。ちっちゃいけど」
「どれくらい?」
「うーん。これくらい」と、私は両腕を広げて見せました。

6つ目の駅。そろそろ飽き始めるころにようやく電車は「荒川遊園前」に着きました。手をつないで歩いて行くと、観覧車が見えてきました。
「ああ、あれかー。全然小さくないよ」

子供と大人の入場料と乗り物券13枚セットで1400円。安い。

中に入ると、日曜日のせいかそれなりに客はいます。ちょっと古めかしいメリーゴーラウンドやコーヒーカップ、それから青虫型のジェットコースターなんかが狭い敷地に小ぢんまりと配置されています。ここなら幼児が迷子になっても大した騒ぎにはならないでしょう。

「何に乗る?」と訊くと、スカイサイクルという、遊園地の外周を巡る足漕ぎコースターを指さして、「その次に観覧車に乗る」と言います。もしかするとへぼすぎて興味を持たれないかとも思っていましたが、それは杞憂だったようです。

スカイサイクルに一緒に乗ると、「パパはなにもしないで」と娘は言い、
ペダルをすいすい漕いでレールの上を進んでいきます。しかし一生懸命漕いでいたのは最初だけで、だんだんと疲れてくると「パパ漕いで」と言います。

観覧車の入り口には、「中の気温は34℃です。体調の悪い方は乗車を見合わせてください」という貼り紙が。乗ってみると確かに暑かったですが、彼女は平気そうで、スカイツリーを見つけて喜んでいました。

そのあと、娘は「次はあれに乗る」と言って、クジラスライダーに向かって走りました。
クジラ型のバルーン滑り台で、尻尾から入って口から滑って出てきます。何が楽しいのか親にはわかりませんが、一緒に入った子どもたちとともに、汗だくになりながら一生懸命何度も何度も滑っています。


園内に小さな小川が流れているのを発見し、水辺で休むことに。
着替えもタオルも持っていないので、「足だけだよ」という約束で彼女は水に入りました。
結局はスカートの裾をびしょ濡れにし、さらに裸足だと足が痛いと言って靴を履いて水に入りました。

「来週だったらここでアンパンマンのショー見れたんだけど、残念だったね」と言うと、
「アンパンマンなんか興味ないよ」とのこと。
いつのまにか少しずつ大人になっていました。

次に彼女は青虫ジェットコースターに乗りたいと言いました。
OKと軽く受けて乗り場へ行ってみると、とんでもない行列が。この青虫だけでなく、園内全体がいつの間にか大混雑になっていました。しかも炎天下。日差しを遮るものもない中、30分ほど待ってようやく乗りました。

彼女はよく我慢しておとなしく順番を待ったと思います。数か月前なら無理だったでしょう。さすがは小学1年生。

このコースターは、スピードやカーブはそれほどでもないけれど、ガタガタ軋む乗り心地が別の意味で怖かったです。

◇モルモット

乗り物にはいろいろ乗りましたが、結局彼女が一番楽しんだのは、モルモットのエサやりでした。

モルモットには20分ごとに10分間の休憩があり、エサは各回10個限定で売られます(1カップ=100円か乗り物券1枚)。
それを知らずにエサ売場に行ったら、売り切れでサルと鹿のエサしか売っていません。

最初は膝にのせて抱っこだけしていましたが、どうしてもエサをやりたいというので、モルモットの休憩時間になるとともにエサ売場に並びました。10分ほど並んでようやく8番目くらいにぎりぎりエサを手に入れて、再度モルモット広場の中へ。

エサはニンジンとキャベツ。カップに入っています。ニンジンは硬いので、指に力を入れていないとモルモットに丸ごと持っていかれます。
エサをちぎって与えることを教えると早速実践してました。
休憩時間になるとまたエサの列に並んで、3回くらい買いました。

その後は釣りをしました。この遊園地は、意外とバラエティに富んでいます。

釣り堀はもう閉園50分前だったし、母親との待ち合わせ時間も迫っていたから、「今度にしよう」と言っても、娘は「どうしてもやりたい」と言います。

母親にLINEでちょっと遅くなるとメッセージを送り、中に入ると、係の人が「もう1時間ないけれどいいの?」と訊いてきます。
「はいお願いします」
「500円です」
竿2本とエサと針のセットを手渡されました。
と言っても、私も釣りなんかほとんど生まれて初めてで、何をどうやればいいのかさっぱりわかりません。

娘がすぐに糸を竿に絡ませてしまいました。
「すみません、からまっちゃったんですけど」と係の人に言うと、
「あ、交換した方がいいね。10円だけど」
「お願いします」

見かねた係の人は、釣り方のコツを教えてくれました。

「いいかい、浮きをよく見ていて。ほら、ぴくっと動いたでしょう。上げてみて。ほら、エサだけもっていかれちゃった。もう一回エサをつけて投げてみて」
と手取り足取り教えてくれ、「よし、上げて」という合図とともに娘が竿を引っ張ると、見事に鮒が食いついていました。

「写真撮りますか?」
「あ、はい」
私は慌ててスマホを取り出し、満面の笑みで獲物を差し出す彼女を撮りました。

隣で釣っていた同じくらいの歳の男の子がうらやましそうな顔で彼女を見ているのが一緒に写っています。
この男の子はこの後自分で1匹釣り上げ、「パパは1匹も釣れてないのに、僕だけ釣ったんだよ」と自慢しに来ました。

最後に、売店でおもちゃを買いました。自分で選んだフックトイを手に、「これ買う」と私に見せます。もらったお小遣いを使いたいようです。値段を見ると430円とあるので、私は彼女の財布に入っている500円玉を取って、
「これをレジの人に渡して」と教えました。「それからお釣りももらってね」

彼女は恥ずかしそうにレジに商品を差し出し、「袋に入れますか」という店員の言葉を聞かず、お釣りをもらうのを忘れてその場を離れてしまいました。
おもちゃは、警察のバッジと手錠と拳銃がセットになった駄玩具。男の子向けの商品ですが、彼女は嬉しそうに中身を取り出しました。

◇◇
遊園地を後にし、町屋の駅に戻ると元嫁が待っていました。娘は彼女に連れられて改札の向こうに姿を消しました。

私は胸が締め付けられるような気分に耐えながら電車に乗り、今日の思い出を反芻しながら家路につきました。

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