法学学習者が読むべき「入門書」と「薄い本」の話

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0.はじめに

 これから法律を勉強しようという人が読む「入門書」ってありますよね。
 それとは別に、司法試験(予備試験)の受験生は、ぶ厚い基本書(教科書)を読む前に「薄い本」(※)を読むべきだと言われることがあります。
 (※同人誌のことではありません。)

 今回は、この「入門書」と「薄い本」について語りたいと思います。

 そもそも、両者の違いはイメージできますか?
 入門書も大抵は薄いので、これも薄い本といえてしまうかもしれません。

 しかし、私は「入門書」と「薄い本」は別モノだと考えています。
 そして、両者をそれぞれの役割に応じて使いこなすことが、司法試験(予備試験)の合格に繋がると私は考えています。

 以下では、その両者の違いについて説明することにします。
 なお、科目別のオススメ「入門書」・「薄い本」については別の記事で紹介しているので、こちらから御覧ください。

1.「入門書」とは

 文字通り、これから法律の世界に入門しようとする人のための本です。
 私なりに定義すると、入門書とは、
「初学者のために、難解な概念を噛み砕いて、わかりやすく説明する本」
ということになります。
 そりゃそういう定義になるだろと思うかもしれませんが、肝心なのは、難解な概念を噛み砕いてしまっているという点です。
 すなわち、入門書は、初学者のとっつきやすさ・わかりやすさを獲得するために、理論的な正確性・厳密さを犠牲にしてしまっているのです。

 私は、入門書と聞くと、ある東大の先生が仰っていたこと(伝聞な上にうろ覚え)を思い出します。

 「難解な概念をわかりやすく説明することは詐欺である」

 詐欺というのは少し言い過ぎなような気もしますが、この命題は概ね正しいと私は感じます。
 やはり、わかりやすく書かれた文章には、齟齬がつきものなんです。
 それ故、学習が進み理論の正確な理解が重要となってくると、入門書は使い物にならなくなります。

 もっとも、だからといって入門書を読むなとはいっていません。
 やはり、科目のイメージを掴むために入門書は役に立つので、初学者はまず入門書から手をつけるべきでしょう。

2.「薄い本」とは

 薄い本は、入門書と異なり、初学者だけでなく学習経験者も読むべき本であるといえます。

 「薄い本」とは何たるか、私が定義すると、
 「初学者や学習経験者を対象に、必ずしも難しい概念を噛み砕きすぎず、その法律の基本的な部分に絞って書かれている本」
ということになります。

 入門書と大きく異なっているのは、薄い本では必ずしも難しい概念を噛み砕こうとはしないという点です。
 もちろん、わかりやすいように工夫がされている薄い本も多いのですが、それと同時に知識の正確さも確保しようと指向しているのが薄い本です。

 また、薄い本は、初学者が入門書の次に読むために使えるのはもちろん、それだけでなく、既にその分野を学習している人が読んでも役に立つといわれています。
 なぜかというと、薄い本を読むことにより、合格に最低限必要な基本的知識を効率よく習得できるからです。

 司法試験の勉強は範囲が広すぎるために、いくら長く勉強していたとしても、新しいものを覚えるにつれて古い知識が抜けていく感覚はなくなりません。
 そのため、司法試験に必要な知識の中でも、特に重要な基本的知識についての記憶の精度を高めていかなければならず、そのために薄い本が役立つのです。

 確かに、ただ薄い本を読んでいるだけでは知識量が少なく、試験の本番で出題者が望むパーフェクトな答案が書けるようにはなりません。
 しかし、合格への最短距離を考えた場合、細かい知識ばかり増やして基本的な理解を疎かにするよりも、とりあえず基本的な知識だけでも盤石にするほうがコスパはいいのです。
 また、薄い本に書かれていること以上の知識は、短文事例問題集・論証集や過去問を通じて身につければいいのです。わざわざいきなり分厚い本を読む必要はありません。

3.おわりに

 入門書と薄い本の違いについてはわかっていただけたでしょうか?
 これらの本を書店で選ぶ際には、その本が入門書なのか、薄い本なのかについて、注意する必要があります。
 とはいえ、入門書と薄い本の区別は必ずしもはっきりしないので、最終的には自分で目を通して、今の自分に必要な本なのかを見定める必要があります。

 さて、次回以降に投稿するnoteでは、私のオススメする入門書・薄い本について紹介させていただきます。
 こちらも読んでいただければ幸いです。


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