読書感想『水を縫う』
登場人物が手芸、中でも刺繍好きという前情報があったので、最近はしばらく針を持っていないけど、刺繍好きの私にハマるんじゃないかなと楽しみにしていた一冊。
手芸の描写が美しくて、自分の好きなことがこんな素敵な描き方をされるうれしさと共感と。手芸メインの本というわけではないけど、手芸好きには刺さる人多いんじゃないかな。
手芸が趣味だと言うとだいたい「女性らしい」とか「家庭的」なんてイメージを持たれるのが嫌で、そんなふりをしたくてやってるんじゃなくて、好きだからやってるんだぞ!という気持ちがあったり。
ハンドメイド販売をしている人を見て、私も作ったものをお金という成果で残したい!と思い、でも販売を主目的に考えたらコスパタイパを考えて一気に楽しさがなくなってしまったり。
お金にならなくとも何か形に、成果に、実用的なものに、なんて考え出したり、仕事や家事や勉強やらを優先していたらだんどんと刺繍から遠ざかっていった。
自分の中で時期じゃなくて遠ざかるのもあり、やりたくなったタイミングでやるのでいい、成果なんか求めなくて好きの気持ちだけで楽しめればいいじゃんって当たり前のことを今さら思ったら
あの図面をこれに刺したら素敵だよな、糸の色は何色にしようかな、なんて考えてうきうきしていたあの気持ちに戻りたくなってきた。
「女/男らしさ」や「妻/夫、母親/父親だから」みたいなしがらみがあるのは事実だけど、じゃあ誰がしがみつけているのかというとそれは世間だけではなく、無意識に自分自身でストイックに押さえ込み我慢していて、でも案外周りはなんとも思っていない、みたいなこともあるんだろうな。
書き残しておきたい素敵な言葉が多い、読み終わった後にすっきり清らかな気持ちになる家族小説。
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