進研ゼミの付録マンガの思い出
小学生の頃、完結した漫画を読み終えた後は妙に切なく寂しい気分になった。
「ああ、こいつらは遠くに行ってしまって、もう会えないんだな」
そう感じていたんだと思う。さっきまですぐそばで一緒に泣いて笑ってくれていた友達が、別れの挨拶もなしにパッといなくなり、二度と会うことはない。
不思議なことに私の場合、映画やドラマ、小説などでは、この現象はあまり起こらない。漫画だけだ。それがたとえ進研ゼミの付録でついてきた教材マンガであってもそうだった。
進研ゼミのマンガというのは、意外にも私の子供心をグッと掴んでくるものが多かった。普通に読みながら感動していた。ドリルは遅々として進まない私であったが、付録マンガは欠かさず読んでいた。今もあるのだろうか。あれは素晴らしい。
今でもよく覚えているのは、理科か社会の教材で、地球温暖化を防ぐためにエコな生活を心がけよう!といった内容のマンガ。主人公の男の子のもとに、帽子を目深に被った黒マントの男がやってきて、「温暖化なんてどうでも良いじゃん!楽に生きようぜ!」と主人公を誘惑してくるのを、教師役のキャラクター(好きだった気がするのに、どんなキャラだったか今ではもう思い出せない…)が決死の講義で説得するというもの。講義の内容としては、ちょっとの距離は車を使わず歩こうとか、冷蔵庫を開ける時間はなるべく短く済まそうとか、子供でもできる簡単なものが多かった気がする。
そして最終的にエコの大切さを知った黒マントは改心し、主人公や教師とも仲直りする。その瞬間初めて帽子の下から顔が見え、その顔は主人公と同じ顔だった。黒マントは主人公の「ラクをしたい」という怠惰な気持ちが具現化したものであり、主人公が怠惰な気持ちを克服したことで、黒マントの彼は消滅してしまう…というオチであった。
今思えばなんでもない子供向けの教材マンガなのだが、これが幼い私の心を大いに揺さぶった。黒マントが消えたことがとても悲しかったのだ。彼は悪役なのだが、茶目っ気があり、主人公とは悪友っぽい感じでなんだかんだ良いコンビだったのた。(まあ同一人物なわけだから、良いコンビなのは当然なのだが)それが、和解してみんな笑顔でハッピーになった瞬間に消えてしまう。彼の顔が見えた瞬間のコマ、「僕と同じ顔だ!」というセリフ、消滅して黒い帽子だけがハラリと床に落ちるコマを、今でもそらで描けるほどよく覚えている。主人公は寂しそうにスッと帽子を拾い上げてマンガは終わる。
今で言う「エモい」という感情だろうか。妙に余韻があった。
これに感銘を受けた私は、あろうことか自分でマンガを描き始める。ジャンプやりぼんを読んでマンガを描き始める子供はいても、進研ゼミのマンガを読んでマンガを描き始める子供は私だけではないだろうか?まあ実際、これだけがきっかけではないのだが、この体験が私のその後の人格形成に大きく影響したことは間違いない。
このマンガ、覚えている人いるのかな…。
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