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ファンとだけ交流すると人は狂う #トイアンナマガジン

言うまでもないことだが、noteの定期購読マガジンとオンラインサロンのように、ファンとだけ交流できる「閉じた」空間がある。完全に閉じていなくても、YouTube、Twitter、Instagramも自分が見たくない相手を非表示にできる。

そういう場所で、ファンとだけ交流するのは気持ちいい。自分にとって不都合な意見がポップアップしない。SNSで新しい批判者が登場しても、そっとミュートすればいい。ある程度のファンができれば、"信者"が批判者へ勝手に反論してくれる。

そして、クローズドなコミュニティへ「ひきこもる」人が増えている。クリエイターで、精神が強い人は多くない。ファンになら、過激なことを言っても許される。だから本を書いたり、一般媒体に載せたり、テレビに出るのはやめてしまおう……という人が増えているのだ。

ライターとして媒体へ寄稿したりテレビに出たりするのは馬鹿らしいのか?

だから文章を書ける人はライターになる代わりにnoteで定期購読マガジンを書いて暮らし、映像編集や話しが得意な人はYouTuberになってテレビには出ず、裏垢女子はグラドルとしてデビューする代わりにfantiaで写真をアップロードする。

書籍を出版するよりnoteを書く、テレビ出演を狙う代わりにYouTubeをアップする。写真を商業媒体で出すよりfantiaへ投稿する。あれこれ言ってくる編集者もディレクターもいない。プラットフォームを使うほうが楽。そして批判されにくい。だから楽しい。もっと創作したい。クリエイターにとって正のサイクルがはたらく。

だからもう、noteだけでいいんじゃないか。
だからもう、テレビ出演なんてしなくていいんじゃないか。
だからもう、fantiaだけでお金を稼げばいいじゃないか。

そう言いだす人も出てきている。特に、マス向け(みんな向け)の媒体では「あれもだめ、これもだめ」と発表できるものに制約がかかる。過激な発言、毒舌が売りなタイプのクリエイターほど、大手媒体がいやになるだろう。

一般媒体で得る収入がプラットフォームと比べて少なすぎる問題

手取りの問題もある。本を出せば、収入になる印税は10%。1,500円の本を1万部売って「ベストセラー」と呼ばれても、150万円にしかならない。本を出す手間と時間を考えると、とてもじゃないが割に合わない。これがnoteなら、売上の65~75%が手取りになる。

テレビもそうだ。売れっ子でもなければ出演料は3~10万円/回。スケジュールは簡単に他の都合でバラシ(なかったこと)になる。売れっ子になってギャラが上がらない限り、これで生活していくなんて博打でしかない。YouTubeの広告のほうが実入りがいい。というか、それがないと食べていけない。

さらに公へ作品を出せば、自分の考えていたこともない外野から思わぬ批判も飛んでくる。批判どころか、意味のない中傷も大量にくる。私が恋愛ライターとして独立したてのころ、顔出しもしていないのに「ブス」と何回言われたか。こういう中傷もひとつひとつは気にならないけれど、100も200も見ていくと、心がすり減っていく。

それと比べて「この人の作品が見たい」だけでフォローしてくれるファンと過ごす居心地のよさときたら。私だって、ファンだけを見て生きていきたい。でもやると自分が壊れると知っているから、noteの定期購読マガジンだけで食べていくことを、やらない。

ファンだけを見ると、創作物は面白くなくなる

ファンとの「閉じた関係」にひきもると、クリエイターはファンのためだけに発言したくなる。「もっとこう言ってください」という意見が届いたら、そうしたくなる。

でも、ファンの意見だけに答えると創作物は結構な頻度で、面白くなくなる。たとえば名探偵コナンで「新一と蘭がもっとイチャイチャするシーンを出してくれ」と思っている愛読者は多いと思うが、来週からコナンが100%新一と蘭のラブコメになって推理要素がなくなれば、作品としての面白さは激減するだろう。(米花町の人口は増えそう)

ファンの意見は大事だ。少なくとも、自分を中傷してくるくせに、作ったものを購入してくれない人に比べれば1億倍大事だ。だが、ファンだけの声を聞くと、あっという間に書くものは面白くなくなる。

ファンサービスの過激な発言や行動が増える

作品が面白くなくなるだけならいいが、ファンサービスばかり考えていると、意見は先鋭化する。ファンが言ってほしい言葉を、より強く、よりたくさん放ったほうがいいからだ。そして、いつかは超えてはいけない一線を超えてしまう。

たとえば人種差別や男女差別の扇動、あからさまな薬機法違反の商品販売、あるいは悪ふざけのつもりで、犯罪をおかしてしてしまうこと。これらはファンだけを見つめ、ファンの喜ぶリアクションを考えたがゆえに生まれる罪だ。

そして、一線を超えてしまうと、まともなファンは離れていく・まともな媒体から声がかからなくなりファンが減ったときの生命線が絶たれる・まともな勤め人になれなくなる……の3点セットがついてくる。そして残る過激派のファンに推され、発言はますます先鋭化していく。

たとえば、私がファンからリクエストされたことで、「それは一線を超える」からと、絶対にしなかったことがひとつある。

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