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観劇『バイオーム』

初稿6/9
追記6/11

⚫︎はじめに

6/8マチネ
初日観劇してきました

今回こそ思い出になってしまう前に感想を書き上げるぞ!という気合いだけで、親指を動かしている
もう既に思い出になっているのだけど
新鮮なうちにってやつですね
ゆっくり書きたかったけど
早く他の方の感想読みたいし
観劇が続くので立ち止まっていられない

(毎回のように書くからコピペした)
なんとか言語化することで気持ちを楽にしたいな〜くらいの感覚で自分用のメモとして書き始めていますので、読んでくださる方がいても細かいところはご了承ください

【全体的な感想】

(これ以降ネタバレ全開で書きます)

“思考の起点になるタイプの作品だな”
というのが終演後すぐに抱いた感想だった

“人間”の概念とは何かを考える作品をここ最近よく観ているのだけど
毎度アプローチの仕方が異なっていて面白い

植物と人間の二役があることで比較的分かりやすい虚実を味わえるのだけどその中に実ってなんだっけ?と思わされるものがあるので怖いとっても怖い

内容としても上演時間も重い
演劇で3時間はかなり重いのだけど
それだけ得られる起点が多くて
今めちゃくちゃ楽しいって思いながらこれをまとめている

絡まった根っこを解きながら
枝分かれしたメモになっていけばいいな

⚫︎朗読と声

私の中で抱いていた朗読劇とは少し異なっていたけれど
それでも通常の身体表現よりは、言葉や声に頼る部分が大きいと感じた

朗読劇でなければいけない理由ってなんだろうなと考えていた時に
(時間とか予算とかその他諸々の創り手の事情は一旦置いておいて)
観客として感じたこととしては

虚実の間を魅せる【余白】の役割なのかなと思った

声だからこそ想像力を必要とするというか
人に委ねられる部分が大きくなって
映像やセットの分かりやすい視覚的要素とのバランスがめちゃくちゃ良かったなと思う

もし朗読劇ではなく演技だったら
これだけのセットや音響でガチガチに観せたいものが伝わるだろうけど
説明的すぎる舞台になるのでは?と感じたし
あえてそうしないことがこの戯曲に合っているように思った

ただ朗読劇であることで
植物たちによる「ト書」のような台詞があったし
全体的に説明はしっかりしてくれるタイプの戯曲で分かりにくさみたいなものはなかった
内容てんこ盛りなのにぐちゃぐちゃにならないのはこの「ト書」と登場人物たちが比較的考えを言葉にして伝えてくれるところにあったように思う

あとは
“声”ってアナログ的だなと思っていて
ラジオとか会話とか
そこに最新デジタルな音響や映像を混ぜることで面白さもあった

演劇が好きな人もミュージカルが好きな人も
(主義がでかいけど)楽しめるっていう感想


・少し話が逸れるけど(メモとして)

演技だと見立ての舞台だから
「そう見えない」って視覚的要素に捉われる人が出てくることもある気がしていて
声に注目させることで少し解消しているかな〜とも感じた
(シラノの時に自分は視覚的要素が多いミュージカルの方がいいって話をツイートしてる方がいて、探したんだけど見つからなかった。その方バイオームも観てたら意見聞いてみたいな)

舞台上で全く違う人物になれるとか、性別も容姿も関係ないってところが好きなところなのだけど
どうしても視覚的に観る人はいると思うし
そうなった時に演劇(というか演技)って凄く難しいなとも思っていて

ミュージカルって見た目とかセットとか凄く周りのものがガチガチに固めてくれて
更に心情を動かす音楽がついて、それを演技力が魅せてくるわけだから視覚的な要素も多くて
一方の演劇は
それこそ何もないところで一人役者が立てば衣装も道具もいらないけど
観客に委ねられる部分が大きくなってくるし
そこは演技力が.....っていう人もいるかもだしそれはそうなんだけど
観客のそもそもの視点や慣れも大切だなって思う

どっちが良い悪いではないし
どちらも魅力があるから私はどちらも観るけど
(人に容易に勧められないという点でも)こればっかりは難しい問題だなと思ってる


話を戻して、

中心となるのはルイとケイの会話だけれど
これって一人芝居のようなことをしていて
8歳の男の子と女の子の声を使い分けないといけない

一人芝居に限らず、一つの舞台で男女を演じ別けるとなった時に
1番大事なのってなんだろうと考えると
私は“声”だなって思う

分かりやすいところで言うと落語とか講談とか漫才なんかもそうだと思うけど
基本的に衣装は同じ、場所もほとんど動かない
それでも性別だけでなく年齢や性格まで変えた人物を観客に連想させるのは“声”の効果が大きいと思う
誇張した話し方や癖なども“声”として届くものであるし
そこが朗読劇である必要性を大きく感じた気がする

植物たちのト書のような言葉が
押し寄せてくるようで
そこが私はとてもとても好きだった
言葉が沢山重なるの凄く好き

改めて演劇ってなんだろう?みたいなことを考えた

1幕でルイが台本を舞台上に置いて行き
そこにスポットが当たったのゾクっとした
言葉を置いて行ったみたいで
そこから先は(そこまでもほぼ見ていなかったけれど)台本を持たずに芝居をしていて
良いスイッチングだなとも思いました

⚫︎舞台美術・音響・衣装など

どれも至ってシンプルで
スペクタクルだからめっちゃ音とか劇場揺れるかな?とか(最近見たのが劇場振動するやつだったから)考えていたのだけど
そういうことはなくて
ただブリリアだけどちゃんと聴こえるなって思った
至る所にスピーカーがあったので
IMAXみたいな感覚はある

衣装も植物とその上に重ねる形で人間の衣装があって
植物が統一された色に対して人間はカラフル

映像は植物も良いし最後にタワテラの説明の時みたいになるのめちゃくちゃ良かったな〜実際にルイも上がっていたけど、映像も流れていっていて

この辺は他のところと併せて書いていきたい

⚫︎五感で感じる

全身では感じたけど五感で感じるって難しいよな、どういうことを指すんだろうみたいな
頭で考えてしまっていたのだけど
こうやって咀嚼しながら感想を書いていると
非常に味わっている感覚を得られるし

劇場の空気感を嗅いだり
芸術や言葉に触れたり
耳で聴いて目で観て
魅せられて

頭じゃないな〜活字じゃないな〜って思う

味わう、咀嚼、反芻、消化などの言葉を使うたびに
食べることと同じくらい
“言葉や芸術を摂取するために金銭と時間を費やす行為”
に対して生きるために必要なものだよな〜と思える

浴びたと言うより
触れた感じがした

【戯曲感想】

上田久美子先生の作品を観るのが今回初めてで
退団のニュースやそれに対するファンの反応を見ていると凄い方なんだなってのがひしひしと伝わってきていたので、今回戯曲がとにかく楽しみで、観られてよかったです!!

1幕90分の時点で、やべぇパンチラインだらけ.....これ好きなやつ.....ってなっていて
2幕はある程度予想は出来てしまうけど
伝えたいメッセージが沢山散らばっていて60分があまりにも濃密

そもそも3時間がスペクタクルなんですよね
(スペクタクルってオペラ座のマスカレード思い出すな......)
上演前、休憩のある演劇はいつぶりだろうって思ったら冬のライオンだったけど、それも2時間半だし
あーーでも去年、成河さんと麻美さんがご出演されていた森フォレは2回休憩の4時間弱あったからそれよりは短いのか〜なんて考えていた

ただ始まってみると
本当にあっという間で
勿論没入する分、脳も目も耳も身体もバッキバッキになりましたけどね🫠
それだけ良かったんです

いくつか考えたこととか
メモ程度に書き残しておこう
凄すぎたのだけど出来るだけ網羅的に書いておきたい
(後日パンフを読んだら追記しよう)

⚫︎植物と人間

ルイとケイ以外は一人二役で植物と人間を演じていて
その役割に少しリンクする点があるなと思ったのでまとめておきたい

・ふき/クロマツ
→「クロマツは“調和の要”」と言われていたように、ふきさんはあの家の調和というか壊れかけたバランスをなんとか保っている人だったなと思う
長く屋敷に勤めていて怜子さんにも「古株」と言われていたのもそうだけど
古株と古株掛かってるなって思っていた

・学/セコイア
→学さんは婿養子で、後から入ってきた外来種のセコイアと似ている面があるように感じられた
「人間が創り出すもの以外では、1番高くなる木として克人さんが連れてきた」
ここが特に期待をされて連れてこられた学さんに重なったところ

・怜子/クロマツの芽
→性格は違うのだけど
最後まで観るとクロマツの子どもである芽と
ふきさんの子どもである怜子さん
その姿に重なるんだなって....

・克人/クロマツの盆栽
→針金で固定されて捻じ曲がった盆栽と
家に縛られ金と名声に固定され捻じ曲がった克人の構図
自分が創り出す盆栽が
まるで自分の写鏡のようで
こっわ.....ってなっていた

・ともえ/竜胆
→ともえさんはお花の色と衣装が似ていたな〜って印象なのだけど
そういえば竜胆って薬草だから
花療法をしているともえさんに掛かってるのかなとも思ったり

・野口/一重の薔薇
→特に思い付かなかったので何かあったら教えて欲しい

⚫︎好きだった台詞とか言葉

対になってくる表現と韻を踏む言葉と散りばめられるメタファーが非常に多くてワクワクだったので覚書
こじつけもあるのだけど解釈として

・寝起き/根おき
→学さんがふきさんに「息子さんを連れて屋敷で寝起きしてください」って言った時に
その言葉の響きが「根をおく」のようにも感じられた

ふきさんが頑なに断っているのを、その時は家政婦としての線引きかな?とも思ったけど2幕を観ながら
“母性を押し殺すための線引き”
なのではないかなって思った
(母性の話あとでしたい)

・泣く/鳴く
→ケイが泣いているところで「夜更かしの鳥が鳴いている」ってクロマツの台詞
ケイが夜更かしの鳥になっていく感じがあってよかった

・青い匂い/赤い匂い
→植物は折られて“青い匂い”がするって冒頭で言っていた時
人間はきっと“赤い匂い”がするんじゃないかなって思ってて
そのあとで怜子さんの流血があって、やっぱり赤い匂いがしそうって思った

・自然の音/伐採の音
→本当に最初と2幕の後半リフレインとして使われていて痺れたなぁ
自然の音が機械的なチェーンソーの音で薙ぎ倒される
これを冒頭に据えることで一気に世界が見えたの良かった

・静/動
→植物の独特の静けさと
人間の音の大きな動き
この対比が綺麗だった
静かな自然の音を伐採する人間の作った音

そういえばケモノだから
人間は2本足のケモノって言われていたけど
克人さんが3本足なの昔聞いたなぞなぞみたいだなって思ってた
あと、野口さんが枝を折るときも
二本足で挟んでって腕で挟んでいるように見えたけどあれも植物にとっては(前)足だよな〜

・「耳で夜を吸い込んだ」
→この台詞!植物のト書のところだったけど
私これ好きだな〜って思って
吸い込むっていうと鼻な気がするんだけど
耳で吸い込むって
まさにリーディングだ....!!って思って
覚えておきたいワード

・「蝕んでいる」
→ルイを施設に入れる話になった時、学さんが怜子さんに言った台詞がかなり印象的
木の中に虫がいて
たしかにそれはその木を蝕んでいるのかもしれないけれど
自然の流れに反して殺虫剤で殺すことは救うことなのか?ってのにも繋がってくるなと思っていて
そしたら最後に怜子さんが殺虫剤で亡くなった
人も殺せる毒を撒いてた

・私の子どもと いきなさい(逝きなさい/行きなさい/生きなさい)
→クロマツの台詞
クロマツの芽がセコイアから落ちてきたルイによって、ぺちゃんこになってしまった(まだ若かったから)ってところで
クロマツの芽も変化(死ではない)をして
一緒に土にいくのだなってのが良かった

そこでクロマツが言っていた「二本足を星に還すだけで、雲より軽いものは漂う(ニュアンス)」みたいなの
セコイアの生まれたアメリカにも行けるし雨にも朝露にもなれる
〈死〉という人間の概念が
植物によって〈変化〉とされることで
見え方の違いを感じられた

全体を通じて
人間の生活や行動を植物の視点で見るというのが描かれているから
自分自身の生活を振り返って内省するような響きがある

⚫︎ルイとケイ

行動や数学が得意なことから自閉症スペクトラムなのはなんとなくわかるし
ケイがイマジナリーフレンドなんだろうなってのも分かるのだけど
分かった上で観ているから辛いものがある

あんましインタビューとか読んでいないのだけどあらすじかな?ルイは特別なギフトを持っているって書いてあったの
(ギフトって言い方が正しいのかは迷うところだけどそう書いてあったのでここでは)
その時点でなんらかの障害があることは予測されるからわかった上で観られたのは良かったかな....

IFなんだけど
自分の内面でもあるわけだから
あの二人のやりとりを見ているのが興味深いと同時に怖かった

【追】⚫︎ケイについて

もう少しケイという存在について考えてみたいなと思っていて
ルイのIFとしてのケイは、ルイの本当に求めていたものとかなんじゃないかってのは別のところにも書いておるのだけど
そうすると「ケイはおっちゃんとキャンプに行った」っていうのは
ルイ自身が父親とキャンプに行きたかったんじゃないかなって

ルイがしたかったこと本当は分かっていること(授業中喋っているのが変とか)そういう”隠している(見ないふりとか押し殺している)感情”がケイによって代弁されているのかもなと思った

最後にフキさんのところにケイが現れることも別のところで衣装の色とか”誰の心にもいる“って意味なのかな〜みたいなことを書いたと思うんだけど
そうすると
「おぼっちゃまのお友達?」に対する
「おばあちゃんのルイだよ」ってルイの言葉は
フキさんが本当に求めていた形というか
自分の娘である怜子の息子だから本来は孫であるケイのことを思っていたんじゃなかなって
ずっと心に抑え込んでいた感情が
“娘への母性”や”孫への愛情“だったと思うから
それが出てきた瞬間だったのかなって思う

⚫︎母性

この作品における母親はふきさんと怜子さんとともえさん

・ふきさん
→前途しているけど
母性を抑えるために屋敷の中で暮らすことを拒んでいたのかなって点と
ルイは血の繋がった孫だからこそ
施設に入れられるってなった時に今まで拒んできた屋敷で暮らして面倒を見ると言い出すところに母性を感じる

少し話が逸れるけど
ふきさんって“血”にこだわっているなと思っていて、ある意味血が呪いで、それは怜子さんにも受け継がれている
反対に克人さんって“形式”にこだわっているように思った
怜子の代で既に血は途切れていても“代議士の家系“に生まれて、帝王教育を施せば良いと考えているところとか
形式的だなって思った
でも、その中でルイの精神的な面は怜子の遺伝を考えているあたりは気にしていないわけではなさそう

目に見えないものと見えるもの
その差が秘密を抱えた二人の違いとして面白い

・怜子さん
→全体的に演技がとても効いている
「ママと話をして」って言っているところとか、母親であろうとする姿からは
きっとこういう母息子でありたいという像があって
そこからはみ出てしまうことに恐怖を感じているような捉え方ができる

クロマツから落ちた時に
「痛いの?痛いの?」って聞いちゃうところのテンパり方と
「ママと一緒にーー」
って母親であろうとする感じと
上手くバランスの取れていない不安定さを感じた

間違っていないと思いたいから
はみ出ていないと思いたいから
逃げている

そこから派生する“狂気”と言って良いのか
人間の壊れた(かかった)感情が
歪に向けられる先の人たちと
向けてしまう人
どちらも辛いな

そして自分が向けられなかった愛情を上手く向けてあげられない
母親であろうとするけれど
結局は自分がされたことと同じようなことをしてしまう
繰り返してしまう人間らしさだった

学さんとケイスケの精液シェイクさせるところとか
ケイスケ自体を凄く下に見ているし
その復讐劇はまさに繰り返し

・ともえさん
→母親の強さだなって思った
シングルマザーになった経緯とかが語られるわけではないけれど
グレーゾーンな占い師であっても
娘養うためなら厭わないところとか
手を握って眠ることとか
娘への愛をたしかに掴んでいる人

⚫︎愛と逃げる場所について

“あなたの愛は復讐”
“人を愛さない人間”

この2つがとても気になるというか
ずしっとくるワードだったな

あの家族の中に見える愛は
学さんからルイに向けられる微かな父親としての愛と
ふきさんのものくらいだろうか
野口のものは愛ではないように思う

学さんたしかに不倫をしていたけれど
ルイに向き合う姿勢は全て演技だったとは思えないし
施設に入れることも、この家にいたら母親に蝕まれてしまうからって言っていて
考えているんだなって気持ちは残る

ただやっぱり、ともえさんの言葉を聞くと親としてどうなのだろうか?って気持ちも拭えない
私は親になったことがないから子を思う気持ちみたいなものを完全に理解することはできないのだけど
学さんの中に完全に愛がなかったとは思えなかった

逃げ場として
学さんは行動を共にしているであろう秘書とのW不倫
ふきさんは復讐
怜子さんは薬に頼っていたけれど復讐の繰り返し
ルイはIFを作り出していて植物と会話をする

怜子さんのODはかなり凄まじい演技だったな弱りきってフラフラで
そこで縋るのではなく復讐のために利用するのが凄い

2幕でビンタしてるの良かったですよね......(良かったと言って良いのかわからないけど)あのまま連れていかれてたり流れていたら、すっごいフィクションじゃないですか

学さんのW不倫まーーーじで何!?
ちょっと前まで良いパパすぎたのに
いきなりエロイプしないでいただけます??
何が「君の奥深くにも入りたい」だよ
森みたいな庭で下ネタぶっ混むなよ(ごめんなさいめっちゃ笑ってました)

最初秘書の方は未婚なのかな?って思っていたけど
「旦那」ってワードが出てきた瞬間
W不倫......じゃん.......ってなった
しかもSkypeしてるところが年代感じる
音が聞こえないのに姿だけ見て犬みたいにハァハァ言って「君は美しい」とか言っちゃうの.......自分本位な一面が見えててゾッとする

てか演技がうますぎて
こちらには電話の声とか聴こえないのに
何を言っているかとかが想像できるというか
聴こえて来るようで
聴いてはいけない会話聴いてる感半端なかった

⚫︎社会の縮図と人間

一つの家とその庭の出来事があまりにも大きな社会の縮図で
唸るよねこれは
とても人間らしい姿が切り取られていて
苦しさすら感じた
ただなんだろう、現実的だったこととそれぞれの視点からものを観た時の見え方が異なるから
一概にこれが辛くて暗いのかと言われるとそうでもない気がするし
全員が加害者で被害者で
これが社会の縮図で
弱くて脆くて
不条理でも鬱でも地獄でもないような気もして
(地獄がここなら生きるのは地獄なのか?)
だったらなんだって考えて
ただただ“人間の話”を見たんだなってところで落ち着いた

・婿養子である学と克人
→後からこの家にやってきた人間で
どちらも知能や金銭が目的とされていた
世襲と名前と地位にこだわる姿

”華がないから総理大臣にはなれない“のくだり
そのあとで怜子さんの壊れかかっていても感じる気品とか、裕福な家庭で育った故の憂いや傲慢さみたいなものが
ただの狂人で終わらない感じ
どこかそこに惹かれてしまう
これこそ
彼らの言う“華”なのではないかとも思った

・3代目として決まっていたように庭師になる野口
→この呼ばれ方が唯一苗字で「野口」なところが、父と祖父と同化させられている感もあった
特に職業的な立場として
この家の中のカーストは最下位に位置している訳だけど
決められたように生きて行く人たちの縮図

・ケイ
→8歳だからこそルイに色々言えているけど
「ケイの小さいお家も、僕の大きいお家の中にある」(ニュアンス)
って台詞が現実を突きつけてくる
IFなのだけど、これって実際怜子にとってのケイスケの位置付けみたいでしんどいですよね〜
レイとケイスケか.....

・跡取りであるルイ
→父親の
「ルイが怪我をすると、ルイが痛かったりするだけではなく、原因を作った人も責められて苦しい思いをする」
がとても分かりやすい置かれた立場
それでいて役に立たなければ切り捨てられる駒でもある

・シングルマザーのともえ
→彼女が1番まともな気持ちにもなる
狂っているとか正気とか
そのようなことの線引きが難しいのだけれど
愛の形を知っているし
その注ぐ先がある人
だからこそ、望むものがあって願うものもある
凄く感情を「ムカついている」とかそういうのを言ってくれているし
政治的な内容も長台詞だったけど
切実さと向ける刃の先が真反対な怜子さんに対してなのが辛い
「リリのために全部捧げられる」とか「どんなに疲れて帰ってきても手を握って眠る」とか
1幕で「もう小学生だから一緒には寝ない」と言っていた怜子さんの言葉を思い出して
受け取り方に困ってしまう

⇅ここの対比すごい

・怜子さん
→不労所得のお陰で時間があってお金があって地位も名誉もあるけど
居場所に拠り所もない
たしかに金持ちの憂にしか見えない気持ちもある

ただ
私も別のnoteで書いたのだけど
コロナ禍で“本物の暇”を味わった時に
したいこともすべきことも意味があることも分からなくなって
生きてるのに死んでるみたいな
ただぼーーっと天井見てる期間があって
時間があるって怖いなと思った
それまでの自分がいかに動き回って色々な場所で様々なことをして
暇から逃げて
考えたくないことから逃げていたかを知ってしまったから

だからほんの少し
意味のあることが見つからない
その一点に関しては
わかるなって思った

そしてちょうど観劇前に読んでいた短編集のタイトルが『信仰』テーマは「信じる」
「信じる」って難しくて
人間はどこか縋るに近いものになっていくから
怜子さんが花療法に、ママ友であるともえさんに縋ってしまう姿が痛々しく理解できるものであった

⚫︎子どもと大人

年齢設定的には、ルイとケイが8歳ということで子どもだけれど
この年齢的な分け方こそ間違っているというか
そういう単一的な見方をしていることも考えていかないといけないなって思わされた

顕著なのは野口だったかな
「二人で出て行きましょう。私が守ります」なんてフィクションみたいなことを言っていたけれど
とても考えが甘いというか幼稚というか
それに、常に母親に聞いてから行動しようとするところや
植物に“でくのぼう”と言われていたけれど
全体的にとろい感じとか
自分の腕(二本足)で枝を折ってしまうほど筋力もあるし身体は成長しているけど
中身の幼さが見え隠れしていた

⚫︎復讐と秘密

これも比較的全て答え合わせをしてくれていて
取り調べのスポットが絶妙
白い光に照らされて答え合わせされていく

野口の最後まで少し逃げるような弱腰さとか
言葉を搾り出し観客を引き込み続けるふきさんとか
役者さんの力量を感じる

⚫︎最期

土地を寄付することで名声回復を図ろうとする学さんと
死んでいった家族
青々として静かだった森に赤々とした重機が音を立てている

ふきさんの元に現れたケイ
あれは誰の心にでもケイが現れるってことなのかな〜って思っていて
色の変わったパジャマもふきさんの赤に寄せられていて
「おぼっちゃまのお友達?」って聞かれた時に
「ばあばのケイだよ」って答えるところとかもそう

最後に地球が出てきたのが
なんか......なんか......予算足りなかった合成みたいだったって話をしていた
悪かったというより
他と急に変わった??って気がして

ふきさんが空に旅立ったのを表現したいのなら魂までそっちにいくの?って感じもしたんだよな
ルイの時に「二本足を星に還すだけで、雲より軽いものは漂う(ニュアンス)」みたいなことを言っていたからな〜って

まだいまいち分からないところだな

【キャスト感想】

並びを観ただけで豪華ではあったけれど
実際に凄すぎたので少しですが書き残しておきたいと思います
とても当て書きのような脚本で
当て書き好きとしてはにこにこしながら観ちゃいますよね....

元々あんましキャストとして舞台を観ていなくて役として観ているので、後々前に観たものだったり、知っている範囲でその役者さんとリンクさせて感想は書いてます

ルイ/ケイ【中村勘九郎】
舞台で拝見するのは初めてでした
8歳の子どもの役というだけでも難しそうだけど、男女の演じ分けは声も素晴らしく
精神の揺れが指先の細かい動きや大きな叫びにもなっていて
「頭につけられた輪っかが締まるよう(ニュアンス)」みたいな最後の方のシーンで、もがき苦しむ姿とかが印象的

本当に小さいなケモノに見えていた

怜子/クロマツの芽【花總まりさん】
花總さんの不安定で少しずつ壊れていく演技とても好き(語弊)
照明を浴びて、キラキラする瞳は、時に子ども心や意志の現れも感じさせるけど
あの儚さや眩さが
怜子では不安定な母親の心情と愛を受けなかった女性
クロマツの芽では好奇心や幼さ
を表現していたのがとても素敵な花總さんの役作りと活かし方で
なんて素敵なんだろう......

でもその素敵さの中に怖さがあって
あんなにも狂った姿見たことがない気がする
母でありたい姿勢が残されているからこそ
怖いと感じてしまう

花總さんの演技たまらなく大好きだ

野口/一重の薔薇【古川雄大さん】
シラノの時より腕が凄いことになっていたのですが、あのお姿で黄泉の帝王になられるのでしょうか?前回の衣装入る?

野口の頼りないとろくさい感じは演技でも出ていたのだけど、あの絶妙に似合わないベストも良かったと思う
チャック柄.....刷り込み効果なんですかねどうして絶妙にダサく見えるんですかね

古川さんは植物の身体表現が細やかだし滑らかで見惚れる
ケモノを目で追っていたり、風に揺れていたり、顎の辺りにあった手がゆっくり肩の方に移る動作一つとっても美しかった

あと歌の高い音がめっちゃいい

克人/クロマツの盆栽【野添義弘さん】
魔界転生の配信で観た気がするけど舞台で観るのは初めて
克人さんの歪さと古臭さみたいなものが伝わってくる演技と怜子さんに対する態度とか、あんなにも威厳があるのに、過去を知るとまた深い感じも“貫禄”の中に漂っていて素敵だった

そこからの盆栽のギャップ
ルイを助けたいと思う気持ちや叫び声
体制的にも大変そうだったけれど、声の違いや動きが、音をなくすルイとの対比としてとても良かったな

ともえ/竜胆【安藤聖さん】
19年のB&M主演されていたものと柿の女体シェイクスピアの円盤で拝見したことがあって
どちらもこの女優さん凄!!!ってなっていたから舞台で観られてとてもとても嬉しかった!!!
柿のを最近観ていたからあの黒が似合う中性的な方って印象だったので全然違う役所だけど
発声とかテンポ感とか
あの長い台詞とか......

ある意味あの台詞は現代に生きる人の代弁でもあるしメッセージでもあるし
聞き取りやすいけど感情の揺れが分かるの凄く大切だなって思った

学/セコイア【成河さん】
去年しっかり全部通ってたのに今年全然観れてなくて(危うくバイオームも観れないところだったのだけど)なんとか拝見できて嬉しい嬉しい

成河さんの演技凄く好きだし観たいもの見られるのだけど
だんだん怖くなってくる
怖いんだけどかっこいいし声が好きすぎるし
なんか感情どこに置けば良いのか分からなくなる
とにかく好きです

あの父親としての眼差しから最悪までの落差とスピード感
緩急えぐいし温度差もすごい
言葉を尽くしてもこの凄さは語れないけれど
周知の事実だから語る必要もないですね

セコイアが最後に折れていくところの身体表現も好きだったな
気に登るところも良かったけれど
まあとにかく全部好き
スーツの色も好きだったもん

ふき/クロマツ【麻実れいさん】
麻実さん一年振りくらいに拝見したのだけどやっぱり存在感がすんばらしいな.....特に成河さんとの演技観ていると朗読の概念消え去る
今二人芝居観てるんだっけな?くらいに思う

成河さんと二人で植物やっている時の
人間の台詞に重なるようにしてト書を発するのが良すぎた

抱えているものや静かな動き
それはふきさんとしてもクロマツとしても
中核になっている存在としてとても安心感があった
それでいて2幕後半で、怜子さんのお腹を殴るシーンや取り調べで語る場面はまた静に戻っていく感じがして引き込まれた

【支柱】

【追】⚫︎パンフレットを読んで

まずお写真が良いですよね.....

相関図を見て
「怜子さんと野口3歳差.....マジか......」
となっていた
確かに幼い頃は一緒に遊んだりしていたなら
それくらいの年齢差が良いのかもしれないけどフキさん大変だったなって思って

そして上田さん×一色さんの対談!
読み応えがあるし素敵だな〜って思うことも多いし、やっぱり作り手の意図の片鱗に触れられるインタビュー大好き!

フキさん以外は当て書きではないってことが分かったけれど
本当に実力がある役者さんだと、まるで自分のために書かれたかのような役作りをされていて、全員が当て書きなのではないかと思ってしまう
ピッタリすぎる......
こういう役所観てみたいな〜ってのも叶えてくれていて嬉しかったし
オタクの脳内観てるんか?ってところもあるし

【追】⚫︎配信を買った話

「観劇によって植えられた種が時間が経つごとに成長していくような感覚」って言葉と共に投稿したこのnoteなんですけど
その時は芽吹いたな〜くらいだったのが1日経ってだいぶ伸びてきて、思考に絡まり始めている
意識していないとバイオームのことを考えてはあーだったんじゃないかこーだったんじゃないかってどんどん伸びて絡まってく感じがするので
ここらで支柱を立てておこうと思います

明日のバイオーム配信チケット買ってしまったのでね!!
戯曲の日本語が大好きすぎたので、その表現がどのように英訳されるのか気になって、字幕版で購入しました〜楽しみ
植物に対しての表現がオノマトペが効果的に使われていることで、後半のルイがぐにゃぐにゃになって“植物に近づいていく”みたいな感じにも受け取れて、とても良かったし
“夜”に対しての表現がとても多くて
“耳で夜を吸い込む”
“夜に飛び込む“
も素敵だったな......
それがあることで朝日を見たルイのシーンが白に溶けてるみたいで素敵だったし

本当日本語って大好き!!って思ったので
訳すの難しいだろうけど、だからこそ気になる!

この感想は配信視聴後にまた追記しようと思う

【追】⚫︎感想の感想

これだけ感想を書けばもう浮かばないんじゃないかなって思うことは一度もないので
勿論書き終えてからもずーーーっと感想は増えていくんだけど
今回は自分の中から溢れてくるというより、他の方の感想に触れて、より深まっていくというか、発想の起点を得るというか

感想を書き終えてからTwitterで時間があればすぐ“バイオーム”って検索するようになっていて
こういう検索って大体自分もnote書いた時か小劇場とか観に行って周りであまり観劇している人がいない時にしていたから
ツイート数の多さに改めて驚く
(箱が大きいからそれは当たり前なんだけど)

しかも何がいいって
パンフでも書かれていたけど、バイオームには歌舞伎、宝塚、ミュージカル、演劇、映像......って本当に幅広い芸術ジャンルの人が関わっているから
感想の幅も広くてすてき

他の人の感想読むのってすごくすごく好きだし
今回は特に母親である人の感想を読めるのがいい
私が母親になるかどうかは分からないことだけど、15年後や40年後、反対に5年前とかの私でも観てみたいって思う
5年後の私に5年前の私を伝えるためにこうやって言葉にしているところあるな〜

感想を読んでいても自分で書いていても思うのだけど
“気持ち悪い”とか”怖い“といった感情が出てくることがすごいなって思っていて
ゾンビ映画とかじゃなくて
”人間“を観てそういう感情が抱けるって
大分心の深いところまで突き刺さって、目を向けさせてくれているんだよなとも思う

⚫︎終わりに


虚構と現実
植物と人間
人間とケモノ
正常と狂気
映像美と戯曲
子どもと大人

対になるようなものがとても多くて
観ている間の楽しさもあったけれど
終わってから考えることもとても多い

私としては、こうやって感想を書いていく中でも考えが深まっていくなと思うし
面白い作品に出会えたな〜って嬉しい

毎度のように自分の感想を書き終えるまで他の方のを読まないようにしているからやっと読める〜ってわくわく
(これ今まであまり理解されなかったのだけど最近同じって方がいて1LDK見つけた気分だった)

⚫︎備忘録


(渓谷感想から引用)
この前の面接で、どういう舞台が好きなのかって聞かれて
ジャンルの話もしたけど会話の流れ的に
”帰り道に少し振り返って、劇場と自分が地続きであることを感じさせられる舞台
劇場に行くこと(舞台を観ること)ではなく帰りに受け取ったものをどう使っていくか考えるのが楽しい舞台が好き“って答えた

私の中で好きな舞台の定義に
凄く当てはまってたな

終わった後に感想を話していて
短編集の最後の話みたいだったって解釈に至ったのだけど
この話は文字にするのが難しいな

スペースしますしょ〜って話をしているので
そういうところで話せたらいいなと思います

今回は1万字弱
大体4時間が溶けたけど
この作業はデトックスだから

もう少しまとめたいこととか
上手く言えないところがあるので
話したいし
多分他の方の瞳を借りてまた別の世界を観たい

よしパブサしよ〜!!

バイオームの感想
DMとかマシュマロとかでも送ってくださる方がいれば是非に〜

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