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ホロライブは果たして感動の"資産"を食い潰してしまったのか #とうふレポート

念願の「comet」デジタルリリース

2021年6月25日、ホロライブ所属の星街すいせいが配信内にて重大告知として新曲の「Bluerose」と共に「comet」がデジタルシングルとしてリリースされることを発表した。

「comet」と言えば、星街すいせいがホロライブはもとより、イノナカミュージックに加入する前の個人勢として活動していたデビュー7ヵ月目の2018年11月22日に投稿されている。多くのファンが長くリリースを待ち望んでいた楽曲であり、Twitterトレンド入りも果たした。

3か月連続のリリースとの事で次回のリリースが7月8日に予定されている。
活動1周年を記念した未リリース楽曲である「天球、彗星は夜を跨いで」のリリースも期待したいところだが…。

さて、今回お話ししたいのは純粋なリリース情報ではなく、少し別の話。

今回の「comet」のリリースによる盛り上がりは今ホロライブを追いかけている人、過去にホロライブを追いかけていた人、もしくはホロライブは詳しく知らないけど「cometー星街すいせい」という繋がりは知っているという人たち、広くの面々から作り出されたものだった。つまりは『過去からの文脈』の果実が熟しきった状態で収穫した結果である。

楽曲という観点で直近のリリースを見てみると、ここ最近のホロライブの動向として新たな芽吹きではなく今までに育ててきたものの収穫としての楽曲リリースがより大きな賑わいを見せていることが分かる。

以下、2曲ご紹介する。

◆Plasmagic Seasons!

「Plasmagic Seasons!」はデビュー3周年を迎えるホロライブ1期生《白上フブキ、夏色まつり、夜空メル、アキ・ローゼンタール、赤井はあと》による、2021年5月28日に開催された"hololive 1st Generation 3rd Anniversary LIVE「from 1st」"に向けて作られたオリジナル楽曲。

作詞作曲には「あすいろClear Sky」を手掛けた森本練氏を迎え、かの白上フブキをして『作ってくださった方がホロライブのことを大好きでいてくれることが伝わってきますよね。』と言わせしめる現時点での1期生の集大成を彩る楽曲に仕上がっている。

森本練氏は星街すいせい歌唱の「GHOST」のElectric Bass担当としても参加

◆キセキ結び

4期生だけでなくホロライブプロジェクト全体を大きく牽引した桐生ココの卒業をきっかけに作成された「キセキ結び」。こちらは期日がタイトなことから運営を巻き込んでの制作に取り掛かれない状況の中、同じく4期生メンバーの天音かなたが奔走して出来上がったという楽曲。その都合から作詞作曲は天音かなたが担当している。

4期生先行組のデビューは2019年12月25日、約1年半の活動を通して天音かなたが歌詞に様々な思いを託し、4期生メンバーになぞらえたまっすぐなメッセージソングとして仕上がっている。

「キセキ結び」制作裏話についてはこちらの放送枠より。
制作に関わった関係各所に桐生ココの卒業を知られないようオーダーをしていたことの難しさについて語っている。他にも作詞に関すること、4期生にまつわるエピソードについても言及されている。


※個人や〇期生と言ったくくりでのオリジナル楽曲については"hololive IDOL PROJECT"が主体でない場合(運営が主催に関わらない場合)は、基本的に個々で働きかけなくては出来上がるものではないことを過去の夏色まつりの配信の発言から伺い知ることが出来る。

直近の目立ったホロライブのリリースを取り上げた。3曲ともそれぞれ、今まで積み上げてきたものの結晶としての楽曲リリースが多いことがわかると思う。1期生のデビューから約3年、新型コロナウィルスの流行により我々が在宅での生活や窮屈な娯楽を余儀なくされてからだと約1年半。急ピッチで大量に蓄えた文脈を放出し、収穫する時期を現在ホロライブプロダクションは迎えているのだと思う。

その中でふと浮かび上がる疑問が『ホロライブは未来に向けてどのような種蒔きをしていくのか?』ということだ。今後のコンテンツを間断無く動かしていくためには収穫と同時に未来の収穫のための種蒔きが必要である。もちろん今我々に見えてないところで様々な準備を行っている段階ではあると思う、が。

大きく”軸”になるであろうものが今我々の目に見えている範囲ではまだ具体的な展開が見えない「ホロライブ・オルタナティブ」だけではないだろうか?ホロライブは我々を色々な形で感動させてくれる「資産」をすり減らす一方になっていないだろうか?

本当にささやかな恐れである。

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もちろんホロライブのコンテンツ展開は「ホロライブ・オルタナティブ」だけが全てではない。

コラボレーショングッズの販売、「ゲームショップ〇△(まるヤマ)駅前」をはじめとする各種動画企画、ゲーム・アニメ主題歌のタイアップ参戦、タレント主体のラジオ番組等…。

比較的細かな展開が増え、全てを追いかけていくにも無理がある物量になってきている。その事実は大変喜ばしい。

ただ、”hololive IDOL PROJECT”のような分かり良い『軸』『看板』を新たに用意し、その旗印のもとコンテンツを展開していく時期にも既に入っていると思う。これは未来への投資のためである。

「ホロライブ・オルタナティブ」は様々なメディアミックスを可能とする『余白』を感じさせるコンテンツの構え方ではあるが、大きく広げた風呂敷を今のカバー株式会社がきちんと舵取り出来るバイタリティとパワーを残しているかというと些か疑問が残る。また、出演するタレント自体も現状の配信ペースを維持したまま、今後増え続ける展開を捌くには無理が生じている状態であることは否定できないだろう。マネジメント面でのアプローチも必要かと思う。

初期の初期から追いかけている諸兄においては認知しているか分からないが、我々の多くが当たり前のように受け取っている"hololive IDOL PROJECT"も急な舵取りによるものだったことは、1期生ライブ「from 1st」に際してのインタビュー記事から読み取ることが出来る。そもそもホロライブのアイドルプロジェクト指向は内部的には急な話だったのではないだろうか。

『今後に向けて明確で具体的なビジョンを持って進められているのか?』

この問いに対する答えは誰も知り得ないだろう。ただ、選択はより精度のある『確からしさ』を求められている。

──3年前、皆さんがデビューした当時のホロライブは、「アイドル」という方向性ではなかったと思います。デビュー当時の皆さんは、どのような活動をして、どのような夢を実現していきたいと考えていたのでしょうか?

フブキ (…) ぶっちゃけ、アイドルとしてやっていこうという気持ちは全然なかったです(笑)。デビューしたての当時の状況で、歌って踊るとかはできるわけないよねっていう感じで。歌って踊ることに関しては、自信も全然なかったので。 (…)
フブキ 推しのグッズの横に並んでやろうっていうのが夢でした(笑)。だから、ホロライブ全体として「アイドル活動をする」という流れになったときは、何をお手本にしたらいいのかとか全然わからなくて。本当に運営さんと二人三脚でやってきた感じです。
まつり (…) デビュー当時に思っていたことは、VTuberのみんなと仲良くしたいってことぐらい。自分がアイドルになるなんて1ミリも思ってなかったし、途中で「ホロライブアイドルプロジェクト」という方向性が出てきたときも、「なんかアイドルみたいだね」って他人事のように思ったぐらいでした(笑)。


このアイドルプロジェクト指向への舵取りについて、具体的な時期は示されていないが2019年8月にデビューした3期生宝鐘マリンもオーディション時、具体的にアイドルプロジェクトとしてのホロライブの方向性は示されていないまま加入したことを自枠内で語っている。

3期生の先行デビュー組が2019年7月中旬、後発組が8月中旬にデビュー。(トリを務めた宝鐘マリンが8月11日に初配信)
その後、同年8月15日に #ホロライブサマー としてShinySmilyStoryの
特別MVが公式チャンネルから投稿されている。

今後の展開に際して現状ホロライブのタレントに関する逆風は4期生桐生ココの卒業、1期生赤井はあとの無期限休止、2期生紫咲シオンの休止ー…

hololive IDOL PROJECTへの舵取りが現在軌道に乗っている中、カバー株式会社には企業Vtuber運営としてのリーダーシップを否応なく求められる段階に来ていることは明らかである。ただ、今見えている範囲内のことだけで判断するのではなく、今後発表されていく展開にも注目して判断していく必要がある。

今回はホロライブの今後の展開を楽曲という観点から考えてみた。この観点だけを元にして測ったり、考えるのは明らかに不完全ではあると思う。ただ、楽曲という観点はVtuberという世界のひとつの大きな物差しであると個人的に思っているし、新たな方針を明確に示し、進んで行く導になるパワーがあるのも楽曲であると信じている。見方や解釈、考察の視点としては支持したい。

最後に、今まで述べてきた内容に関して『もしこういう状況だったとしたら嫌だな』という筆者の個人的な杞憂を発端とするものである。筆者としては基本的なスタンスとして、今後のホロライブプロダクションの展開や動向について、カバー株式会社の掲げる『果敢に、しかける』に基づいた展開へ期待せざるを得ない。


これが俺の純粋な気持ちや!

以上!

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