見出し画像

できない文系院生の悲惨な末路(3)

ニワトリに「つつき」という行為がある.同じケージにいる多数のニワトリが一羽のニワトリの尻を突くという行為である.ある種,ニワトリ界の「いじめ」である.大学院の世界においても同じケージ(研究室)内で「つつき」が行われる.文系大学院に進学する院生は(能力は別として)アカデミックポストに就くことを目標にする.(ただし,アカデミックポストに就くのは一里塚でその後,研究を極めるのが本来の目標である)理系の大学院であれば,いわゆるアカデミックポストに就職が叶わずとも民間への就職口があるが,文系はおいそれとそのポストが見つからない.

大学のアカデミックポストはいわゆる,広く希望者を募る公募と呼ばれるシステムと知り合いの先生から「どなたか適任者はいませんかね」と問合せ一本釣りで採用する縁故というかコネのような私募というシステムがある.公募はjrec-in ( https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekTop)と呼ばれるウェブ上に各分野の教員公募情報が掲載される.まぁ,世間でいう「とらばーゆ」のようなページである.しかし,ここに掲載される情報は当然閲覧している人も多く,1つのポストに応募者が100人を超えることも珍しくない.

また忘れてはならないのは,この公募情報に載ったアカデミックポストはまだ就職していない大学院の間で争うのではなく,既にアカデミックポストについている准教授や教授とも競争しなければならないのである.したがって,この公募情報をもとにアカデミックポストを得るのは至難の業なのである.では,まだ研究業績もない,もしくは少ない大学院生は,指導教員の下に時々降ってくる「私募」に期待することになる.

私募と言っても,特に最近はそんなに降ってくるわけもない.僕の研究室は他の研究室に比べると比較的就職状況がよかったがそれでも2,3年に1つであればよかったかもしれない(僕は運よくその1つにありつけた).そこで同じ研究室内では院生間で「オレは〇〇よりできますよ」という指導教員へのアピールがゼミの研究会の中でなされることになる.つまり,報告者に鋭い質問をしてそれをアピって指導教員の覚えを良くしようというのである.

では,そのアピール大会の餌食となるのが一番弱いニワトリ,すなわちMくんとなるのである.僕は決して能力の高い院生ではなかったが,その僕から見てもMくんのレベルの低さは際立っていた.Mくんが微分ができないために,ゼミが延々と延長されたり,英語が読めないので論文ゼミにならないなど,とても大学院生のものとは思えなかたことを記憶している.そんなMくんを他の院生がほっておく訳もなく,「〇〇大学では○○は俺に聞けと言われていた」なんていうみっともないプライドはあっという間に崩壊し,Mくんは突かれるニワトリに転落してしまった.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?