「ネオンを眺めながら」

輝く新宿のネオン街、暗い路地裏では男と女が愛を語らっている。
浩一は、一人で暗い街を歩いている。彼の心の中には何かがおかしいという感覚がつのり、社会と自分の間に生じたほころびがどんどん大きくなっていくのを感じた。この不調和は、彼の仕事、友人、恋人との関係にまで広がり始めていた。
ある日、美咲は、彼の苦悩を感じ取りそっと身体を寄せる。
「少し疲れただけよ」
と彼女は囁くが、浩一にとってそれはただの疲れではなかった。
彼はこの世界で何を求め、何を守るべきなのか、自分の存在意義を問いかけ始める。夜の街、ネオンライト、クラクション、これらは彼にとって騒音に過ぎない。真実は見えず、愛の言葉さえも口に出来ない。
反戦、反核の叫びがある一方で、小さな声はこの大都市で聞こえない。浩一は、俺が正しいのではないかという疑念を抱きながら、この平和の中で怯える自分がたまらなく辛かった。
彼は美咲を抱きしめ、ただ愛しているという想いだけを伝える。
それだけが、彼にとっての救いなのかもしれない。
彼らの愛は、この荒涼とした世界で、唯一純粋なものなのだから

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