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【小説】サイリウム

秋葉原の雑多な通りを歩きながら、甲高い声とサイリウムの輝きに目を細めた。僕はそう、地元密着型のアイドル、亜美ちゃんの熱烈なファンだ。仕事の疲れを吹き飛ばすパワーが彼女にはある。電気街の一角で行われる小さなライブで、彼女の歌と笑顔に元気をもらう。
しかし、その日の夜、Twitterで流れてきたのは彼女の結婚報告だった。僕の心は落ちるような重さを感じた。確かに、彼女が幸せになるのは素晴らしいこと。だけど、その瞬間、僕の心の中で何かが壊れた。
それから約3ヶ月が過ぎた。この間、仕事でもプライベートでも何かとつまづくことが多かった。プロジェクトでのミス、クライアントからの苦情、日々が泥沼を歩いているような気分だった。
僕はサイリウムを手に、次の週末に亜美ちゃんのライブへ行く決断をした。結婚報告以後、初めての彼女の公演だ。秋葉原へと足を運び、ライブハウスに入ると、いつものように熱気が溢れていた。でも、僕の心はどこか寂しく、彼女の笑顔を見上げながらも、何か違和感を覚えていた。
ステージ上の亜美ちゃんは変わらず、その美声とキラキラとしたオーラで観客を魅了していた。僕も手にしたサイリウムでタイミング良く彼女を応援したが、それまで感じていたような高揚感が足りない。君を応援して、君のライブを見るだけで、日々の仕事が頑張れると自分に言い聞かせたが、心のどこかで疑問がつのった。
ライブが終わって、握手を一人一人にしてくれるファンサービスの時間があった。亜美ちゃんが僕に「今後も応援よろしくね」と言った瞬間、僕はようやく自分自身に正直になった。彼女が結婚しても、その才能や美しさ、魅力は変わらない。
僕はその夜、Twitterで亜美ちゃんに向けた、一つのツイートをした。「結婚報告、おめでとう。これからも君を応援するよ。そして、ありがとう。」
それからのライブは、僕にとって新しいスタートとなった。亜美ちゃんの歌声によって、明日への活力を感じていた。

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