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伝統と革新が交わる         若き蔵元が織りなす未来への挑戦⑤          【とうほくGenki × 宮城県酒造組合】

 海外での日本酒人気が高まる中、国内では若者の日本酒離れが課題となっています。その中で、日本酒の魅力を若い世代にアピールしようと、各酒蔵による伝統にとらわれない新しい「日本酒」へのアプローチが注目を集めています。
 若き蔵元たちの日本酒に懸ける新たな挑戦について、宮城県酒造組合理事を務める佐藤曜平(萩野酒造株式会社 代表取締役)さんへお聞きしました。

さまざまな造りや取り組みに挑戦
海外での評価も力に

 1986年、それまで品質よりも低価格が重要視されていた日本酒市場において、宮城県酒造組合は全国に先駆けて県産米による高品質な純米酒造りを推進する「みやぎ・純米酒の県宣言」を行いました。現在では日本酒全体に占める高級酒の割合が全国平均で約35%に対し、宮城県は90%超と突出して高く、自他共に認める高級酒の生産県となりました。
 こうした先人達の取組みによって、現在、宮城県内では20代、30代の若手が酒造りを継ぐために地元へ戻ってくる動きが活発です。そんな若手たちは、新たな価値を見出そうと、手間と時間がかかる伝統の生酛(きもと)造りに現代の技術をプラスして復活させたり、幅広い世代に親しんでもらおうと、酒粕を使ったお菓子の売店を蔵の敷地内にオープンさせたり、蔵同士がコラボレーションしたお酒を限定販売するなど、新しい取組みが広がっています。
 また、最近では、日本国内だけでなく海外のコンテストで上位に入賞する蔵も増え、宮城県全体のレベルが更に上がってきたと実感しています。

2023年新たに開催した「宮城の夏酒を楽しむ会 inダテリウム」

新しい時代の若手たちが
宮城県産酒の魅力を発信

 宮城県酒造組合では、若手経営者らによる「宮城醸和会」が中心となって、宮城県産酒の魅力発信に力を入れています。近年はコロナ禍の影響で各種イベントの開催を控えるなど、活動を制限していましたが、本年は新たな会場や開催方法での試飲イベントを開催するなど、積極的に取り組んでおります。
 今後は、これまで日本酒との接点が無かった同世代の若者や女性にも宮城県産酒に興味を持っていただけるよう、各蔵の個性を活かしながら、若手のアイデアが詰まった取組みを実現したいと思います。
 これからも世代交代を図りながら、新しい方策の具現化に向けて積極的に意見を交わし、消費の拡大に結び付けて行きたいと考えています。そして、先人達が一致団結し築いてきた基盤を大切に、東日本大震災という未曽有の災害をも乗り越えて努力し続けてきた高品質路線を継承し、伝統と革新が共存する酒造りを続けてまいります。

試飲イベントでは、多くの参加者が宮城県産酒を味わいました

宮城県酒造組合 理事
萩野酒造株式会社 代表取締役
佐藤曜平(さとう・ようへい)氏

 1979年生まれ。東京農業大学醸造学科卒。1840年創業「萩野酒造」8代目蔵元。宮城県酒造組合の需要開発委員長として、宮城県産酒の需要拡大に向けた各種事業を展開している。また、若手蔵元で組織する宮城醸和会の会長も務めており、蔵元間の意思疎通に配意するとともに、自ら率先してSNSを活用した情報発信を行うなど、若い世代の日本酒ファン拡大に積極的に取り組んでいる。

宮城県酒造組合
仙台市青葉区上杉2丁目3-1  TEL/022-222-3131
URL/http://miyagisake.jp/

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