見出し画像

英語で宇宙 vol.3 「銀河の赤ちゃん👶」

みなさん、こんばんは。
Tohoku Space Communityの としかげ です。

ようやく梅雨が明けましたね!
少しずつ夏らしい日々が増えてきて嬉しい限りです。
そして、個人的に大学のテスト・レポートが一息ついてほっとしています笑

今回の英語で宇宙は、テスト期間中に話題となっていた最新の「銀河の赤ちゃん」に関する研究をまとめた論文についてです!

それがこちら!

Extremely Metal-Poor Representatives Explored by the Subaru Survey (EMPRESS). I. A Successful Machine Learning Selection of Metal-Poor Galaxies and the Discovery of a Galaxy with M*<10^6 M_sun and 0.016 Z_sun

「すばる望遠鏡による調査で発見された極端に金属が欠乏した銀河の代表例①:質量が太陽質量の10⁶倍以下で金属量が太陽の0.016倍の金属欠乏銀河を機械学習による選別することに成功した」

という論文です!

では早速読んでいきましょう!


We have initiated a new survey for local extremely metal-poor galaxies (EMPGs) with Subaru/Hyper Suprime-Cam (HSC) large-area (~500 deg²) optical images reaching a 5 sigma limit of ~26 magnitude, about 100 times deeper than the Sloan Digital Sky Survey (SDSS). 

すばる望遠鏡のハイパーシュプリームカム(HSC)により撮影された、スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)の100倍深い、限界等級26等の高視野画像を用いた、極端に金属量の少ない銀河(EMPGs)を見つけるための新しい探査に乗り出しました。

Hyper Suprime-Cam(HSC)とは

国立天文台が国内外の諸機関と共同で開発している、すばる望遠鏡用のデジタルカメラ。人の背丈よりも大きく、重さはなんと3トン![図1]

一度に広い天域を撮影することでき、新しい天体や現象を探査する研究(まさに今回のような研究)で力を発揮するそうです!

画像1

図1:HSCの構造図


スローンデジタルスカイサーベイとは

アメリカ、ニューメキシコ州のアパッチポイント天文台[図2]に取り付けられた自前の望遠鏡を使って銀河を探査する日・米・欧の合同銀河探査プロジェクトのことです。

画像2

図2:SDSSに用いられる望遠鏡

a 5 sigma limit とは

限界等級を決める際に、ある面積におけるスカイバックグラウンド(なにもないところ)のゆらぎ=σ(シグマ)の5倍程度を観測できる限界とします。ということみたいです!

日本語での資料でも:限界等級○○ @5σ
などのように示されているものがありました。

EMPGとは

Extremely Metal Poor Galaxyの略で、直訳すると「きわめて金属に乏しい銀河」となります。ここで、注意しなければならないのは、天文学における「金属」とは一般にヘリウムよりも重い元素のことを指します。なのでここでは、酸素も炭素も金属です。


To select Z/Z_sun<0.1 EMPGs from ~40 million sources detected in the Subaru images, we first develop a machine-learning (ML) classifier based on a deep neural network algorithm with a training data set consisting of optical photometry of galaxy, star, and QSO models.

金属量が太陽の十分の一より小さい金属欠乏銀河を、4000万ものすばるデータの中から検出するため、光学測量による銀河・星・準恒星天体を訓練データとしてディープニューラルネットワークアルゴリズムに基づいた機械学習型分類器を開発しました。

その仕組みの概念図は以下の通りです[図3]。

画像3

QSOとは

Quasi-Stellar Objectの略で日本語に直すと準恒星状天体もしくは、クェーサーと呼ばれることが多い天体です。非常に離れた距離にある明るい天体のためにその構造がみえず、恒星のように見えることからこのように名付けられました。


 We test our ML classifier with SDSS objects having spectroscopic metallicity measurements, and confirm that our ML classifier accomplishes 86%-completeness and 46%-purity EMPG classifications with photometric data. Applying our ML classifier to the photometric data of the Subaru sources as well as faint SDSS objects with no spectroscopic data, we obtain 27 and 86 EMPG candidates from the Subaru and SDSS photometric data, respectively. 

この機械学習分類器をスペクトル観測による金属量データを有するSDSS天体でテストしたところ、この分類器が86%の精度を達成し、光学測光データと46%の純度で金属欠乏銀河の分類を達成しました。

 機械学習分類器をすばる望遠鏡の光学データとスペクトルデータのないSDSS天体に応用すると、それぞれ27と86の金属欠乏銀河の候補を得ることに成功しました。

We conduct optical follow-up spectroscopy for 10 out of our EMPG candidates with Magellan/LDSS-3+MagE, Keck/DEIMOS, and Subaru/FOCAS, and find that the 10 EMPG candidates are star-forming galaxies at z=0.007-0.03 with large H_beta equivalent widths of 104-265 A, stellar masses of log(M*/M_sun)=5.0-7.1, and high specific star-formation rates of ~300 Gyr^{-1}, which are similar to those of early galaxies at z>6 reported recently. 

私たちは、光学によるスペクトル観測によるフォローアップを金属欠乏銀河候補のうちから10個の天体において行い、これらは金属量が0.007から0.03の星形成銀河であることが分かりました。

0.03のHβ等価幅は104-265 [Å]と大きく、恒星質量はlog(M*/M_sun)=5.0-7.1ほど、星形成速度は10億年あたり300 と最近報告されているz>6の初期の銀河とよく似ていることが明らかになりました。

等価幅とはスペクトル線強度を連続光強度との比で表す量のこと。

吸収線の場合、連続スペクトルの下、輝線の場合は連続スペクトルより上のスペクトル線輪郭の面積を連続光強度で割った値で、線輪郭と同じ面積を持つ連続光の幅を示します。

画像4

図4:天文学辞典・等価幅

We spectroscopically confirm that 3 out of 10 candidates are truly EMPGs with Z/Z_sun<0.1, one of which is HSC J1631+4426, the most metal-poor galaxy with Z/Z_sun=0.016 reported ever.

10の候補のうち、3つがEMPGsであることを確認しました。そのうちの一つである、HSC J1631+4426はこれまでに記録された中でもっとも金属量の少ない銀河でした。


金属量が少ないことと銀河の年齢の関係は?

 ここまで読むと、この論文の要約部分では金属量についての記述はあっても銀河の年齢については全然書かれていない…

金属量と銀河の年齢にはどんな関係があるのでしょうか?

ここについては次回のnoteでまとめたいと思います!



最後までご覧いただきありがとうございました!

参考文献

限界等級について

金属量について



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?