研究費を得て自由な連携研究を始めよう。アンサンブルグラントについて。

材料科学研究所(AIMR)の甲斐です。私は4年ほど前に学内を歩いていて偶然,若手アンサンブルプロジェクトのポスターを見つけてワークショップに参加したのをきっかけに,若手アンサンブルの活動に惚れ込んでしまいました。アンサンブルをきっかけとした偶然の出会い,研究分野を越えた交流によって受ける刺激,学内外のオープンマインドな研究者どうしの緩い繋がり,といったものは私にとって大変貴重です(最近は気軽に対面で集まれる機会が減っているのが歯がゆいところですが…)。このアンサンブルの面白い取り組みや人の輪を広げることに少しでも貢献できればと思い,昨年度からワーキンググループのリーダーを務めています。

若手アンサンブルプロジェクトは主に,アンサンブルワークショップとアンサンブルグラントの二本立てで活動しています。磯貝さんによる先日のアンサンブルワークショップの記事に続いて,今回のnoteでは,アンサンブルグラントについて簡単にご紹介したいと思います。

アンサンブルグラントは,東北大学の附置研究所・センター連携体を中心とした部局間連携に支給される研究費で,新規課題(第1ステージ)と継続課題(第2ステージ)の2種類があります。

新規課題は,新しい部局間連携や若手研究者の間のボトムアップの繋がりによる萌芽的研究を生み出すことを目的としてします。東北大学の附置研・センター連携体の複数部局から研究者が集まることを必要条件として毎年6月頃に公募して,研究費を支給しています。昨年度からは審査方式を一新し,募集要項に適合しているかスクリーニングを行った後,「ランダム選択」する方式をとっています。

「研究費をランダム選択とはいったい何?」と思われるかもしれませんが,これは実は,最近注目を集め始めている採択方式です。

Science funders gamble on grant lotteries
https://www.nature.com/articles/d41586-019-03572-7

自分が取り組みたい研究を行うための研究費申請に追われている,という(若手)研究者は多いです。研究費は必要だけれど研究費を獲得すること自体に時間とエネルギーを取られて研究時間が減ってしまう,という笑うに笑えない状況もときどき耳にします。また,アンサンブルグラントをきっかけに部局間連携や萌芽的研究が生まれることが期待されていますが,そのような萌芽的,学際的,融合的な研究の初期段階において,研究の将来的な価値をバイアス無しに正しく評価して選択することは難しいと考えられます。そのような問題を解決して「申請の労力の削減」「バイアスの無い評価・選択」を実現することを意図して,「ランダム選択」を取り入れたというわけです。

ですので,グラントを申請する方へワーキンググループからお伝えしたいメッセージは「グラントの申請書に労力を掛けて作り込む必要はないです。その分の労力を研究自体の議論・遂行に使っていただければ。」ということです。

アンサンブルグラントのもう一つの種類である継続課題は,新規課題で研究を進めてきたチームが,翌年度以降,更に研究を発展させるためのものです。学内での公開審査会を開催して,それぞれの申請課題について議論を深めたうえで最終的に参加者の投票によって課題を採択する方式を,昨年度から取り入れています。 詳細は以下のリンクをご覧ください。このnoteでも,またの機会にご紹介したいと思います。

(参考)2021年度若手研究者アンサンブルグラント「継続課題」の公募情報
http://web.tohoku.ac.jp/aric/news/grant/20201211.html

(甲斐洋行・材料科学高等研究所(AIMR))

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