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アンサンブルグラントの恩恵

加齢医学研究所(IDAC)の林です。私は2016年度に研究所若手アンサンブルグラント第1ステージに採択いただいたことが、アンサンブルプロジェクトと関わりを持った端緒となります。当時私は駆け出しの助教で成果も乏しく、中々研究費が獲得できない状況が続いていましたが、この研究費を元に研究を発展させることで、多数の査読論文の発表、科研費を含む研究助成の採択、および受賞を受けることができました。現在はその縁もあって、加齢研のワーキンググループ委員を務めております。今回は、その経験を元に、実際にグラントに応募して良かった転を解説してみます。異分野融合研究は敷居が高いと躊躇されている方々の一つの参考になればと思います。

〜ポイントのまとめ〜
アンサンブルグラントは、異分野融合よりも、若手研究者のチャレンジを応援する助成という側面が強いです。新任教員やこれから自身の研究を盛り上げていきたいと考える若手の先生方全員に強く申請を薦めます。

ポイントの詳細を以下に挙げます。

1. 実績・内容の重要度は審査に影響しません(第1ステージ、2021年現在)
私の例のように、このグラントは、特にまだ実績の乏しい駆け出しの研究者にとって、ステップアップの足がかりとして非常に大きなチャンスとなります。実績評価がないだけでなく、近年は第一ステージでは完全抽選方式での審査を採用しており、最低限のルールに則って立案された申請研究全てに等しくチャンスがあります。実績評価、目的の重要性や計画の妥当性で申請を落選するという経験は誰もがたくさんしていると思いますが、その心配をすることなく、予備的知見のない若手研究者が大胆な研究計画を提案するのに最適な環境の構築を試みています。

2. 異分野融合度も申請の段階では評価されません(第1ステージ、2021年現在)
異分野融合研究を現時点でやっていないし計画もしていない、ということが申請を躊躇する理由になっている方も多いと思います。ですが、1. で記載したようにグラントの段階では申請される研究の内容は評価の対象になりません。もちろんワーキンググループとしては、出来るだけ離れた分野同士の融合による革新的な研究提案を期待したいところですが、現時点でそれは難しいという方も、申請の際には平等に審査されます。そのため、出したいけど異分野融合のよいアイデアがないという方は、(申請基準を満たした上で)できるだけ近い分野の方と組んでみてはいかがでしょうか。あまり大きな声では言えませんが、がんばれば自分のチームだけで出来るような実験・作業を共同研究としてやってもらうというような内容でも審査対象となります。そのような身近なところから共同研究を始めるきっかけとして本グラントをご利用いただければと思います。

3. 申請採択、受賞など実績として評価されうる項目を増やしています
アンサンブルグラントへの採択は、申請採用実績として他の申請などの際に記載可能であり、私も職歴欄や過去の申請記載欄などで紙面が埋まらないときなどよく記載していました。また、採択者が研究成果を発表するアンサンブルシンポジウムでは、優秀発表賞、優秀ポスター賞などを設けて表彰するなど、実績となるような項目を増やしています。グラント助成による研究の発展を通して論文の執筆や他の研究助成の申請につながるほかに、これらのような実績を積み上げることも若手研究者の後押しとなると考えています。

これらのように、アンサンブルグラントは、ワーキンググループが頭を捻って、少しでも若手研究者の利益となるように、という制度設計を常に模索しています。私個人としても、次にどのような研究がトレンドとなるか、革新的な研究となるかは誰にも分からないため、「選択と集中」よりも幅広く萌芽的研究に支援する制度が重要と考え、アンサンブルプロジェクトのこのような方針を支持しています。異分野融合ももちろん大事ですが、なるべく敷居は高くせず、多くの挑戦的な研究をサポートできるような制度として今後も発展させていければと個人的には思います。多くの方々からの意見、質問等お待ちしております。

(林陽平・加齢医学研究所(IDAC))

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