共同研究の大変さとプロジェクトの取り組み

金属材料研究所(IMR)の谷村です。前任の先生から担当を引き継ぎ気づけば3年目、グループの中ではそこそこの中堅(?)となってしまいました。

私も元々はワークショップにて一般参加者として参加した身であり、これまでに様々なイベントを企画・準備することで、プロジェクトの運営を行う側としての楽しさ・難しさを経験させていただきました。およそ半年前、今年度中にはオンサイトのイベントを開催できるといいなあということをワーキンググループ会議で話していたことを記憶していますが、最近では新型コロナウイルスが再び蔓延しつつあり、アンサンブルプロジェクトのみならず、各種学会などのオンサイト開催が再び遠のいたようで歯痒い気持ちでいる昨今です。

さて、本来このような場では、「共同研究の素晴らしさ」というポジティブな観点からのアンサンブルプロジェクトの魅力をお伝えするべきだと思いますが、これについてはワーキンググループの他の先生方がこれまで発信してきた、あるいは今後発信していってもらえると思いますので、ここではあえて「共同研究を開始することの大変さ」というネガティブな点について述べ、アンサンブルブルプロジェクトの役割についての所見を述べさせていただければと思います。ダイバーシティの重要性が唱えられている昨今、グループ内に一人くらいそういうへそ曲がりが存在してもいいのではないでしょうか?
(以下で述べるのは谷村個人の見解であり、ワーキンググループ全体の総意ではないことをあらかじめお断りさせていただきます)

まず、異分野共同研究を開始することは率直に言ってかなり勇気のいることである、と言えると思います。共同研究の開始には「自分と異なるバックグラウンドを持つ研究者と出会い」、「新しい研究を計画・実行する」という2つのハードルを乗り越える必要があります。実験・データ解析・学生指導などの日々の業務に追われる身において、業績にはつながらないかもしれない萌芽的な仕事を新たに開始するということはなかなか大変で、それよりは現在行っている研究に集中し、着実な成果を出したほうが良いのではないかと考えてしまう、ということについては若手研究者の方であれば共感をいただけるのではないでしょうか。
私の所属する金属材料研究所には先端エネルギー材料理工共創研究センター(通称E-IMR)が設置されており、そこでも異なる研究室間の若手研究者の連携を促進するため、エネルギー関連の共同研究を行う若手研究者グループに予算を提供する、というプロジェクトが行われています。予算額は小規模の科研費予算に匹敵する程度には大きい額で、若手研究者にとってはかなりお得な制度となっているのですが、毎年1,2グループしか申請せず金研所属の若手研究者間の連携がなかなかうまく行っていない(?)ことを示す例となっています。

一方で、「世代の近い若手研究者との交流を図りたい」「他人の研究を理解して見聞を深め、更に可能であれば自分の専門を活かしたい」という共同研究に対するポジティブな考えも、多くの若手研究者に共通しているものだと思います。
上記のような点を踏まえ、若手アンサンブルプロジェクトでは、ハードルの1つ目である「若手研究者の出会いの場を提供」し、「より申請者にかかる負担の少ない形での研究支援」を行うことにあると考え、様々な取り組みを行ってきています。例として前者については毎年ワークショップという形でイベントを開催し、懇親会を通じて参加者の交流を図っています。オンサイトでの開催が困難な状況下、前回のワークショップはwebアプリ上で、バーチャルポスターセッション、オンライン懇親会という新しい形で行われました。後者については昨年度から、申請書の簡素化を行い、採択にあたってはランダム抽選を行うなど、新しい試みが行われています。

この記事を読まれた東北大学の若手研究者の皆様におかれましては、ぜひ一度ワークショップ会場に足を運んでいただき、異分野交流を楽しんでいただきたいと思います。そこで共同研究の話が持ち上がれば、研究計画などは自然に進むものだと思いますし、分野が違いすぎて共同研究の話につながらなくとも、学内に知り合いの研究者が一人でも増えるということは、なかなか楽しい・心強いものかと思います。

今後も引き続き「共同研究の大変さ」を乗り越え、より多くの方が、より気軽に参加できる若手研究者間の交流の場を提供し、気楽な異分野共同研究を実現するように、ワーキンググループ内で新しい取り組みを行っていきたいと思います。

(谷村洋・金属材料研究所(IMR))

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