散歩4/29

しゃりしゃりという冷たい砂の心地が足元にある

指先の間に無理やり入ってくる様に惚れ惚れしてしまいそうになる夜の中、薄暗闇の遠くの月と、路傍の街頭のきめ細やかな細い光、ぼんやりと鈍く広がる雲によって拡散されたそれらの光の統合。プリズムと化した波間には時々夢のような虹色を孕んでいる気がする。そういう檸檬のような光に照らし出された木陰には、まるで悪気のない人間だとしか思えないいくつかの生命があり、その時間においては生命であるか生命でないかはさしたる問題では無いのだが、そういう存在を感じることに酷く恐れる時間帯である。今自分のことを知覚している全存在を取り除いてやろうという意識が無限大に湧いてくる、手になにか所持している訳では無いがどうにかして殺してやる。俺の力を持って殺してやる。見たものはただではおかない。ゆっくりと歩みを進めていく。ただの木の棒であったりやはり木陰であったと気付いた時に、とぼとぼとうしろを振り向いて帰る。そういうことを2度3度繰り返した。

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