遠野物語76

長者屋敷はむかし長者が住んでいたあととなって、そのあたりにも糠森(ぬかもり)という山があった。長者の家の糠を捨てたのが森になったのだという。この山中には五つ葉のうつ木があって、その下に黄金を埋めてあったといって、今もそのうつぎの有処を探し歩く者がたまにいる。この長者は昔の金山師であったのか、このあたりには鉄を吹いた滓がある。恩徳(おんどく)の金山(きんざん)もここから山続きで遠くはない。

○諸国のヌカ塚スクモ塚には多くはこれと同じ長者伝説をともなっている。また黄金埋蔵の伝説も諸国に限りなくある。

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