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温かな“秘境”

先日、役場に町民さんからお電話でとある相談があり、その方のご自宅に訪問しました。
電話で完結する内容だったのですが、高齢で耳も遠いことから、電話では伝わりづらいと考え直接お邪魔することにしました。
この方は当麻鐘乳洞がある「開明」という地区に住んでいます。山間部にあるのですが、この方の自宅はさらに奥地、家もほとんどない場所にあります。当麻町にはこういう場所が数か所あり、私は勝手に「当麻の秘境」と呼んでいます。

笑顔で迎えてくれた80歳を超える老夫婦。用事も完結し、お暇しようとしたのですが、お茶を出していただき「ゆっくりしていって」とのことだったので少し雑談をさせていただきました。
お友達のお話、昔話などを聞かせていただく中で熊の話になったので、「やはりこの辺りは熊が出没するんですか?」とお聞きしたところ、「しょっちゅうだよ」とのこと。草刈りしていたり農作業していたりするところに出くわすことが多いが、作業中で忙しいのでいちいち気にしていないとのことでした。

“お隣さん”といっても隣家とは100メートル以上離れているような場所。人が住んでいる集落という感じは薄く、“自然の中に人が住まわせてもらっている”という雰囲気を強く感じました。
市街地まで車で20分ほど。車を所有していないこの老夫婦にとっては買い物に出ることもままならないことでしょう。携帯電話もほぼつながらない…。
でも「こんな“ど田舎”も良いな」と感じてしまいました。
その場所に住んでいないから、どれほど不便か体感しているわけではない、“理想と現実は違う”ことはわかっているのですが、美しい風景と動物の声、温かいお茶を飲みながら、優しい老夫婦のお話を聞かせていただくと、“こういう不便なところも良いものだ”と感じてしまうのです。