パイロット、カスタム823についての小さな発見、いくぶん複雑な心境
パイロット、カスタム823の中字と細字で、書き心地にそれほど差はないと思います。
ある程度の重さのあるボディを、人差指と親指の付け根の間に載せて書くことで、逆にペン先は、あたかも浮いてしまったかのように軽やかに走るーーそうした書き心地をもたらす構造が変わらないからです。
先月から使い始めた細字については、最初こそ、開く前の蕾のような青い硬さがあるなと感じましたが、それもすぐに解けました。
私はこのカスタム823の書き心地がとても気に入っていますが、ペン先が軽やかに走るということは、ストップなどのコントロールが効きにくいことと裏腹であると云い得ます。
手持ちのペンとしか比較できないのは少し窮屈ですが、例えばセーラーのプロフィットスタンダードのように、もっと小さく軽いペンのほうが、ペン先をコントロールしやすく、バランスのとれた文字をきちんと書くことができるように思います。
私は万年筆では走り書きをし、書いた文字を人に見せる予定はなく、自分が分かればそれでよいので、きちんとした文字は書きにくいのだとしてもこのカスタム823が非常に気に入っています。
が、万年筆の用途によっては、このペンがあまり気に入らない、あるいは必要ないという場合があるかもしれません。それも当然のことでしょう。
一方、もっと小さく軽いペンは、どうしても自分の指の力でペン先を運ぶ度合が高くなるので、気儘な走り書きには、このカスタム823がより適していると私には思われます。
と、ここまで述べてきましたが、ふと思いついて、キャップをポストせずに書いてみました……書けますね、丁寧な文字が。
前言を翻すことになってしまい心苦しいのですが、実はペン先のコントロールが効きにくいなどということはまったくありませんでした。私はいつもキャップをポストしていたので気づきませんでした。
何だ、弱点がなかったのか、と、うれしいような、それでいてちょっとさびしいような、いくぶん複雑な心境です。
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