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パイロット・カスタム823の書き心地についての補足

前回、カスタム823について私は、
(1)まるでリニアモーターカーのように浮いて走っているような書き心地であると云い、さらには、
(2)思考を妨げないばかりか、思考を導いてくれるとさえ感じられると書きました。それらを踏まえ、
(3)書き心地は、私の持っているペンのなかで一番だとも述べました。

さて、(1)のリニアモーターカーのような書き心地については、何度書いても、今も、変わらずにそのように感じます。インクが尽きかけているときに、あれ、少し走りがおかしいなと思ったり、ペンの持ち方が知らぬ間にずれてしまっていてあまり心地よくないなと気づき、持ち直したりということはありますが、そうしたことを除けば、この浮いて走っているようだという印象は、私のなかで揺るがないものとなっています。

次に(2)の、ペンが思考を導いてくれるという点については、冷静になってみると、さすがにそれは眉唾かなとも思います。記憶ほどあやふやなものもありません。同時に、いや、たしかにそのような瞬間はあったはずだと信じる気持ちもあります。いずれにせよ、本当に極限まで興が乗ったときに不意に生じるかもしれない現象であり、狙って実現できるものではないといえそうです。

Pilot Custom 823 Medium nib / Pilot Blue / Tsubame Note W30S

最後に(3)の、このペンの書き心地が一番好きであるということは、私の万年筆の使い方が前提となっています。というのも、私は万年筆では、マス目も罫線もさほど気にせず、気儘に走り書きをすることが殆どです。字を丁寧に書こうという気もさらさらなく、自分で後で読めれば十分だと考えています。

もし、マス目や罫線を尊重し、きちんと書こうとするなら、このMという字幅では太過ぎ、Fのほうがよいでしょう。そもそもこの比較的大ぶりなペンではなく、一回り小さいペンのほうが取り回しがしやすいだろうと思います。丁寧に字を書くという観点では、ペン先が浮いたように走るこのペンよりは、もっと紙の感触がわかるペンのほうが、止まりたいところで機敏に止まり、線の方向を変えたいところで変えるのに都合がよいでしょう。

実際私も、まず思い浮かぶところでは#3776センチュリーの、紙の感触がはっきりとつかめる書き味が大好物なのですが、気儘に走り書きをするという用途には、カスタム823に分があると考えています。

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