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ラミー・アルスターとスポーツカー

ラミー・アルスターには質朴の魅力があるといえば、失礼にあたってしまうでしょうか。

Lamy AL-star Fine nib / Pilot Blue Black / Tsubame Notebook W30S

あるシンガーソングライターがギター一本で弾き語りをしているのをユーチューブで見かけ、何ていい曲だと嘆賞したことがあります。

後で、その曲が入ったスタジオアルバムも聞いてみました。なるほどよい出来だと思いますが、はやりなのであろうアレンジや、ここぞとばかりの効果音など、どうも鼻についてしまう点も多々あります。コーラスはゴージャス……でも私が聞きたいのはメインなのですね。

きらびやかな音を聞き分けられない私の耳が責めを負うべきであることを否定するものではありません。ただ、その曲についても、やはりいい曲だとは思うものの、弾き語りを聞いたときの感嘆はもう起こりませんでした。

話を戻せば、アルスターにはその弾き語りにもなぞらえ得る質朴の魅力があると思います。


いやそれでは、――私という消費者に生じた感情の説明にはなり得るものの――、肝心の商品、アルスターについては何も語られていません。蒔き直しましょう。

Lamy AL-star Medium nib / Pilot Blue Black / Tsubame Notebook W30S

車に乗らない私がこうした喩えを用いるのは気が引けますが、アルスターで書く楽しさは、(ラグジュアリーカーではなく)スポーツカーを運転する楽しさに似ています。

私はアルスターのアルミボディに、自重でもって手を導いてほしいと求めたりはしません。そうではなくて、私の指で、ペンをキビキビと操作したいのです。ボディの剛性が、その要求に遅延なく応えてくれるでしょう。ボディの軽さが、指示に機敏に追従してくれるでしょう。

キャップをポストするとなかなかに長いペンです。私の中指や人差指の先がかわるがわる「てこの原理」の支点、力点となることで、リアは惰性も纏いながらダイナミックに踊り、ひいてはペン先は俊敏性を獲得しはじめます。その軽快な動きこそがアルスターの魅力であると私には思われます。

MD Notebook

FineとMediumでは、字幅とジューシーさにおいてたしかに見て取れる違いがあります。が、私がしている気儘な走り書きには、ほとんど同じように使うことができます。ならばどちらか一本で十分ではないかとなりそうですが……大きな違い以上に微細な違いがおもしろいのがペンであるという面もあります。

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