いいよなお前らは

 本当は人の苦しみとか辛さを比べたりなんかしちゃいけない。それは分かっている。でもたまにはさ、辛かったことを言わせておくれよ。


 良いよなお前らは、僕が家に縛り付けられている間自由に遊べて。親の機嫌を窺って、友達と遊びに行くことすら十分に出来なかった。
 毎日怒られるのが怖かった。本の中が逃避先だった。親の機嫌一つで世界が変わるんだ。

 だから今だって周りが怖い。隣の知らない人も僕のこと殴ってくるんじゃないかって思う。お前も僕のこと怠けてるとか馬鹿だとか思ってるんだろ?知ってる、だってそんな世界でしか生きてこなかったんだから。

 いいよなお前らは、当たり前みたいに帰る家があって、頼れる親がいて、愛してくれる親がいて。守ってくれる親がいて。

 僕だって衣食住は与えられていた。けれどそれだけ、お前の家のペットの方が愛されてるよ。そんなのも知らないくせに、なんだよ、なんだよ。

 どうしてそれを全部隠して、大丈夫って笑ってなきゃいけないんだろう。みんなに優しくしなきゃいけないんだろう。親の話をされてもヘラヘラ笑ってなきゃいけないんだろう。

 どうしてお前らは優しい親の元で暮らせて、僕はそうじゃなかったんだろう。僕は本当に、畜生と同じ扱いだったと思う。殴られなかっただけマシ?殴ってくれたらよかったのに。そしたら堂々と被害者面出来たのに。むかつく、むかつく。あの時死んでおけばよかった。あの時殺しておけば良かった。包丁もあったのに。マンションの屋上に出る方法だって知ってたのに。どうして、どうして。


 本当は本当は、凄く怒ってる。父親も母親も絶対に許さない。僕の人生めちゃくちゃにしやがって。ふざけんなよ。

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