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ベーグル禁止令を受けたベーグル狂いの話

十年ほどパンを食べてこなかったのに、今年に入り突如ベーグル狂いとなり、ベーグル療法などと謳いだしたようないんちき臭いやつがいるそうで。

ことあるごとにベーグルを持ち出しては人生などの抽象的な対象にこじつけ、意味のないことをあたかも意味しかないかのように語るやつがいるそうで。

たぶん、正体はこいつ。

万年緑色の服をまとい、一度も着替えていないであろうこいつこそ、真犯人であろう。

誰が見ても、過度にベーグルにのめり込んでいたこいつだが、最近いろいろあったそうでな。
その、いろいろっていうのも、またベーグルの話で恐れ入るんだがな。

まあ、勿体ぶってもあれだな、単刀直入にいうと、こいつにとって唯一の救いの存在になりつつあったベーグルを食べる行為を、一旦やめなきゃいけなくなったんだそうなんだ。

週5で派遣社員をやる傍らで、近所のベーグル屋さんでアルバイトを始めたくらいの本気度だったこいつの悲しみといったら、それはもう結構なもので、こいつと特段親しくなくても、多少は理解できるだろう。

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こいつこいつと打っていて、この距離感だとあいつのほうがしっくりくる気がしてきたので、これ以降はあいつとさせていただこう。

あいつはなにかあるとすぐnoteで記録するようなマメなところもあるもんだから、とりあえず今回の事の顛末を書いておく必要があるみたいだ。

今更ながらあいつっていうのは、言わずもがなこの私のことなのだが、今回のベーグル禁止令は丁度昨日、発令された。現場は、私がかねてより信頼して通っている整体。発令者は整体のA先生だ。

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ベーグルにハマったのは2月3月くらいだったと思う。そこからほぼ毎朝のように、冷凍ストックしていたベーグルをレンジやトースターを駆使して美味しく幸せに食べて暮らしていた。

心はご機嫌だった。朝、起きるのがとても楽しみだった。今日はなんのベーグルを食べよう、と考えることが、間違いなく生きるモチベーションに繋がっていた。

なんとなくだが、その頃から体の調子を崩し始めた。口にはヘルペスが大量生成され、それとは別に口の端は切れ、肌は湿疹、にきび、胃腸の膨張感、めまい、頭痛。

そんな不調を整えるため、昨日、急遽整体に駆け込んだ。私の体を精査するやいなや、A先生は、
「腸が腫れてますけど、なにか食生活とか変わりました?」
と、白髪をなびかせながら衝撃波を発してきた。もちろん心当たりはある、心当たりしかない、ベーグルだ。

ベーグルを食べることで心はご機嫌だったので、長らく不調の原因には気付けなかった。

というのは大嘘で、本当は薄々気づいていた。この不調は多分、ベーグルにハマりだしてからなのである。

一方で、心の方は、ベーグルを食べていないときと比べて至極健やかでいられていたことは間違いない。
もうすこしだけ、気づかないふりをしていたかったのかもしれない。

もともとパンを食べてこなかった私は消化力に自信もなかったので、ベーグルにはまってからも一日半個しか食べていない。
原因はベーグルじゃない、原因はまた別にある、という考えも棄てきれない。

期待と不安の入り組んだ、大変混沌とした感情で、おそるおそるベーグルにハマり始めたことを白状すると、
「ああ、それですね」
と間髪入れず、ベーグルが原因である可能性を指摘された。

先生は、人間の腸のサイクルは約2週間であるという前置きをしたうえで、

「2週間ベーグルを禁止して、その後調子が良くなったらベーグルは今後控えたほうが良いですね」

と、矢継ぎ早にベーグル禁止令を出してきたのだった。しかし、妙に腑に落ちている自分もいて、もしかしたら誰かに止めてもらいたかったのかもしれない。

唯一、止められる立場にあった夫も、残念ながら共にベーグルの沼にはまっていたので、私を止めることは不可能だった。

整体の先生には何でもバレる。隠していた訳では無いが、2週間前に階段から落ちて捻挫した足首も、
「靭帯伸びてますけど病院行ってます?」などと鋭く差してくる、もちろん病院など行っていない。
※捻挫は、接骨院か整骨院に行って、ちゃんと治療しないとあとあと響くそうです

ちなみにこの後、いち、にい、さん、という謎の合図のあと、私の足首は先生によって勢いよく伸ばされ、それに伴い「こきっ」とショボいけど確かな音が鳴り、足首の何かが正常位に戻って痛みが急激に引いた、という衝撃の出来事が起こった、この先生には絶対に嘘をつけないことを改めて痛感させられた。

嘘をついても無駄だよ、と先生は技術で物語っている。あまりに圧倒的すぎる。彼は、人間の構造を知り尽くしすぎている。

さようなら、ベーグル

さようなら。
ばいばい。
元気でね。
またね。
ありがとう。
ぐっどばい
テコナさん、ありがとう
ちゃんと夫と分け合うために半分に切って
名前も書いたよ。偉いよね。
さようなら。
自分で作ったベーグル。
見た目はしょぼいけど、結構いい線いってたよ。

早速、今日一日ベーグルを絶った。それだけでも、少し腸の調子が良い。ますますグルテンに弱い可能性が濃厚になった。悲しい。

そんなわたしにも一つだけのぞみがある。
米粉でつくったベーグルなら、胃腸の負担なく、食べられるかもしれないのだ。
いまはグルテンフリーの風潮もかなり蔓延してるので、それに乗っかって行けるかもしれない。

こういう制限があるときにこそ、なにか新しいことが生まれる。それを信じて、グルテン弱者(仮)は、まだ、ベーグルのある人生をあきらめていない。


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