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37.4°-世界は物語で出来ている

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将来の一流ライターが見られるかもしれないマガジン 毎回用意された"お題”を基に、ライター達が作品をつくっていきます。
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#ファーストキス

緑の風

透明な緑の風が流れると、青や濃い緑のクレヨンのような線が幾重かに表れ、視界の中央を覆った。 人間の指のような形をした、芯もその周りも浅緑の細長い節のある3本の人形の指。 2本目と3本目が少し動き、それらの先っぽの表皮が、上の方にある赤い滑らかな感触の毬のような顔に当たり、静止しては撫でるのを絡繰のおもちゃのように繰り返している。 葉っぱがわずかな風で音もなく揺れているのと同じような軽いが優しい動きで撫でている。 その青緑の指の表面はチリチリと逆立つ感覚を覚えた。そして

知ってる?ファーストキスって何回してもいいんだって

「うれしい、ファーストキスなの……」 と、俯きながら話す女性。 その後、彼女はこちらに振り返り 「前に別な人とファーストキス済みだけど、この人とは初めてだから嘘はついてないよね」 と、こっそり本音を覗かせた……。 このやり取り、昔読んでいた雑誌の読者投稿で見かけたものと記憶している。 目から鱗だった。包丁の背でガリガリ削って、今から醤油で煮付けるのかと思うくらいボロボロ落ちた。こんな小悪魔テクがあったとは! この人の計測法を取り入れるなら、私はお付き合いした人数=公式

わたしってキレイですか...?

顔を合わせれば、「わたしってキレイ!?」と自分の小顔を指差して言う人だった。 その時の顔は、綺麗ぶって、お高くなっているのとは違う。 むしろ無邪気な子どもが大人を真似してお歯黒をして、歯を見せながら顔を突き出すような純粋さも表れていた。 自分の家がゴタゴタになっている、家が燃え続けている。 それによって、危機感感じて、焦燥感感じて、その中でやっとその人が自分でできること。 それが、その言葉を私に対して言うことだった。 子供の頃、時々夜になると、母と父が火山が噴火するように怒

接吻

 それを見たとき、子宮がクッと締まって硬くなり、少し膨張する感じを味わった。その硬く膨らんだ子宮が膀胱と胃を押し上げてくる。それは、なんとも言えない感覚で初めての体感だった。  痛いとかでもなく気持ち悪いとかでもないのに、膀胱から心臓にかけての内蔵全部がゾワゾワグルグルっとする。身体が変になったと思って焦ったが、どこかでこの感覚を待っていた自分が潜んでいたことにも気がついた。「あぁ、これが多分みんなが言ってる『感じる』ってやつだ」と、クリムトの「接吻」のレプリカを見ながら19