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"諦(明)"の気づきを、地域医療へ 福山智基さん vol.1

今回のインタビューは医師の福山智基先生です。

福山智基先生は、東郷地区の福井市安原町(いわゆる小安)で『地域のかかりつけ医』として福山医院の院長をされています。

また10年前からは東郷小学校の校医もされているほか、おつくね祭では救護班として救急の事態に備える役割をされていたり、先日は足羽第一中学校にて生徒に対して講演を行ったりなど、地域に密着した医療に携わっています。

今回、福山先生から福山医院の歴史やご自身の医師としての背景、そのご経験から地域医療で大切にされていることなど様々なことをお聞きしました。
大変貴重な濃厚な取材内容となりましたので、対談を3部に分けて記事に公開させていただきます。

─福山医院は何年に開業されたのですか?

開業は昭和8年(1933年)の8月なので、昨年で90年を迎えました。あと9年で100年ですね。

実は私は3代目なんです。開業したのは祖父と祖母で、どちらも医者だったんです。開業当初、医院は東郷の地蔵院さんの隣(福井市安原町、かわそ祭りで有名)にありました。

今の場所に移転したのは昭和53年なので、僕が4,5歳のときですね。

前の建屋の記憶はちょっとあるんです。
木造で昔ながらの蔵もあり、うす暗くて怖かったのを覚えています。悪いことをするとよく「蔵の中に閉じ込めるよっ!」って怒られました。
で、父が昭和53年に今の医院を建て現在に至ります。祖父も新しい医院で4,5年は診療していたように記憶しています。

実は祖父も祖母も東郷出身ではないんです。

元々、前の福山医院の建物で他の先生が診療されていたようで、その先生がおられなくなり困っていた東郷の知人が祖父母に声をかけてくださいました。

その時、祖父母は別の所で開業していたのですが知人のお気持ちを汲んで昭和8年8月(多分)に東郷(小安)に移ってきたようです(父から教えてもらった話なので多少事実と異なるところがあるかもしれません)。

現在の福山医院

─福山先生は以前、大学病院で勤務医をされていたとお聞きしました。

そうなんです。高校を卒業した後は金沢医科大学で学位、博士を取得して、その後勤務医として金沢医科大学の附属病院の消化器内科と集学的がん治療センターというところにいました。

元々の専門は消化器内科なんです。
主な臓器は胃や腸(小腸・大腸)とか肝臓、胆道(胆のう・胆管)、膵臓とかですね。

消化器内科と言っても細分化されてまして、若いうちは全て経験するのですが徐々に専門性を持つようになり、食道や胃を中心とした上部消化管グループ、小腸や大腸を中心とした下部消化管グループ、胆道・膵臓を中心とした胆膵グループ、後、肝臓は1個の臓器で肝臓グループとしている所がほとんどで臓器1個に対し専門医もあります。

で、僕は後述の内容と重なる部分もありますが、臨床では消化器癌の化学療法(いわゆる抗がん剤療法)、研究では機能性胃腸障害(主に機能性ディスペプシア)、アルコール性肝障害を中心に精進しておりました。

─博士課程へ進もうと思ったきっかけは?

父も医学博士をもっておりますし、当時の教授からも臨床医になるならリサーチマインド(研究者としての志)も養わらなければならないとの助言も頂き博士課程に進学することを決めました。

学位はアルコール性肝障害で取得しました。
僕はお酒が弱いのですけど、アルコールの特殊性(濃度により作用が異なる所)に興味を持っていたこと、また、ちょうど博士課程に進んだ頃、老化と活性酸素の関係がさかんに言われ始めた時でもあったので活性酸素の産生に関与している細胞内小器官の一つであるミトコンドリアに対しアルコールはどのような影響を及ぼしているのだろうと考えて研究課題としました。

─金沢で勤務医をされていたとき、将来東郷地区へ帰ってくることは考えていましたか?

そこはあまり考えていなかったです(笑)
地元で所謂『かかりつけ医』として医者をするなら専門に特化するより、幅広く診れた方がいいとは思っていました。

でも今は、糖尿病など別の疾患に関わっている上で、消化器内科をやってて良かったなと思うこともあります。

分かりやすい所で言えば、今、流行りの腸内環境ですが糖尿病やリウマチなどの内科疾患にも影響を及ぼしているのではと言われ始めているのです。

小腸は生体最大の免疫装置とのたとえがあるのですが、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患にも腸内環境が関わっているかもしれないんです。

あと最近、『脳腸相関』という言葉がよく言われているのですが、皆さんも経験あると思うけど、 試験勉強なり仕事の営業・プレゼンなり大きな精神的なストレスがかかった時に、チクチクお腹痛いとか、腹ゴロゴロ鳴ってくるわって経験はあると思いますがそれが脳腸相関の一つです。
ちなみに精神的ストレスかかって腕いてえー!っていう人なかなかいないですよね?(笑)

だから逆もあって、腸の環境が精神状況に関係していると。
例えば、うつ病の発症に関係している、『幸せホルモン』と例えられているセロトニンと言う物質は約90%が胃腸に集中しています。
ですので、先ほど出てきた機能性胃腸障害とうつとの関係は以前より議論されています。
今後ですが、腸内環境を整えることが精神疾患の治療候補の一つになる時代くるのかもしれません。
東郷に帰ってくる話と反れてしまいましたが・・・

─福山先生が東郷に帰ってきたきっかけは?

父が体調を崩してしまい、2012年にこちらへ帰ってきました。

それまでは具体的にいつになったら福井に帰る・・・と決めてなかったので、今考えればいいきっかけになったのかなと思います。

(vol.2に続く)

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