肉関係のお仕事は鼠経ヘルニアになりやすい(2)
(煮込みのミニコミ)
(1)の記事。
トイレで、片方の鼠径部がボコッと出ているのを見つけ、最初に頭をよぎったのは大腸がん。あるいは直腸がん。これはさすがに病院に行かなくてはと思った。
そこでネットで調べてみたが、鼠経ヘルニアというものにヒットした。どうも自分の患部の状態や、症状が出る経緯が合致しているのだ。重い物を運ぶ仕事に、この患者は多いということだ。
また食肉業者は、単に重い物を運ぶだけでなく、それをお腹に押し付けるのだ。余計お腹に負担をかける。
前回記事に出演していただいた画像に再出演していただこう。このサンテナを運ぶとき、食肉関係者は両手で端を持ったりはしない。扉を開けたり他のものを一緒に持ったりするので片手を開けておきたい。だからこの向きで向こう側の端を片手で持ち、手前面を自分の腹に押し当てて運ぶ。そうすると、片手が自由になって効率がいいのだ。
それを、来る日も来る日も繰り返す。腸壁も痛むわけだ。
とにかく、自分のこのでっぱりは鼠経ヘルニアであると確信した。困ることだが、がんなどに比べればマシだ。調べると、これは手術以外に治る方法がなく、そのままにしておくとさらに進行するという。ましてや商売を継続していて、患部の発見後も商売を続けているのだ。一般的に暮らしている人より進行するはずだ。
そこで、病院を予約した。近くの方が楽だが、手術が予想されるので、これ専門のクリニックにした。人間だれでも、数やっている人が手慣れているはずである。専門のクリニックというと、やはり都内だ。専門職はそれだけ稼ぐ「タマ」が少ない。だから人が集まっているところで商売をしなければならない。だから特化したものは都内に集中するのだ。
ぼくはわりあい仕事のヒマな曜日を選んで予約し、電車に乗ってクリニックに行った。そこで画像を撮り、腸壁が破れていることが確認できた。メッシュを入れる手術が必要だという。その日、手術の予約をしてぼくは帰った。
鼠経ヘルニアだけに限らず、肉関係者は身体をすり減らす病気が多い。腰や首を痛める者がたくさんいるが、折ったりするわけではなく、すり減ってしまうのだ。折ればくっ付ければいいが、すり減ったのであればそうはいかない。減った分を足すなんてこともできない。手術をすることができず、悪化して生活する上での動きが限定される。
仕事はそれぞれ何かしら厳しい部分を持つが、食肉業者は身体を酷使するという点ではかなり厳しい仕事となる。当然なり手も少ない。
この鼠経ヘルニアも、保護膜を充ててケアするので、完治ではない。手術後は重い物を運ぶことを控えなければならないし、また腸を傷つける怖れをできるだけ避けるため、健康診断時にバリウムを飲めなくなった。自分がもし胃がんになったとしたら、鼠経ヘルニアが遠因となる。検査を受けるチャンスをなくしてしまったのだから。
職業病は、その仕事をやめても、ずっとついて回る。一生付き合っていかなければならない。