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CoderDojo関係者と2冊目の合同誌を作った話

はじめに

この記事は「CoderDojo Advent Calendar 2020」の4日目の記事である。
「2020」は「2021」の間違いではないので安心して欲しい。
忙殺されたり思い悩んでいるうちに1年経っただけである。
なお、記事中のメンバーの名前は、CoderDojoでの活動名ではなく合同誌上の筆名で表記する。

DojoCon Japan 2020 のセッションとこの記事のこと

正直、本件については DojoCon Japan 2020 のセッション「合同誌「Hello Dojo?」ができるまでをゆるーく・・」を見れば十分だ。
おーらんさん、まとめ上手い。さすが。

とはいえ、物事には複数の視点があっても良かろうとは思うので、誰に頼まれた訳でもなく勝手に私視点の話を書く。
(とはいえ、プロジェクト全体に関してはおーらんさんの見解と大きな差はないので、概要を把握してる方は「私の個人的な話」だけお楽しみ下さい)

企画の経緯

詳細は上記動画と過去のブログ記事を参照すれば十分なので割愛する。
要するにツラ楽しかった前作の流れでおーらんさんから声かけがあって、ノリと勢いでやることになった(基本、私はノリと勢いしかない…)。

メンバー集め

「せっかくDojo関係者で同人誌を作るなら、全国からメンバーを募ろう」という話になる。
しかし私は昔から「価値観を強く押しつけてくる人と、私にとってコミュニケーションコストの高い人全般との接触が非常に苦手」で、技術者(主にソフト/ハード開発者)とは十中八九ウマが合わず、極力接触を避けたかった。
加えて今回は制作期間が前回以上に短い(後述の応援祭の準備への切り替えなどによって延びたが、元々は1.5ヶ月でFixの予定だった…)上に、私が(自ら決めたこととは言えど)アレでアレな状況のため、期間中の3分の2近くの時間をプロジェクトに関与できない。
なので、声かけやメンバー公募に関してはおーらんさんらにお任せ。

DTP(装丁と本文)のこと

DTPは、個人的に本文の執筆以上に厳しい作業だった。
前回・今回共に「なんかすんごい風呂敷広げて人集めをしてしまった」重責から、できるだけ完成品の質を上げなければいけない、という「誰も頼んでもいない謎使命感」に駆られて自ら首を絞めた上に、関係者に多大な迷惑をかけた部分でもある。

本文(一部)デザイン

前回ページ数がやたらと多くなってしまった反省から、本文は2段組にしたい…ので、できれば前回同様「業務のDTP経験者」がいて欲しい…けど…いない…。
そこで「あの人、業務経験はないけど、こういうなら頼めばできる」と風の噂で聞いた、活動に対してとても意欲の高いメンバーに頼むことにした。
読書家で常日頃からSNSで大変知識が豊富な様子を見せていたし噂で実績がある旨を聞いていたし「最低限のことはできるかな」と「ベースはS●ftware Des●gnの本文を1段で組む感じ」と指定の上、あとはお任せした。
しかし本件とは別で色々あって、途中離脱。人手がまた減った…。

「作業を分担していきましょう!!」と話が出ていたものの、私以外DTP業務経験者がいない。スケジュールはカッツカツ(当時の予定ではDTP作業は概ね1週間)。
みんなで作業分担をするならするで良いけど、作業者の学習コスト的に無理のない範囲であることが必要だし、作業コストを下げたとしても成果物の仕上がりとして適切な文字組によって可読性を担保したい…。
ところが、好奇心と探究心旺盛な学習コスパ超高めの人たちから「こんなソフトがあるから、これで実装してみてはどうか」と、矢継ぎ早にクリエイティブな提案が出てくる。お、おおう…。
学習コスパがドチャクソ低い私、もう涙目。
「すみません…それ、全て、皆さんが主導で全部やって下さるなら良いんですけど…ここに私という学習コストが尋常でなくかかる無能なゴミがいることをお忘れではないでしょうか…」とひたすら困惑。
最終的にオープンソースの Scribus を使って作業分担するということで話がまとまる。
Scribus、私は使ったことがないので勿論多大なる学習時間を要した…。
(周囲も皆使ったことがないが学習コスパ高い人たちのことなので以下略)

作業分担にあたり「可能であれば、予め用意したテンプレートに執筆者本人が直書きしていく」スタイルにした。
とはいえ既に他のエディタで書き終えている人もいる。テンプレートの提供が間に合わなかった人たちやテンプレートの編集が厳しい人の分は、編集できる人たちが作業を分担した。
テンプレートは途中離脱したメンバーが作ってくれたものを元に1週間かかけて「OS依存の少ない汎用性のあるフォーマット」に調整して用意。
この作業、余白の取り方とか1mmでもズレるのが気持ち悪くて引き受けたけど、仕事が高速な他の人にやってもらえばよかった…。
調整に調整を重ねたものの、このOSでこのバージョンのファイルは開けないとか色々あったが、学習コスパ高い人たちがサクサク作業して下さったので、なんやかんやなんとかなった。多分。
テンプレートに流し込みが終わってから、ページ数の調整や校正作業も地味に時間がかかった。この辺では横川さんに大変な負担をかけた…。

そして、DTP作業はできるだけ仕様書を綿密かつ緻密に作ってから分担するか、作業者を絞る方が良いという反省につながる…

装丁…おふざけが過ぎてスミマセン…

誰かに発注すると金がかかるし、だったら私がやっちまおう、で、やった。
全体のテーマを決めるにあたり、「(Raspberry Pi 財団が配布している電子/紙雑誌の)Hello World(HW) をリスペクトして」広く、というところに決まっていたので、同人誌だけに「二次創作ぽさ」「パロディ感」を出したくて装丁を思い切りHWに寄せた。
参考にしたのは Issue 11 で、できあがったのが以下。

表紙・裏表紙の没案

しかし、この案はすぐ没になった。
パロディでも一応許可を得た方が良かろうと、まずは関係団体であるCoderDojo 財団に、次にRaspberryPi財団に問い合わせて、NGを食らった。
理由は「Hello World は登録商標」だから。
知識のある人なら「日本で商標登録されてないので、日本で頒布する分にはセーフでは?」と考えるかも知れないが、権利を保有している人に直接問い合わせて「ダメなものはダメ」と明言を受けたので、そこを強行突破するのは道徳的にいかがなものかという話である。
企画段階で電子版での頒布も検討していたので、英国やアイルランドから入手できるとなった場合に「日本だから」で済まないし。
私はそんな状況を無理強いしてまで「パロディですすめよう」と言い切るほど強心臓ではない。
そんなわけで、関係者に怒られないように表紙と本文デザインを調整した。調整後の表紙は、ベースカラーを CoderDojo Style Guide を参考に #642580 の Purple に近い色を選択。Purple をそのまま使うと全体の調子が暗くなりそうだったので、アクセントカラーの組み合わせも含めて明るめに調整。

装丁を調整した上で頒布した旨は、一応 CoderDojo 財団 の方にも(Global Slack の #japan チャンネルで)共有しているのでご安心を(?)。

頒布のこと - COVID-19の影響下で…

技術書典8が中止で応援祭に

3月1日に参加予定だった技術書典8は COVID-19 の影響で中止になった。
…が、オンライン上で「技術書典 応援祭」という形に変えて実施されることになった。

応援祭にどのように参加するか、冊子を印刷する・しない等で一悶着発生。
時を同じくしてアレの不合格通知到着。私のメンタル、完全に奈落の底へ。
「このプロジェクト、いっそ雲散霧消すれば良い」とブチ切れた私、全作業をボイコット。当然プロジェクトは中断。
周囲からも心配されたし、私も時間が経つにつれて「このままではいけない」と冷静さを取り戻し、作業再開。
(その節は本当にご迷惑をおかけしました…)

こうして1ヶ月に渡る応援祭のラスト1週間で物理本・電子本を頒布した。

余談ですが今回は2箱で到着しました

物理本の売り上げの行方

物理本(冊子)は前回同様、メンバーの買い取り制にした。
(ただし応援祭での電子本の売り上げを差し引いて、各人の負担額を計上)
なので、現在「12人のプロジェクトメンバー各自の名義で」されている。
私の場合は「制作・販売にかかる経費を除いた額をコーダー道場こだいらに寄付」の方針で、在庫はすべて頒布した。
今回、発送作業が短期間に大量発生したので、結構な仕事になった。

電子本の売上の行方

電子版は同人誌即売会と違っていつでも・いくらでも頒布できる反面、売上がいつどの程度はいるか不明だ。
変な話、売上利益をメンバーに分配と言っても13人で数百円を分けてもねえ、である。
「Japanに寄付すれば良いんじゃない?」という話も出たが、そもそもJapan側が(2020年4月時点で)一般からの寄付を募っていない(Facebookグループの投稿を参照)。
話し合いの結果、「価格だけ統一」で「各自の資金にしていいので自由に頒布可」とした。なので、私がBOOTHで頒布しているものについては、物理本と同じ取り扱いである。

なお、Kindle版の売り上げは「次回の準備金として保管(保留)」だ。
今後シリーズ化すれば制作にかかる費用として使われるだろう。

KPT

ここで唐突なKPT。
「おーらんさんのKPTを聞いて当時を振り返って思ったこと」をまとめた。
普段はKとPとTそれぞれの量に偏りが生じないように気をつけるのだが、気にせず好き勝手に書く。
実際、2020年4月当時の気持ちで書くことができないし。
(一応、当時書き途中のものをベースに書き起こしてはいる)

Keep

自分自身に留まらず、周囲にも「チームで達成感を感じる体験」をする機会を作っていく
(なうPBLの難しさに直面しているのですんごく悶々としてるw)

Problem

当時は私のメンタルが物凄く不安定で全員に迷惑をかけまくった(しかも原因がド直球過ぎて笑えない)…という個人的な件はさておき。

プロジェクト全体の課題は「メンバーが必ずしも同じゴールを向いていなかったこと」だ。

一応、最後までプロジェクトに関わったメンバー間では「誰のためにどんな情報を」の摺り合わせは出来ていた。
けれど「どの媒体で、どのように」をしっかり摺り合わせていなかった。

少なくとも私とおーらんさんは同じ目的で動いていた。
すべての始まりは同人誌即売会「技術書典」に参加することだったから。
どうしてもある程度の費用がかかってしまうが「印刷して製本した冊子の同人誌」で情報発信(頒布)したい。
ついでに、可能なら前回できなかった電子書籍の販売(頒布)もやりたい。

そもそも「プロジェクトにかける思い」を繰り返し伝えることをしなかったし、みんながどういう目的で参加したのかという思いを子細に確認することもしていなかった。
だから、プロジェクトが進むにつれて認識にズレが生じるのも無理はない。

何か認識を摺り合わせる際、これまではサシで対話したり、いわゆる飲みニケーション…対面で「ゆるやかな雑談を含めた交流」として行うことが多かった。
今回は全国各地から集まったメンバーだったのでリモート会議だったこと、スケジュールが極めてタイトだったこと、私がほぼ身動きとれない状況だったこともあり、根本的に交流が不足していた。
もっとも、交流が不足した一因には私の「人見知り」問題も大きく絡んでいて…うわ、殆どの原因が私じゃねーか、と…そうですねスミマセン…。

タスクの偏りは(主に自費出版の)経験差による点が大きいが、先述の通り同じゴールを向いていない以上は振り分けが難しかったと思う。
ぶっちゃけると「普段から会社組織などで組織的活動に慣れている人と、組織の中で常に『我が道を行くことが許されてしまっている』人」との間での「チームでプロジェクトを進めること」への意識の違いもあったのでは、というか…。
だから、イベントの現地開催が中止になったり色々な出来事が発生して軌道修正する際に少し揉めたこと、今となっては「状況的に仕方がない」と思う…けど、「おまえ(私)が言うな」が凄すぎて言葉もない…。

Try

情報発信をするだけなら電子媒体…具体的にはウェブメディアで十分だ。
今回、目的は達成した訳だし、今後、ウェブメディアなど別の媒体を用いて情報発信することはアリだと思う。

2021年の近況など…

私自身、2020、2021年共に利用可能な施設が限られている状況下だったため、Dojoの活動を控えざるを得なかった。
…といいながらフルリモートで最低でも隔週開催していたし、現在は対面とフルリモートを交互に、ほぼ毎週活動している。
他の活動なども相まって、収入は1円もないが、正直以前よりも忙しい。

2020年の年明けから現在までに直接会ったメンバーは少ない。
合同誌のお疲れ様会もオンラインだったし。
「遠方の人と会うのは元々困難では?」と言われると、私はカネさえあれば DojoCon Japan の実行委員会のメンバーやDojo関係者と交流するためだけに関西や山陽方面へ出掛けるような輩である。
「いまは」カネを工面できないので物理的には厳しいというだけの話。

いま活躍しているメンバーのこと

明らかなことは、とにかく豊田さん(@youtoy)の活躍がめざましい。
その活躍は豊田さん本人の人柄と日頃の行いの賜物であり、合同誌のおかげではない。
豊田さんはおーらんさんと昔から交流があり芋煮本の時にも声掛けした。
しかし別の同人誌での経験上、期日までに執筆が難しいと断られた。
今回は、おーらんさん曰く「ストックがあるので」と
意欲的に参加してくれた。ストック…最近の活動状況をみるにつけて「なるほど」と納得である。
そして2021年現在、日々の活動も相変わらず活発な上に記事の執筆ペースは衰えず、ついに月刊「I/O」で短期集中連載(2021年8〜11月号)。すごい!!

元々活躍範囲がCoderDojoにとどまらない方ではあったが、今がノリに乗っている時期なのやもということで、引き続き来年以降の活躍も大いに期待である。
今回の活動を通じて交流が増えて、いつも山ほど勉強になる。

余談:前作・本作共にイチオシはホシノさんだけど、ホシノさんに会えていない…元気かなあ…🤔

おわりに

Hello Dojo? の今後

企画時点で「このままシリーズ化したら面白いかも」という話はあった。
けれど、現在のところ予定はない。
願望を述べこそすれ(どちらかといえば出た意見に賛同しただけ)、確約した覚えはないし、そんな責任を持つ気もない。
私自身は「『やりたいことをやる』という目的を果たした」という気持ち。
プロジェクトの進行管理には多くの課題を感じているが、とにかく「誰と何をやるか」という点で目的を十分果たせたので満足している。
だから、もし、この活動に共感して「是非とも続編に参加したい」という人がいるのであれば、そう思う人が率先して話を進めたら良いと思う。
活動にあたって心配事があるならば、関係者に確認すれば済むだけの話である。それでもそこまでしないのは「その程度の意欲」ということだ。
やりたい方、どうぞ是非是非。

「Hello Dojo?」をまだ入手することはできるのか?

情報が少々古くなっていても問題ないということであれば、現在も電子版でKindle版とBOOTH版(PDF)が入手可能だ。ぜひぜひ。

Hello Dojo?: 子どものためのプログラミング道場CoderDojo関係者による運営手記・プログラミング手習い帖(非公式) [プリント・レプリカ] Kindle版
2021年12月4日現在 Amazon.co.jp より
Hello Dojo?(電子版)| TGABOOK
2021年12月4日現在 BOOTHより

自Dojoの環境整備に精進

当面は学習者とその保護者およびボランティアなど全ての参加者が安心して参加することのできる環境整備に注力して、少しずつ必要な資金を投下していけたらと思う。
端末を用意できない人のための複数台の(最新の)端末の調達ができたら良いのだけど、そこまでには至らないんだよなぁ…トホホ…。


いろいろありましたが、関係者の皆様、その節は本当にお疲れ様でした!!

参考記事

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