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マイルス4枚目「マイルス・デイヴィス・アンド・ホーンズ」のモヤモヤした価値

[Miles Davis And Horns]「マイルス・デイヴィス・アンド・ホーンズ」
【録音】1951-01-17, 1953-02-19
【リリース】1956

初期のマイルスはプレスティッジというレコードレーベルと契約していたのですが、本作は彼のそのプレスティッジでの1951年の初録音を含む作品です。この時サックス奏者のソニー・ロリンズと初共演します。

1951年1月17日のマイルスは3つのレコーディングに参加していて、まず最初にチャーリー・パーカーの「スウェディッシュ・シュナップス」の録音、次に本作の録音、最後にソニー・ロリンズの「ソニー・ロリンズ・ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・カルテット」に収録されている"I Know"という曲でピアノを弾いた録音となっています。

この頃のマイルスは筋金入りの薬物中毒者で、自伝によるとドラッグの影響と直前のチャーリー・パーカーとのレコーディングによる疲れで本作を録音した時の体調はあまり優れず、演奏も良くなかったと認めています。

また、1953年の方の録音は4曲ともサックス奏者のアル・コーンという人物の曲になります。こちらは複数の管楽器が絡むアンサンブル重視の音楽という感じです。

全体として内容は言うほど悪くないようにも聴こえますが、地味で印象に残りにくいという面もあり、マイルスの歴史の中ではそれほど重視されていない作品だと思います。

しかしながら、一聴して地味に感じる音楽でも何らかの意味を持っているのがマイルスの作品の特徴的なところだと思います。個人的にはここでの彼は、もがき苦しみながら何かを模索しているように感じます。

ある意味そうしたマイルスのモヤモヤした部分が本作の聴きどころであり、それを含めたところに価値がある作品なのではないでしょうか。

ここでは何かを模索しているかのようなマイルスですが、その何かを「見つけた」と思える瞬間が1954年に訪れます。本作は、そこに至るまでのドラマの前半部分を収めた内容になっているため、この作品だけを聴くというよりは、復活後の他作品との流れの中で聴きたい一枚です。

他の作品と合わせて聴くことで輝きが増すという意味で、マイルスの歴史の中ではちょっとしたスパイス的な働きをしてくれる作品とも言えると思います。

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