見出し画像

マイルス6枚目「ディグ」は実は重要作

※現在noteでアマゾンの埋め込みが機能しない不具合があるので、しばらくは画像なしでの更新となります。

[Dig]「ディグ」
【録音】1951-10-05
【リリース】1956

「ハードバップ」の原型を築いたとされる作品で、この時の録音からフォーマットがSPより収録時間の長いLPになったのが一番のトピックになります。

この辺は何か情報が錯綜していて、最初から12インチLPを前提とした録音だったという記述も見かけたのですが、おそらくそうではなくてここでのLPとは10インチLPのことではないかと思います。

この録音は当時は10インチLPなどで発売されていて、それが後に12インチLPにまとめられた作品がこの「ディグ」です。リリース年として表記した1956年というのがこの12インチLP化された年のことになります。なので1951年の録音の時は10インチLPを前提としていたのではないでしょうか。

自由にソロを取るスペースがある長時間録音のLPは、間を活かす演奏をするマイルスにとって有利に働きました。「このフォーマットは俺のために開発されたようなもんだ」みたいなことをマイルスは語っています。

従来のビバップはSPの短時間録音に適していたのですが、長時間録音のLPになったことによって多彩な表現が可能となり、それがハードバップへと繋がっていきます。

マイルスはチャーリー・パーカーのバンドでビバップも演奏していましたが、そういった作品と本作を比較すると、ビバップの一点突破的なある種のスポーツ性と比べて、本作はアンサンブルやメロディや完成度がより重視され、音楽的に広がりを持ったものになっています。

この時期のマイルスは薬物中毒による低迷期とされていますが、内容の方は音楽的な魅力に富んでいて、開放的な空気感があります。演奏の新鮮味が際立っていて、新しいことが始まる予感に満ちている良作だと思います。

代表作として取り上げられることは少なく、マイルスの中で最高クラスの名作とまでは言えないかもしれませんが、結構ターニングポイントになっている重要な作品なのではないでしょうか。

個人的に好きな曲は"Conception"で、勢いがありシンプルに興奮できるこの曲は本作の中では多分構造的には一番従来のビバップに近い曲とも言えると思いますが、何かが従来のものとは違うという印象があります。

同一のセッションでありながら元々LPには含まれていないボーナストラックですが、この曲を、「ビバップに近いようでいて、それとは違うもの」にしているエッセンスというのは本作でも重要な部分だと思うので、そういう意味で興味深い曲です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?