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マイルス5枚目「バードランド 1951」と場所の持つ力

[Birdland 1951]「バードランド1951」
【録音】1951-02-17, 1951-06-02, 1951-09-29
【リリース】2004

マイルスの1951年のニューヨーク・バードランドでのライブをまとめたもので、ジャズの名門・ブルーノートから2004年にリリースされた作品です。会場の「バードランド」の名前の由来はチャーリー・パーカーの愛称である「バード」からなんだとか。

音質は悪く、派手にノイズが入る部分もあり、時代を考えてなんとか許容できるかどうかという感じでしょうか。テンポの速いノリが良い曲が多く、マイルスのホットな面を聴くことができる作品になっています。また、ドラムのアート・ブレイキーの存在も目立ちます。

3つのライブ全てで"Move"を取り上げているのですが、「クールの誕生」に収録されているバージョンとは違い、速いテンポの激しい演奏になっています。

ここで少し「場所」ということについて考えてみたいのですが、「クールの誕生」の時はギル・エヴァンスのアパートが今では伝説となっているサロンのようなものになっていて、ノネットの構想もそこで固まっていったといいます。

その場の雰囲気は想像することしかできませんが、なんとなく知的なイメージでしょうか。「クールの誕生」ではそのような場所が作品の色に関係しているのではないでしょうか。

一方、マイルスがこの頃から常連になったバードランドはブロードウェイの52丁目の大きなジャズクラブで、当時最も勢いのあった場所の一つでした。また、裏でドラッグの売買なども行われていたといいます。

当時薬物中毒だったマイルスは多くのクラブでブラックリストに入れられていて、出演できるのはほとんどバードランドくらいのものだったという話です。

こちらも想像ですがおそらくちょっとダーティ寄りなパワーのある場所だったのかなと思います。本作での"Move"をはじめとする激しい演奏はそんなバードランドという場所の持つ力が演奏者を駆り立てたのかなと思いました。

このように、背景にある「場所」によって音楽が刺激されるということはしばしばあることだと思いますが、自分はこの作品から特にそれを強く感じました。

音質が悪いので万人向けではありませんが、この時期のライブは貴重だと思います。総合的にエネルギッシュかつハイテンションの演奏が収められている作品で、パフォーマンスの内容が良く、価値のある一枚だと言えます。

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