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マイルス1枚目「ファースト・マイルス」は音を楽しむというより・・・

[First Miles]「ファースト・マイルス」
【録音】1945-04-24, 1947-08-14
【リリース】1990

一枚目に扱うのはマイルスの初録音と初リーダーセッションが収められているこの作品です。

本音を言えば最初にはもっとおすすめできるようなものを紹介したかったところなのですが、このレビューではだいたい時系列的に取り扱っていくので最初はこの作品ということになります。

1945年の記念すべき初録音は、この時18歳のマイルスがラバーレッグス・ウィリアムスというリズム・アンド・ブルースの歌手のバックを務めています。しかし、自伝を見るとこの録音はマイルスにとって忘れたい記憶であり、あまり良い思い出ではなかったらしいです。

それもそのはずで、録音された内容を聴いてみると、そこには大味なボーカルの後ろで脇役のように吹くマイルスがいます。個人的には今の時代に聴いてここから音楽的な楽しさや良さを見出すのはかなり難しいのではないかと思います。

なんとか良いところを探すとするならば、マイルスのトランペットの音はこの時代でも彼らしさがあるということを確認できる点でしょうか。

音を楽しむというよりは、「あのマイルスにもこんな時代が」という楽しみ方をする音源なのかなという印象です。そういう意味ではマイルスを既によく知っている人向けと言えるのではないでしょうか。

一方で、1947年の初リーダーセッションの方はその初録音に比べれば音楽的には面白く、進化を感じます。このレコーディングに際し入念にリハーサルをしたという話もあり、マイルス自身の目指す音楽像がおぼろげながらも形になりつつあるような気もします。

ニューヨークに出てきて初期のマイルスは伝説的サックス奏者のチャーリー・パーカーのバンドでモダンジャズの出発点となったビバップと呼ばれる音楽を演奏していましたが、この初リーダーセッションでのマイルスの音楽にはそのビバップの先を既に見据えているかのような雰囲気があります。

ちなみに、この1947年の録音にはパーカーもテナーサックスで参加しています。また、このセッションで"Milestones"という曲が録音されていますが、1958年の有名な方の"Milestones"とは別の曲です。

全体的に見ると、やはり初録音が音楽的に微妙な時点でこの作品の性質は決定されている気がしてしまいます。1947年の音源は興味深くはあるのですが、マイルスを聴き始めの人にはちょっとおすすめはしにくいと思ってしまう作品です。

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