見出し画像

一点集中・見ずの呼吸

なんとなく、人生には「ひとつの業を究めるべき」みたいな風潮がある気がする。
何かひとつ、自分の人生を賭すものを決めて、それと添い遂げる覚悟で何十年も続けてはじめて、なにか"素晴らしい成果"が手に入る、と。

……ほんとにそうかなあ、と思う。
一点集中は、バランスが悪すぎないか?


たぶん、わたしは、根本的に、臆病である。
なんで臆病って? そりゃあ決まってる。
自分の才能を信じて、自分の持てるリソースを一点に集中して、その道だけを究めようとする勇気がないからだ。

たとえば――
大学には通っているのに、自分からはあまり勉強しないし、研究室に通って新規性を求めて実験に明け暮れることもない。プロの研究者は世界中の化け物と戦う必要があるし、専門分野に全振りした挙句、ポストも得られずふわふわするのが怖いからである。
小説で商業出版ができたというのに、他の趣味を全部やめ、空き時間を全てプロットの検討や執筆に費やすこともない。足を踏み入れたからこそ分かることがある。作家のトップ層に食らいついていくためには、生まれ持った圧倒的な才能か、それを気合いでねじ伏せるだけの圧倒的な意志か、あるいはその両方が必要だ。
クイズを作ったり答えたりしてお金がもらえるほどになったというのに、将来の仕事としてクイズ製作を選ぼうとは微塵も思っていない。現在のクイズブームは所詮ブームで一過性のものだろうし、現在のブームを牽引する要素がなくなった後のクイズシーンで生きていけるだけの特殊性を生み出せる気がしないからである。

ここから先は

693字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?