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Tofu on fireのおすすめコンテンツ 『遊ぶための園』-千種創一

みなさん御機嫌よう、Tofu on fireです。
Tofu on fireおすすめの創作物やコンテンツを紹介する記事、記念すべき第一回めは現代詩です。

『遊ぶための園』-千種創一

この作品は『現代詩手帖』2021年10月号に掲載されている作品です。詩を書かれた千種氏がこれを何処かの詩集に編纂していない限り、ここが唯一掲載されている媒体です。ですので買いましょう。他の作品も非常に美しいものばかりです。

閑話はこれくらいにしておいて、内容の大まかな説明に移りましょう(詩の内容を説明するっていうのも変な話だけれど)。

まず、この詩は、架空のテロ組織が爆撃されたというニュースの記事から始まります。記事の内容によると、彼等は生前占領した遊園地で遊んでいる動画をSNSにあげて大きな反響を呼んでいたようです。そこから詩としての記述が始まるのですが、ここから先は読者諸兄の目に映るものに任せるとして、ぼくの感想や如何に美しいかを述べさせていただきましょう。

まず、著述の形式に驚かされました。こんなふうな淡々としている記述が詩にゆるされるのかと感動しました。ぼくは主に短歌を書いているので、定型につねに従って文章を書いているわけです。しかしこの詩にはそれがない。そんな宇宙のようにくるくると回る自由すぎる形態を飼いならすというのは(しかも新聞記事のような形態で!)いまのぼくにとっては至難の業です。ですから、こんな詩を見てしまったぼくは空を飛ぶ蝶を見るかのように憧れを持ってしまったわけなんですね。
次に、淡々としたとさっき述べた記述の中からにじみ出てくる感情の美しさ。みなさんは普段報じられるニュース上の死において如何に思いを馳せているのでしょうか。かのスターリンは「一人の死は悲劇だが、一万人の死はただの数字だ」と述べたと伝わっています。しかし、作者はその一万人の中でもとりわけ共感されないテロリストの死にも心を傾けるのです。彼等の生に確かにふくまれていたはずのあたたかさに心を傾けるのです。歴史の壁に小さな字で刻まれていくような生の中で、それでも伝わって来るほのかな熱さがグッとくる。
最後に、技法的な見方になってしまいますが、言葉の使い方が涙が出るほど巧い。というより引き出しがあまりにも大きく、その使い方があまりにも巧い。最初のフレーズ、どうやったら出てくるんですか。どうやったらそんなに奇妙なフレーズで人の共感を呼ぶ事ができるんですか。逐一聞きたくなってしまうくらい素晴らしいと思います。

ぼくの紹介は以上になります。皆さんにもぜひ見てほしい。リンクを貼っておきます。紹介している以上ある種当然ではあるが。というわけで、ぜひ見てみてね!
では、御機嫌よう!


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