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ときめきメモリアル/バトル・ロワイアル

 はじめてそのゲーム「ときめきメモリアル」を知ったのは男友達の下宿だった。確かPCエンジン版だ。正直、第一印象はそんなに良くなかった。
「いや、なんか絵も古臭い気がするし恋愛ゲームとか色々ダメじゃない?」
 皆、口々にそんな事を言っていた気がする。

 だがその後、プレイステーション版が出た時に真っ先に“転んだ”のは私だったかも知れない。そうなるとドミノの様に皆転び出し、周囲は男女関係なくこのゲームに夢中になっていた。
 同人誌を描き出す者も居たくらいだ。私の事なんだけど。

 どういう思い付きだったのか、誰が発起人だったのか今ではもう思い出せないが、サークルの仲間の男2人、女2人で夜通し部室でときめきメモリアルをやろうという話になった。

 本来一人でプレイする恋愛シミュレーションゲームを多人数で!

 主人公は多重人格という設定で、毎月くじ引いて選ばれた週を各人が担当するというモノだ。四人それぞれが意中のキャラクターを紙に書いて伏せ、最終的にそのキャラに伝説の木の下に呼び出され、告白された者が勝利者、という分裂する己自身とのバトル・ロワイアルだ。
 参加者は誰しも大体1~2人は推しの女の子が居て、当然そのキャラクターは普段から仲間内では知られているので隠匿しても大体分かってしまうのだが…まあソレはソレ、信念を曲げて違うキャラを書くのもアリって事にした。

 はじめは和気藹々と各キャラとの出会いやステータス上げを行っていくのだが、デートの約束を取り付ける辺りから空気が代わった。当たり前だがデートの約束をしても、デートの当日には別の人格(プレイヤー)が担当するからだ。四人の高度な裏取引と情報戦が錯綜し、たまにトンでもない選択肢の応酬があったモノの二年目までは未だ平和なときめきメモリアルだった。

 三年目はパラメーター的に影響し合わない者同士の同盟、そして裏切りが表だって来た。お互いにかなりの好感度を稼いでは居るもののデートのすっぽかしヒドイ選択肢を選ぶの応酬が続いた。
 休日を含む週をくじで引ければかなりのアドバンテージを得れるので、皆祈るようにくじを引いていた。

 そして卒業式の日がやって来た。
 私たちが一晩かけて互いに助け合い、時には足を引っ張りあった高校三年間のフィナーレ…机の中には、呼び出しの手紙が入っていた。 

 ここで伏せていた紙を明らかにした。

男1は虹野沙希
男2は鏡魅羅
女1は清川望
女2は紐緒結奈

 誰もがフラグを立てて居た。
 この内の誰から呼び出されてもおかしくは無かった。

そして、伝説木の下で待っていたのは…清川望さんだった。

◆◆◆

 空が白み出す頃、皆で帰宅の途についた。
 道すがらあの時ああしていればとか、神懸ったタイミングのイベントについて話したり、途中コンビニで軽い朝食を買って食べながら駅までの道を歩いた。駅で二人見送った後、残った二人でまた昨晩のプレイについてずっと語り合った。ゲームプレイ中最も対立していたのは私たちだったのに。

◆◆◆

「ねえ、あの時の話noteに書いてもいい?男1」
 私はキッチンに向かって声を掛ける。
「男1って何だよ!まあその後の話を書かないなら良いよ」
 …という訳でこの話を書いてるって訳だ。


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